第16話 交友関係が広がるのは良いことです
「あ、ギルドカード出来ましたよ~。」
「本当!?もう出来たの!?」
「レイさん30分は喋り続けてますよ。」
アリアとアルカさん、サラさんと喋っていたらいつのまにか30分たってしまったようだ。
俺は転生する前から喋るのは好きだった。 あの俳優が格好いいという話にはついて行けなかったが、あのアニメはおもしろいという話なら女子と1時間喋り続けるのは良くあることだ。
「はいこれ、最初はランクEからです。 ランクEの依頼しか受けられないけどそこら辺は勘弁してねみんなスタートは一緒だから。」
「はい、ありがとうございます。」
「後、一ヶ月に一定量の依頼をこなさないとランクが下がったり、ギルドカードを没収されたりっていう制裁措置があるから気をつけてください。」
「ふむふむ。」
つまりある程度依頼はこなさなくちゃいけないのか。 女王様に会うためとはいえ面倒臭い……。 俺がギルドカードを眺めているとアリアがアルカさんに尋ねる。
「最高ランクは何ランクなんですか?」
「アリアちゃん良いこと聞くね~。」
「まあ、冒険者にはなりませんけどね。」
「いつかなったときのためにも教えとくね~。」
「なりませんって。」
「最低ランクはEでそこからDCBAってなっていて最高ランクはSなんだよ。」
「無視ですか。 私の言葉は無視ですか。」
『アリア、ドンマイ。』
アリアが軽くスルーされたことに涙目になりつつも抗議しているのを黒猫さんが宥めている。 黒猫さんとアリアも二人と仲良くなったなぁ……と俺はほのぼのと眺めている。
「話している所悪いけど、大会の申請も出来たよ。」
「本当!?」
「何でこんな所で嘘着かなくちゃいけないのよ。」
「あ、それもそうだね。」
「……あなたってアルカとそっくりね。」
「そう?」
サラさんがやや呆れつつも俺を見ている。 まあ、アルカとは会話がよく合うけどアルカさんと俺はそっくりなのだろうか? アルカさんはすぐに会話に意識がいっちゃって手作業がよく止まるようだ。
「私も、レイさんとアルカさんってそっくりだと思います。」
「アリアちゃん……私たちって気が合いそうね。」
「サラさん……。」
「アリアちゃん……。」
『二人共何握手して見つめ合ってるの?』
アリアとサラさんは二人でなにやら意気投合しているようだ。
「とりあえず大会のルールを説明するね。」
「はい。」
サラさんが別の受付嬢に呼ばれて裏に行ってしまったので会話をひとまず止めて大会の説明をしようと言うことになった。
「大会は一週間後、首都ハイルズにある大闘技場で行われます!」
「おぉ!」
「この大会はヴェルズ帝国以外の大陸全土から冒険者が集まるのだけれども……今回は出場する人は少なめね。」
『何で?』
「何でも、オルアナ王国とヴェルズ帝国がまた戦争するっていう噂があるらしいね。」
「本当ですか!それ。」
「ええ、結構信憑性高いらしいよ。 戦争があればオルアナ王国内のギルドで戦争に参加する依頼とかが出るの。 そういう依頼は報酬金がとても高いから大会よりもそっちに参加しようっていう冒険者が多いらしいね。」
「それに対してハイナ教国は?」
「戦争には参戦しないらしいね。 この国は今までもあの二つの国の戦争には参加しなかったから。 あ、でも大金と交換にオルアナ王国に魔法を教えたりはしているけどね。」
「そこら辺は知ってた? アリア。」
「まあ、常識と言ったら常識ですね。 後はハイナ教国でしか作れない生地の服を輸出したりしてますよ。」
「その生地も魔法が無くちゃロクに加工が出来なかったりするからなんですけどね。」
やっぱりハイナ教国の収入源は全て魔法のようだ。 流石エルフの国。 魔法の文化が様々な事に使われているようだ。
「話を戻すけど、明日で大会の参加の申請は締め切って対戦相手をルーレットで決めるの。 それで決まった対戦表を5日後、首都ハイルズの至る所に張り出されるから見てね。」
「大会当日の集合時間とかって決まってるの?」
「大会当日は午前9時に大闘技場の受付の人に話しかければとりあえず大丈夫です。 後、試合は一対一の真剣勝負で勝ち抜き戦だと思ってもらえればいいかな?」
「まあ、大体言いたいことは分かったよ。」
『試合中に使っても良い道具とかは? 使い魔とかはあり?』
「……黒猫さんやる気満々ですね。」
『そろそろ目立たないと。』
「なんか切実……。」
黒猫さん……そんな事考えてたんだ。 意外と目立ちたがり屋?
「安心して黒猫ちゃん。 使い魔は直接なら一匹持って行っても良いし、【召喚】を使うなら何体でも試合中に出していいんだよ、まあ出せる人はいないけどね。 あ、でもアイテムは使う武器と装備だけで回復アイテムとかは持って行っちゃダメだよ。」
『じゃあレイ!』
「もちろん!黒猫さんと闘うに決まってるじゃん!」
『流石ご主人様~!』
「なんか呼び方がランクアップした!?」
アリアも驚いているが俺も驚いている。 黒猫さんがこんなテンション上がるとは……。
「まあ、大体の事は言ったかな?」
「はい、ありがとうございます。 アルカさん。」
「ま、仕事だしね。 応援してるよ。 レイちゃん。」
「はい!」
『久々に本気出す。』
「期待してるよ~。 黒猫さん。」
「二人とも応援していますからね。」
「アリアに応援されたらもう、やる気出て魔法乱射しまくっちゃうからね!」
「それはやめてください。」
俺たちは話しながらギルドから出てハイルズの町を見学することにした。
視点変更 レイ→ハイナ2世
「そろそろ闘技大会ですね。」
「はい、女王様。 女王様には開会式に出席してもらい、試合の見学もしてもらいます。」
私はこの大会が好きだ。 この大会の時には政治の事を考えず純粋に試合を楽しむことが出来る。 オルアナ王国とヴェルズ帝国が開戦寸前だと言われているがいつも通りこの国は中立を表明するがこの国も警戒をきつくしなければいけなくなる。 それでも大会は無事開かれることが決定した。
「この大会にハイエルフの方が出てくればいいのに。」
「そうですね……そしてその方が優勝してくれて会食を一緒に……とか考えてません?」
「あ、どうしてそのことを。」
「顔に出てますよ。」
そういえばここ最近はずっと名も知らないハイエルフの方の事ばっかり考えている。 これは本に書いてあった恋みたいだなぁと少しロマンチックな事を考えて少しほほえむ。
「そういうすてきな事があればいいのに……。」
「あったら奇跡ですよ。 女王様。」
「そうですね……。」
そういう奇跡を少しだけは私は期待しているのだった……まるで物語の王子様を待つ子供のように。