第14話 お礼とかって大事だよ?byレイ
五日後、道中ではスライムの群れが出てきたのを【魔法 ファイアキャノン】で焼き尽くしたり、盗賊が俺の召喚したナイトウルフに襲われて涙目で逃げ回ったりといったことがあったら比較的安全に進んだ。
「そろそろだな。」
「首都ですか?」
「ああ、首都ハイルズだ! あの町はとても大きいからなきっとお嬢ちゃん達も驚くぞ! 首都に来るのは初めてらしいからな。」
「はい! 初めてです!」
「どんな町なんだろうね~。」
『キャットフードはあるの?』
「キャットフードにこだわってるね……黒猫さん。」
普通の猫ならキャットフードよりも人間の食事を好みそうだが、ちなみに俺の家で飼っていた犬はドッグフードよりもテーブルから落ちてきた食べ物の方が好きだった。
木々に囲まれている道を馬車でゆっくりと歩く。
「けどこの国って首都の近くなのに木が多すぎじゃない?」
「エルフは元々森の中で暮らす種族ですから。 後、周りに森があれば精霊とも会話しやすいですから。」
「ああ、そっかぁ。」
「それに、森の中ならエルフの独壇場だからな。 森の中ならヒューマンじゃあ相手にならねえ。」
「まあ、精霊に相手の場所を聞きながら戦うからね。」
『つまり周りが木が多い方がエルフの為になるからっていうこと?』
「エルフの国だからね。」
砦には、赤い服を着たエルフの人達……魔導隊の人達だ。 しかしエルフの人ってみんな若いな。 シイラ村にもおじいさんおばあさんは居なかったしレオーナとかいう騎士団長も見た目は若かった。
「検問だ。」
「ああ、いいぞ。 ライヴァン同盟から武器を運んできた。」
「ふむ、確認しよう……その子達は?」
「ああ、その子は「レイです!女王様に会うにはどうしたらいいですか?」ってオイ!」
ん?なんか普通に聞いたはずなのにウイナさんと魔導隊の人がポカンとしてるぞ? アリアは呆れたような表情をしている。 黒猫さんは特に表情は変わってない……猫の表情って何かよく知らんけど。
「どうしたの?ウイナさんそんなに大声出して。」
「大声出すわ! いきなりどんな事聞いてんだよ!」
「だって会いたかったし……。」
「そんなに簡単に会えるわけないじゃないですかレイさん。」
「やっぱ手続きとか必要なのかな?」
『人間は面倒臭いね。』
「えっと……確認出来ましたよ。」
ぎゃあぎゃあと騒いでいると苦笑いしながら魔導隊の男が話しかけてきた。
「ああ、ありがとう。」
「はい、どういたしまして。 ……あとそこのお嬢さん?」
「私?」
「はい、女王様に会いたいんですよね?」
「まあね。」
「なんでそんなに誇ってるんですか……。」
俺が胸を張って答えるとアリアがやや呆れた表情で答える。 ちなみに胸が大きくてワンピースなので胸がかなり強調されているのに気づくのはまだ先だった……。
「ま、まあお嬢さんは女王様に会いたいんだろう?」
「?何で顔を赤くしてるの?」
「な、何でも無い。」
魔導隊の男の人が顔を赤くしているが風邪気味なのだろうか? 魔導隊の人を心配してると別の魔導隊の人が話しかけてきた。
「今度、ハイナ教国で冒険者限定の闘技大会があるんだ。 ここで優勝できれば賞金と女王に直に会えるぜ。 お嬢さんに実力があれば出てみれば良いんじゃ無いか? それ以外じゃあお偉いさんしか女王様には会えないぜ。」
『それって使い魔とかあり?』
「その黒猫は使い魔か! 使い魔ならありな筈だぜ。」
「ありがとうございます!」
「っていうかお嬢さん首都に来るのは初めてか? エルフは特に検問とかないけどエルフ以外の種族はスリとかする奴がいるから気をつけろよ。」
「はい!」
スリねえ……。 スリといえば「マジック・テイル」の職業では種族によってはなれない職業がある。 エルフなら盗賊になれず、ハンマーなどを使って戦う鍛冶職人という職業にもなれない。 「エルフ以外」というのはエルフは盗賊にはなれないからスリはしないという事なのだろう。
「まあ、ようこそハイルズへ!」
「おう! でお嬢ちゃん達とはここでお別れか?」
「まあ、そういうことだね。 まあ、送ってきてくれたお礼とかした方が良いよね?」
「まあ、大事ですよねそういうの。」
「別にそういうの求めてねえしいいよ。」
「いいえウイナさん!これは重要です!相手に貸しを作ってしまいます!」
俺は、とりあえず白金貨を一枚ウイナさんに渡す。 それを見てウイナさんが笑顔のまま固まった。 あれ、おかしい事したかな?
「どうしたのウイナさん? 口の中に虫が入っちゃうよ?」
「どういう警告ですか……。」
『けど気持ち悪い笑顔だなぁ。』
「黒猫さん!確かに思ったけど言っちゃダメ!」
「思ったんですか!?」
やっぱりおっさんの笑顔よりはかわいい女の子笑顔だよな~っと思っていると意識を取り戻したウイナさんが慌てて俺に聞いてくる。
「おい!これって白金貨じゃねえか!」
「そうだけど?」
「いや、そうだけどじゃねえし……これが何Gか知らないのかよ!」
「何Gって……確か100万だっけ?」
「そうですよ。 100万Gです。」
『もしかしてもっと欲しいの?』
「いや!?多すぎるだろ! 国同士の貿易でしか見れないような代物だぞ!」
「まあまあお礼なんだからもらってもらって!」
「いや……流石に多いと思いますけど。」
ウイナさんが受け取らないなぁ……アリアも「そりゃ受け取る人は居ないよ。」っていう目で見てくるので俺はウイナさんに金貨一枚を渡す。
「いやいやこれでも多「いい加減もらわないと魔法を撃つよ?」……喜んでもらいます!」
ふむ、ちゃんとお礼をもらってくれた。 お礼はちゃんとしないとね。 俺が満足してると闘技大会の説明をした魔導隊の人が俺に話しかけてきた。
「そうだ!お嬢ちゃんその闘技大会冒険者しか出場できないが冒険者なのか?」
「え、マジで?」
「そりゃあ冒険者限定って言ってたじゃないですか……。」
「……なら冒険者に登録しなくちゃいけないか~。」
冒険者……っということは仕事とかしなくちゃいけないのかな? 働きたくないでござる。
「……ねぇねぇ親切な魔導隊の人?」
「ん?何だ?」
「女王様って美人なの?」
「まあ、美人だなハイナ教国1じゃねーか?」
「よし! 闘技大会に出る!」
「決めるの早!」
だって俺は見た目は美少女だけど中身はまだ男だもん!……まだ。
「レイさんってもしかして……。」
「ん?何?何かな?」
「……レズ?」
アリアが冷たい目でこっちを見てくる。 っというかこっちの世界にレズという言葉があるのかちょっと驚きだ。
「ん?まさっか~男の魅力がさっぱり分からないってだけでけっしてレズではないよ~。」
ホモじゃねえし。
「いや、それってレズに近くないですか?」
「お嬢ちゃん……まさかレズだったのかい?」
「ウイナさんは黙って。」
今大事な話してるんだ。
「いや、女の子は好きだよ? けっしてレズじゃないよ?」
「矛盾してません?」
「いや?全然?性的な意味は決してないし……アリアは愛でたいっていうの?」
「愛でたいって……褒められてるんですか?」
「褒めてるよ~可愛いんだもんアリア。」
「あ、ありあがとうございます。」
アリアが顔を染めている。 う~んやっぱり可愛いなぁ……ッハ!マジでレズになってる気がする。 相当やばい気がする!……ってあれ?俺は元男だし女の子を好きな方が普通なのか?……いや、でも今は女な訳だし……。
『レイとアリアが固まっちゃった。』
「う~んお嬢ちゃん達は大変だな~何かと。」