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最終話 物語の未来

「お邪魔します」

「ん? ああ、アリア!」

「久しぶりね。 何時ぶり?」

「5年振りです」

「そっかぁ、あれが終わってから5年も経ってるんに……」


 ハイルズの冒険者ギルド。 私がそこに入ると2人のエルフが見えた。

 私の姿を見てギルドのカウンターから手を振るアルカさんに、書類をまとめていたサラさん。 いつもの2人が私たちを歓迎してくれた。

 私たちがヴェルズ帝国での戦いを終え、レイさんが目を覚ました後、私たちはハイナ教国へと帰還した。 レイさんは自分が何者か忘れてしまっていたが、召喚したジャイアントスパイダーのことは覚えていてくれたので、ハイナ教国までは簡単に戻ることが出来た。 

 その時、ハイちゃんが出迎えてくれたが、その時の反応は私たちと同じ。 ハイちゃんのことを完全に忘れていた。 ハイちゃんはそのことにショックを受けていたが、レイさんを抱きしめて優しく迎えてくれた。

 その後、城に仕えている医者に調べてもらったが原因は不明。 「恐らく魔力の消費のし過ぎでは?」という曖昧な診察結果で終わってしまった。

 そしてしばらくネイや黒猫さんと共にハイルズにいたが、記憶喪失が治る見込みが無かったためそれぞれ別々の道に……元々の生活に戻っていきました。

 ネイは冒険者として色々な所を渡り歩いているらしいです。 ガレーナニュースの記者さんが最近Aランク冒険者になったと報告してくれました。 時々私たちの元へも遊びにやってきます。

 黒猫さんは私たちと一緒にいましたが、いつの間にか居なくなってしまいました。 でも、黒猫さんはレイさんのことを今でもご主人様だと思っていていつかフラッと戻ってくると思います。 何となくですが。


「あれ、アリアちゃん。 レイちゃんは? レイちゃんも来るって伝聞機に書かれていたよね?」

「あ、はい。 レイさんなら一度城に寄」

「お邪魔します」


 私が挨拶をした時にアルカさんが首を動かして、私の背後を見ながら疑問を口にした時、ギルドの扉が静かに開かれ、銀色の髪の女性……レイさんが入ってきました。


「アルカ、サラ。 お久しぶりです」

「うん、久しぶり~。 お城ってことは女王様と会ってたの?」

「はい、あ、アリア。 ハイナさんが今夜久しぶりに食事会をしたいって」

「あ、そうなんですか。 分かりました」


 記憶を失くしたレイさんは、私に付いてきて私の生まれ故郷であるシイナ村の教会に一緒に住むことにしました。 そこで教会の手伝いと私と一緒にしながら暮らしていたのですが、レイさんがハイエルフであるということがどこからか漏れ、沢山の巡礼者が来る教会となってしまいお父さんが大忙しです。


「でもレイちゃんほんと変わったね~」

「そうなんですか?」

「昔は何というか……自由っていうのを体現しているような感じだったんだよ~。 今は何というかアリアちゃんのお姉さんみたい!」

「はあ? すみません、昔のこと思い出せなくて……」

「レイちゃん、アルカの言うことなんて気にしなくていいわ。 アルカ、あなたはもうちょっと考えて喋りなさい」

「あ、ごめんレイちゃん……ってサラ酷くない!?」

「事実じゃない」

「むー……納得いかない」

「まあまあアルカさん、大丈夫です。 アルカさんの言う事も分かりますから」

「う~。 レイちゃ~ん」

「はいはい」


 アルカさんの言っていたとおりレイさんは前と比べてかなり大人しくなりました(アルカ曰く私に似た)。 魔族の戦いの後はもっと人見知りというか……オドオドしていたのですが、村で過ごしている内にかなり改善されました。 記憶方面は全然ですが。


「ねえ、アリアちゃん」

「はい、何ですか?」


 アルカさんがレイさんに撫で撫でされているのを微笑ましく見守っていた時に、サラさんがその様子を見ながら私に声を掛けてきました。


「あなたは、昔のレイちゃんに戻って欲しい?」

「……いいえ」


 私はサラさんの言葉を否定しました。 昔の自由で明るい、太陽そのもののようなレイさん。 そんなレイさんが好きでした……でも、今のレイさんも好き。


「というよりは私にとっては今も昔もレイさんはレイさんです。 レイさんと居られれば、幸せです」

「……そう」


 私の言葉を聞き、クスッと笑うサラさん。


「良いわねぇ~そういうの。 私もそんな関係の人と居たいわ」

「アルカさんは?」

「あれは腐れ縁」

「ひ、酷い!? 酷いよサラ~!」


 サラさんの言葉に反応して私たちの会話に混ざってくるアルカさん。 そうしてみんなで笑い出す。 レイさんが守ってくれた平和な光景。


「ねえ、レイさん」

「はい」


 私がレイさんに声を掛けると銀の髪をは揺らし、振り向いてくる。 それに対して私は笑顔を向ける。


「ずっと一緒に居てくれて、ありがとうございます」


 そしてこれからもお願いしますね。











視点変更 アリア→陸


「もう学校に戻ってきて5ヶ月。 すっかり元通りだな」

「そうだな……」


 「マジック・テイル」の中、俺の前にいるのはネコミミの獣人族の盗賊の様な格好をした男。 彼は俺の友人、彰のアバター「アキ」である。


「学校を休んでたお前の友達は戻ってきた途端みんな来たな……というかお前の友達、女の方が多くね?」

「それは、中学からそうだろ」

「まあ、確かに……」


 俺がこっちの世界に戻ってきてからの5ヶ月間。 それはかなり大変な日々だった。

 まず家族会議の後、警察から今まで何処行っていたのかと聞かれた。 だが、俺のやったことを言えるわけが無く、黙秘したせいでズルズルと長引き、数日後犯罪性は無いと言う事でなんとか解放された。

 その後、学校に行けば質問攻めに遭い、女友達からは泣かれ……と何かもう大変だったのだ。

 そしてやっと落ち着いて今に至る。


「でも、俺が来るまで学校そんなに酷かったのか?」

「あぁ、もう元気4割引って所か?」

「そんなに? 俺みたいな人間が居ないだけで?」

「お前、自分の影響力知らないのか? 多分俺がお前と喧嘩すれば、俺が村八分になるぜ。 教師を含めて」

「マジかよ……」


 ちなみに世界が融合するというのは、こっちの世界では一部で騒がれただけで殆どの人は知らないようだ。 なんというか融合が始まった地域はその時深夜で、それを見た人は「幻覚を見ていたから」とか「酔っていたから」とか理由付けがされて、終わってしまった。 ……まあ、それはしょうがない。 俺も信じないと思うし。


「でも本当何してたんだ? 結構長い間」

「ん? 世界救ってた」

「へー……って信じるか!?」

「だよねえ」


 なんてのんびりと会話をしていると何時の間にか短針が頂点を刺す時間になってしまった。


「うーん、おれもう寝るわ」

「おう、じゃあな~。 俺はもうちょっと居るよ」

「了解」


 そう言うと彰は姿を消す。そういえば明日は小テストが有ったっけな……と思い、俺も「マジック・テイル」からログアウトする。

 すると俺の視界はいつもの部屋に戻ったので、直ぐにベッドに寝転がる。

 その瞬間、俺の背後に人の気配がする。

 ここは、俺の部屋だ。 元気の塊な俺の妹の海香?いや、海香はノックぐらいはする。 両親も同様だ。 なんて相手の正体を探っていると


「見つけた。 男だとは思わなかった」


 と相手が声を発した。 このそっけない感じ……まさか!


「黒猫さん!?」


 俺が後ろを向くとそこには黒いコートを着た銀髪の少女。 そう、黒猫さんだ。 あっちの世界で一緒に冒険をしたあの黒猫さんである。


「ど、どうしてこっちに!?」

「頑張って」

「1人で?」

「1人で」


 つまり、黒猫さんはあっちの世界から1人で無理矢理やってきたようだ。 そ、それは凄い事では無いか? 恐らく神業クラス。

 だがそんなことはどうでも良いという風に黒猫さんは私をジッーと見つめる。


「ご主人様」

「ん、な、何?」

「私はあなたの使い魔。 あなたに何処までも付いていく」

「え、そんなストーカーみたいな事言われましても」

「どう言われても構わないけど。 今度は勝手にどこかに行かないで」


 そう言いながらゆっくりと近づいてくる黒猫さん。 まその姿はまるで猫のよう……人型だけど。


「い、いやいやいや、ストップ!ストップ!」

「うっるっさーい!」


 俺が黒猫さんになんとか説得をしていると、海香が部屋に勢い良く入ってくる……あれ、ノックしてない。

 そして俺の部屋に居る黒猫さん(人型)の姿に眼をまん丸にする海香。


「な、な、な……」

「ご主人様、誰?」

「ご主人様って言うな」

「どうでも良い」

「だ、誰えええええええええ!?」


 この後、俺の部屋で黒猫さんと海香が文字通りのキャットファイト(人型だけど)を始める。 ああ、なんか嫌な予感がする……。


「ちょ、ちょっとあなた誰なの!」

「私は黒猫さん、ご主人様の使い魔」

「え、えーっと黒猫さん?呼びづらいよ!」

「どうでも良い。私は使い魔。ずっと付いていく」

「お、お兄ちゃん!?この子に何したの!?」

「いや、俺は別に……」

「私はご主人様と契約をした」

「黒猫さん変な事言わないで!」


 こうして時間帯を気にせず騒ぎ出す2人。 ああ、これは大変な事になりそうだ。

 俺はそう思い、思わずため息を1つ。 でも、全然寂しくは無い。 だってみんな生きてるから……。


「黒猫さん、ありがとう」

「?どういたしまして」

「やっぱり何かしたの!?」


 海香が大声を上げた途端、再び扉が大きな音を出し開かれる。 ……どうやらまた、説教付けのようだ。

 こうして俺の少し不思議な日常が始まるのだが、それはまた別の話。


 

 




これで「物語の中の銀の髪」はひとまず完結です。今まで視聴ありがとうございました!

なんか締まらないけど……まあ、気にしない!

次回作の事とかは活動報告でしていきたいと思います。

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