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第139話 物語のエピローグ

「……ん?」


 俺は冷たいベッドの感触を背中に感じながら目を覚ました。 天井は今まで見てきた……俺の部屋のもの。

 俺がベッドから目をこすりながら降り、周りを見渡す。

 窓の外は暗い。 どうやら夜のようだ。

 机の上にあるパソコンにラノベや小説ばかりの本棚。 壁には彰から貰った少し前のアニメキャラが描かれた壁紙が貼られている。 ここは間違いなく、俺の部屋。

 俺が視界を下に移すと見慣れた谷間は無く、薄っぺらい胸。

 ということは


「戻ってきたのか……」


 俺の元の世界に










 「魔神」は倒せたのだから戻って来るのは当たり前なのかも知れないが、こうして戻って来るとやり残したことが色々頭の中に浮かんでくる。


「……でも」


 「魔神」は倒せた。 あっちの世界は救えた。 俺の友達もみんな……生きている。 それで俺の願いは済んだと半ば思い込むことで無理矢理心残りを揉み消す。


「よし!」


 俺はもう「レイ」じゃない。 「白崎陸」だ。

 そう覚悟を決めた瞬間、急に喉に乾きを感じた。 今までずっと緊張していたのが解けたからだろうか。

 部屋から出て、台所に向かおうと扉を開け……


「あ、痛!」


 扉を開けた先で誰かに思いっきりぶつかってしまった。

 俺が勢い良く開けたせいか良い音が扉の前の廊下に響き渡る。

 さっきの声は……


海香みか?」


 俺が慌てて廊下に出てみるとうずくまってプルプルと痛みに震えているポニーテールの少女が居た。

 彼女の名前は「白崎海香」。 確か今は中学2年生。 俺が言うのもなんだが中々の美少女だ。


「え、お兄ちゃん!?」


 俺の声を聞いた瞬間、先程まで痛みに耐えていたことが嘘のようにバッと顔を上げる海香。

 それにより俺と目が合う。 大きめで元気というものをいつも周りにまき散らしているような目。 今まで妹と目が合う度に見ていたこの目も久しぶりだ。

 そんな風に思っていると俺を見る海香の目が徐々に潤み始める。

 そして素早く立ち上がり


「お兄ちゃあああぁん!」

「ふぐっ!?」


 俺にタックルの如く抱きついてきた。

 別に妹は運動神経が特別良い訳ではないのだが、「レイ」では無い俺の体もそこは同じ。 妹による正面衝突の衝撃には耐えられず、背中から床へと落ちていく。

 その時、背中から聞こえちゃいけない音が聞こえた気がしたが、海香はそんな事気にせず俺に馬乗りになりながら涙目で半ば叫ぶような声で聞いてくる。。


「ねえ! お兄ちゃんずっと何処に行ってたの! お父さんもお母さんも心配していたんだよ! ねえ!」

「ちょ、ちょっと待って背中が、背中が!」

「「背中が」じゃないよ! 何してたのお兄ちゃん!」

「ちょっ、暴れないで! ああ、あああああぁぁ!」


 この夜のプロレス(物理)はその騒々しさから両親が起きてくるまで続いた。 が、その後両親から今まで何処に行っていたのかという尋問に夜遅くまで付き合うこととなった。










視点変更 陸→アリア


 ジャイアントスパイダーの上の魔導隊の医療室。 そこはたくさんの人で埋め尽くされていた。

 魔族との戦いは黒い巨大な門と黄金に輝く女性の一騎打ちの時、皆手を止めてしまった。

 そして黒い門が打ち破られたとき、大半の魔族は武器を落とし、一人、また一人と私達に降伏していった。

 恐らくあの門は魔王のスキルだったのだろう。 それがやられたことにより、魔族は気力を無くしてしまった。

 でも、騎士と魔導隊は喜べなかった。

 魔族と私達の戦力差は圧倒的で、終始押されていたので騎士と魔導隊は勝利を喜ぶというよりは戦いが終わり、死ななかった事に対する安堵の方が大きかったのでしょう。

 戦っていた人達は皆喋らず、壁などに体を預けて目を閉じて、疲れ果てていました。

 そして医療班の仕事はむしろ戦いが終わってからが本番。

 戦いが終わってから続々と運ばれてくる怪我人を、医療班は治療しなければいけない。

 それに私も付き合い、薬の運搬などをしていました。


「レイ様だ!」

「重傷だぞ! ベッドは開いているか!」


 その時、レイさんが運ばれてきました……一角獣の背に乗せられて。 身動き一つしない状態で

 どうやら戦いが終わった後、レイさんの召喚したモンスターが主の元へ駆けつけたようです。 レイさんを迎えるために。 近くにいた医療班の方がレイさんを下ろし、身にまとっている鎧を脱がせる。 レイさんの元々白い肌は青白くなっており、逆に右足は黒々としていて医療には素人の私でも危険な状態で有ることが直ぐに分かった。


「レイさん! レイさん!」


 私が声を掛けてもレイさんからの反応は有りません。 呼吸も耳を凝らさなければ聞こえないほど小さく、体は雪よりも冷たくなっていた。


「レイさん、起きてください!」

「と、とりあえず。 ポーションだ! ポーションを投与しろ!」

「もう薬が有りません!」

「魔族に破壊された場所へ行け! 残っている薬が有るかもしれない!」


 レイさんが来たことで更に医療班が忙しく動き回る。 先程の医療班の言葉通り、現在医療班は薬が足りていない状況。

 重傷者に薬を回して軽傷者には我慢してもらう。 更に「手の付けようが無い」と判断された者はそのまま見殺しにされる。 今はそんなギリギリの状況。


「あ、あの!」

「ん、アリアちゃん?」


 私は包帯を運んできたエルフの医療班の方に声を掛ける。


「れ、レイさんはどうなんですか!? 生きられるんですか!」

「分からないわ。 でもハイエルフだからかしら? 右足はそこまで酷くないと想うわ。 しっかり処置出来れば何とかなるかも知れないけど……」


 そう言い、顔を伏せてしまいました。 処置出来れば何とかなる……逆に言えば出来なければレイさんが危ないという事。


「あんまり薬が残っていないのよね。 さっき薬を探しに行った人達が何か見つけてくれば良いのだけれど……」


 そう言って彼女が不安でため息を一つついた。

 私はレイさんの方を見る。 痛みなどで苦しんではいないが、身動きを一つしない……それが逆に私の心を焦らせていく。

 私に何か出来ることは。 今の私に、私の大事な人を助けることは!


「アリアちゃん!」

「ネイ! 黒猫さんも!」

『ご主人様は?』


 私が頭の中で考えているときにネイと黒猫さんが走ってやって来る。 2人共、身体中が傷だらけだが、治療は後回しにされているみたいだ。


「その、生きてるけど薬が無いみたいで……時間の問題みたいです」

「そ、そうなの!?」


 私の説明に慌てるネイ。 黒猫さんは表情が読めないが、どこか遠くを見るような悲しそうな瞳をしていた。


「く、黒猫さん! 【魔法】とかで何とか出来ないの!?」

『私はそういうスキルを使えない。 それに今の魔力じゃ無理』

「そ、そんなぁ……私が持ってた薬はみんな医療班に渡しちゃったし」

『もう使われた。 アリア、私達は薬を探してくる』

「あ、はい……ん?」


 ネイと黒猫さんが今後の活動を決め、歩きだそうとする。 その時、頭の中で有ることを思い出した。


「ねえ、黒猫さん、ネイ。 レイさんってサラさんから貰ったポーション。 どこに入れましたっけ」










「あ、有った~! 有ったよ! アリアちゃん!」


 私の言葉から3分後、叫ぶネイの手には緑色の液体が入った瓶が握られていた。

 これはハイナ教国からヴェルズ帝国へ行くとき。 サラさんがレイさんに渡していたポーション。 その時は特に必要が無いと言われていたが、ここで出番が回ってきた。


「えーっと、あなたネイだっけ?」

「は、はい!」

「そのポーション半分は飲ませて。 そしたらもう半分は私に渡してくれる?」

「はい!」


 治療班の方がネイに命令をする。

 今この場で一番そういう経験者が多いのは彼女だ。 ネイも黙々と従い、ポーションをレイさんの青ざめた唇の中へと入れ、残りを渡す。

 彼女はポーションを受け取ると中身をレイさんの右足に全て掛ける。


「ここが一番酷いから直接ね。 アリアちゃん、私と一緒に右足全体に塗ってくれない?」

「は、はい!」


 私も指示に従い、レイさんの右足に触る。 黒くはなったが、艶やかな足。 そこに私達は子供を優しくあやすかのように触っていく。


「……うん、とりあえず大丈夫かな。 後は右足を包帯で巻いて、安静にね」


 レイさんの顔色は何時の間にか良くなっていた。 呼吸もちゃんとしている。 右足はまだ黒いが、治療班の方曰わく「身体が良くなれば身体の魔力で自然に無くなる」とのこと。


「良かったよぉ……」

『ネイ、泣かない』

「でもレイちゃんが居なくなったら私……」


 レイさんが無事だと分かって安心したのか急に涙目になるネイ。

 私はそれを見て微笑みながらレイさんの髪を撫でる。

 どっちかと言えばこういう事をするのはレイさんの方な気がする。

 レイさんは何というか……色々出来るけどダメダメ、それでもしっかりやってくれるお姉さん。 私はそんなレイさんと冒険出来て、幸せ者だっのだと心の中で感じる。


「ん……」


 私が綺麗な銀髪から手を離した時、レイさんが小さく呻き声を上げ、瞼を開いた。


「あ、レイちゃん!」

『ご主人様、大丈夫?』

「良かった……では私は他の負傷者の元へ行きますね。 あ、まだ絶対安静だって言っといて下さい」

「あ、はい。 ありがとうございました」


 それに気づいてバッとネイと黒猫さんがレイさんの前にやってくる。 それを医療班の方は微笑みながら見て、ここから離れていく。


「レイさん……」


 私がぽつりと呟くと、レイさんは朦朧とした感じで綺麗な水色の眼を、喜んでいる私たちに向ける。 そして一言


「あなた達は……誰?」

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