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第1話 魔法とか初実践とか少女とか

 「そういえば、魔法も、使えるのよね。」

 「ソリャモチロン。 アナタノイウ「レイ」トカイウヒトヲモトニシテルカラネ。 ツカッテミルノ?」

 「え?まあ、やりかた教えてくれる?」

 「ウン!イイヨ。」

 湖のすぐ側で足を伸ばして座りながら精霊と喋っている俺。 傍から見ると独り言を言ってるようにみえないか心配だが魔法は打ってみたいのでそんな周囲の事は心配しない。 周りに人はいないしね。 


 スキルには、何種類かある。 火の玉で敵を攻撃したり仲間を回復したりする【魔法】。 暗いダンジョンで明かりを灯したり、水の上を歩いたりする【補助】。 モンスターを召喚して速く移動したり戦闘を一緒にしたりする【召喚】。 武器やアイテムを作る【制作】。 居合い切りなどの【魔法】と似ている【奥義】の5種類がある。 精霊によると魔法は最初に魔力を集中させると魔法が発動するらしい。 多分魔力とはMPの事だろう。 そう思えば「マジック・テイル」の時と大して変わらない。 俺は、精霊に色々助言を受けながらも魔法を発動させる。


「ハアッ!」

「ワオッ!スゴイ!」


 今つかったのは【魔法 アタッカー】である。 【魔法 アタッカー】とは自分のパーティメンバーの攻撃力を上げる魔法だ。 ファイア等の攻撃魔法を使ってみたい気はするが、精霊が「ワタシノイバショヲコワサナイデ!」と言ってきたのでステータス変更の魔法を使っていた。 自分の体がほのかに暖かくなっている気がする。 無事成功したようだ。


「そういえば、私の持っていた装備とかって……この聖女のワンピースだけ?」

「ウウン……タシカカミサマガ【ホジョ】ニアイテムボックスガダセルッテイッテタッケ?

「【ホジョ】?……ああ【補助】ね。」


 精霊がカタコトで喋っているせいでちょっとわかりづらいな……。 とりあえず魔力を集中させ【補助 アイテムボックス】を念じる。 目の前にいかにもRPGでありそうな宝箱が出てくる。 ……魔法が便利すぎて困るな。 宝箱を開けて中を見てみるが、真っ黒で底が無さそうである。 どうやったら防具とか出てくるのだろうか。 精霊に聞いても「サア?」だそうだ。 それぐらい教えてくれよ神様、俺はエルフマスターになるのにどれほど装備を集めたか……「マジック・テイル」の装備には全てランクがある。 一番低いのがEランク、その次にD、C、B、Aと続き最上級にSランクがある。 俺の今着ている聖女のワンピースはSランクである。 防御力は他のSランク装備に比べると低めだが、装備の見た目とMP消費20%カットというスキルの便利さで主に俺が気に入っている装備である。 それ以外にも俺は、破魔の弓などのSランク装備をいくつか持っていたんだが…… などと悩んでいるとアイテムボックスの中にいつのまにか金の装飾のされた弓、破魔の弓と矢筒が置いてある。 破魔の弓と矢筒を出しながらしげしげと眺める。 ……うん本物だ。 オリハルコンで作られた白と金の美しい弓。 光属性付与の弓系の最強装備である。

 

「イキナリユミガデテキタ!」

「うん……すごい!」


 これは本当にすごい、流石魔法! なんでもありだな! 




 とりあえず一通り確認出来たためそろそろ旅に出たいと精霊に伝えると丁寧に近くの町を教えてくれた。 ちなみにアイテムボックスは消えろと念じるとスッとまるで幻のように消えてくれた。 本当に便利すぎて言葉が出ない…… この後、しばらく森の中をさまよいつつも外に出た。 森の外は草原が広がっていた。 草は自分の腰ぐらいまで伸びている。正直邪魔だと思いつつ俺は、草を払いながらすすむ。 とりあえず今の心配は寝るところが見つかるかどうかだその後に「魔神」のことは考えよう。 「マジック・テイル」には大陸が一つしかなかった。 もしかしたら「魔神」は俺が知らない種族かもしれないし、魔法だって未知のものがあるかもしれない。 正直さっぱりどうすればいいか分からない。 ならせめて今の世界の事を知っておく必要があるだろう。 ……よくよく考えればモンスターの出てくる場所で他人から見れば弓は持っているが、ワンピース一つ、素足の少女が歩いている……うん、かなり非常識だ。「靴も履けばよかったかな?」何て呟いていると男の怒声が聞こえる。


「オラァ!いつまで逃げてるんだよぉ!さっさと積み荷を降ろせぇ!」

「もう逃げられないよう?おじさぁん?諦めたらぁ?」


 すこし近づくと馬車に乗っている太った商人らしき人が7人のいかにも盗賊やってますって感じの人達に囲まれている。 あたかも近くにいるような説明をしているが、今は大体200m位の所で眺めている。 【補助 ホークアイ】という職業 狩人のスキルで見ているこれをつかいながら弓を使ってモンスターに気づかれる前に倒すという事もできる。 ……うーん、盗賊も人だし弓を向けるのは申し訳ないとは思うが、ゆっくりと腰を低くし草に隠れて進む……盗賊と商人がまだ言い合っている……意外と盗賊は良心的かもしれない。 盗賊と商人との距離は大体100mぐらいにまで近づいた。 ここから当たったら普通は奇跡に近い。 だが俺はハイエルフでエルフマスターでレベル500の廃プレイヤーだどのぐらい遠くからモンスターに当てられるか一人でやって350mから当てたこともあるここなら十分すぎる。 静かに弓を引く。 狙うは一番商人の近くにいる金棒を持った無駄に筋肉ムキムキの大男。 出来ればうまく脅したいので商人を殴ろうとしたところを金棒に打ちたい。 え?何格好つけてんだって?いいじゃん!ちょっとロマンじゃん!


「もううっぜえ!さっさとよこしやがれ!」

「う、うわああぁ!」


 そんな事を思っていると無駄筋さん(俺が命名)が金棒を振り上げるやっぱり見た目通りの短気な人のようだ。 それでも冷静に素早く矢を放つ。 矢はまるで引き寄せられるように金棒の上の方に当たる。


「うおっ!?」

「ヒイッ!」


 金棒は予想通り無駄筋さんの手から吹っ飛ぶ。 商人はもうびびって馬車の上で丸まっている。 無駄筋さんや他の盗賊は一瞬動きが止まったが、盗賊の一人が俺の方に向いて叫んでいる。 流石に遠くてよく聞こえないが多分「襲撃したのはアイツだ!」とか言っているのだろう。 ……おっ!3人の盗賊がこっちに走ってくる。 他の4人は馬車の周りで商人が逃げないように囲んでいる。 とりあえず俺は【奥義 パラライズアロー】を打つ事にする。 【奥義 パラライズアロー】はダメージが与えられない代わりに当たれば80%の確率で相手が動けなくなる麻痺を発生させる事ができる。


「ウヒィッ!?」

「アハッ!?か、体がっ!?」

「……グフッ。」


 走ってきた3人の盗賊がかなり個性的に倒れる……ムサイ男が「アハッ!?」とか言うなよ……なんだよ「アハッ!?」って。 3人の盗賊を踏んで行きゆっくり残りの盗賊の所に歩いて行く。 残りの4人は警戒しつつも俺に話しかけてきた。


「……貴様、何者だ!」

「ガッシュ達をよくも!」

「ガッシュ達って……あっちで倒れている人達の事? とりあえずここから離れたら見逃してやらないでもないわよ?」

 正直精霊と話しただけだから言葉が通じるか分からなかったが俺の喋っている言葉は通じているようで、盗賊たちがまだ若いエルフに見逃してやると言われてイラついているようだ。

「……チッ、おまえら!さっさと退散するぞ!」

 

 残りの4人は3人の盗賊を担いで走っていく……ふぅ、とりあえず一人も殺さずに何とかなったな。 太った商人はこっちを見ている。 なんか視線がとてつもなく嫌だ。 表現するなら電車の中で女子高生に痴漢をする前みたいな視線を感じる……なんで分かるんだって? 私服の時は何回か痴漢を受けたことがあるからだ……


「大丈夫ですか?」

「ああ、助かりました。 盗賊に見つかってしまうし、困ったものです。 で、ど、どうですか?私の所に雇われてみませんか? ええ、ええお金は後で出しますよ? せめてオルアナ王国まででいいのでどうでしょう……グヘヘ。」

「……」

 

 話しかけるないなや、いきなり早口でいいまくる太った商人。 おそらく、護衛という仕事以外にも美少女なエルフと会話が出来れば一石二鳥的な事を考えているのだろう。 はっきり言ってこんな奴なら助けなきゃよかったと思いつつ、おかしいことに気がついた。


「そういえば商人さん。 何でこんな人が通らない道を通ったんですか? こんな人気のないところを通っているのが盗賊に見られたらそりゃ襲われもしますよ。」

「う……そ、それはだな。 この積み荷が大事なものでな、いち早くとどけなければならなかったのだよ。」

「ふーん……じゃあその大事な物をちょっと見せてください! その中身によっては雇われてあげますよ?」

「な!それはダメだ!」

「ふーん、ま、勝手に見ますけどね~」

「ん?ハハハッ!嬢ちゃん面白いことを言うねぇ。 この馬車は今、最近出来た【魔法 硬化】を使って防御力が上がっているんだ! いくら嬢ちゃんの弓の腕がうまいからって壊れないさ。」


 商人がニヤニヤしながら説明してくれた。 【魔法 硬化】はその名の通り自分、もしくはパーティメンバーの一人の防御力を上げる魔法で、俺も持っているし、魔法使いがレベル5にもなれば覚えるような魔法だ。 なんでそんな偉そうに自慢しているのだろうか。


「別に誰も壊すなんて言ってませんよ?」

「ん?じゃあどうやって見るんだい?」

「こうやって見ます【補助 サーチ】。」


 【補助 サーチ】は、敵のモンスターや他人のキャラクターのレベルや装備などを見たり、 フィールドに生えてる植物を探したりするのに使うスキルである。 そしてこのスキルを使っているときは馬車の中のキャラクターのレベルや道具も見えたはずだ…… 【補助 サーチ】で見えた物は俺の想像通りの物だった。 


【アリア レベル6 エルフ ♀ 】


 どうしてこんな人いない所を一人で渡るのか……多分人さらいのようなことをしたからではないかと俺は推測していた。 もし違ったとしてもどうせロクでもないものだったに違いない。 俺は素早く馬車の後ろに走る。 この馬車は外から中の物がみえないように窓一つない木の箱になっていた、唯一の扉は後ろにあるのを盗賊に近づいているときに見た。 そこには南京錠で扉が開かないようにされていたが、俺は南京錠に対して魔法を発動する。


「【魔法 ウイングカッター】!」

「な…!」


 商人が絶句しているのを無視して南京錠を風の刃で真っ二つにして、扉を開ける。 そこには、エルフ特有の長い耳、肩につくぐらいの長さの黒髪、そしてぱっちりとした青い目は目を見開いている。 俺は呆然としている商人の方にゆっくりと向き、今までの人生で2番目くらいの笑顔をする。 


「あなたは私に人さらいの手伝いをさせる気だったんですか?」

「うっ……ゆ、許してくれ! こうでもしねえと女房と息子を養えねえんだ!」

「そんないいわけは聞きたくありません。 死にたくなければ早く私の視界から去ってください。」

「ひ、ひいぃ!」


 悲鳴を上げながら、草をかき分けていく商人。 俺はそれをしばらく見ていたが、その目を馬車の中の少女に向ける。


「大丈夫?」

「あ、はい。」

「どうして連れ去られていたの?」

「え、えーとですね。 私は、ハイナ教国の小さな村に住んで居たんですけど、定期的に村に商人が来るんです。 私が外で遊んでいたら、馬車が一台だけだったんで不思議には思いましたけど商人だと思って近づいたらいきなり捕まえられてしまって。」

「そう、それは大変ね。」

「……そういえばですけど、ここってどこですか?」

「……それは、私も分からないの。」

「……ええー。」


黒髪の少女の呆れた声が草原にむなしく響いた。



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