第126話 ハイエルフVS魔王
堂々と仁王立ちしている魔王に俺は真正面から駆けていく。 それに反応しレオーナとネイは右、バルテンは左の道に入る。
「……何をする気だ?」
「そっちよりも私を見なさい!」
魔王が後ろの3人に気を取られた隙に一気に彼の目の前まで近づき、剣を振るう。 だが、素早く彼の右手の大剣を振るわれ、斬られる寸前に俺は後方に飛ぶことで回避する。
俺はみんなが何をしようとしているか知らないが、彼らは何か作戦が有るのだろう……とりあえず俺は魔王と正面から打ち合うのみだ。
「そうだな……まずはお主と戦うとしよう。 エルフマスター」
「まずは、とか言ってられるのも今のうちよ!」
俺は叫ぶように言い放つと足に力を入れ、先程よりも速く一気に魔王へ向かう。
私が近くに来た瞬間、魔王は片手で剣を握りしめ、上へ持ち上げ体全身で地面へ叩き込むかのように私へ振り下ろしてくる。 それを俺は両手で握った剣で真っ正面から受け、地面にクレーターでも出来そうな衝撃を体全身で受け止める。
「……っく!」
「ほう、これを避けずに受け止めるか。 避けれた者は今の魔族にいるが、受け止めた者は戦争以来だ」
「そんなに喋ってると舌噛むよ! ていうか噛め!」
表情が若干ながら嬉しそうな魔王に俺はキレ気味に会話する。 けど魔王の力は決して緩まず、徐々に俺を叩き切ろうと力を強めている。 俺は両手なのに何てパワーだよ!
俺が心の中で悪態をついていると魔王の左腕が俺に向けられる。 ……また魔法か!
「させるかぁ! 【魔法 アタッカー】!」
俺が叫んだ瞬間、体がほのかに熱を帯び体から力が湧き出し、押され気味だった魔王の剣を一気に力を込め右方向に勢い良く弾く。 それにより剣を弾き飛ばすことは出来なかったが魔王は体をグラつかせる。
「グッ!」
魔王が驚きと苦悶からか表情を変える。 俺はその隙にまだ俺に向いている左手に対して剣で斬ろうと試みる。
「【魔法 ブラッドハンド】!」
が魔王は身体が不安定な状況でも長年の経験からか左手を向け続け、焦らずにスキルを発動させる。 魔王の左手が赤く染まり、俺の首目掛けて血でできた赤黒い手が左手から放出される。
「……っ! 【魔法 ホーリーオーラ】!」
赤黒い手が首に届く直前に俺の体が純白の光を纏い、血の手は触れた瞬間四散する。 だが、スキルを使った後、俺の前まで来ていた魔王が今度は両手で大剣を握り、頭めがけて振り落とす。 俺はそれを避けきれないと直感で理解し、また剣で受け止める。
その余りの剣の重さに体全身から嫌な音が鳴る。 スキルで強化したこの体でも俺が少しでも気を抜けば簡単に押し負ける位の凄まじい力だ。 流石、魔王……全種族中最高のステータスを持つといわれる魔族の頂点。
「エルフマスター、これも止めるか」
「……あなたも中々やるわね」
「ふむ、まだまだ余裕そうだな」
そう言いながら魔王は徐々に力を込めているのか剣が徐々に押され始める。 魔王とはやはり単純なパワーでは勝てないか……奴にはどうやって勝てば良い? というかまずこの状況の抜け方を考えないと……。
とつばぜり合いをしながら必死に打開策を考えていた時、俺の耳に走っている二つの鎧の音が聞こえてくる。 ……この音は!
「魔王とやら! 後ろががら空きだぞ! 【奥義 ノーブルスラッシュ】」
「……悪いが不意を狙わせて貰う! 【奥義 ナイトオブロード】」
魔王の真横にある左右の道から2人の男……レオーナとバルテンが飛び出して来る。 2人は軽く飛び上がりながら、首をしっかり奥義の影響で純白の光で輝いている剣で狙っている。
魔王は俺とつばぜり合いをしているせいで後ろが疎かになっている。 2人のレベルでどこまで通じるか分からないが、魔王だって一応人だ。 「マジック・テイル」の頃と違い、首を切られればレベルが低い攻撃でも致命傷なはずだ。
魔王は俺のせいで剣を振り回せず、2人の剣は障害物も無く、一気に首へと向かうが。
「【召喚 シャドウデビル】」
魔王がそう呟いた瞬間、魔王の背後から黒い煙のようなものが出てきて、中から黒い手が2人の剣を素手で受け止める。
「なっ!」
「っく!?」
奥義を素手で止められ、思わず立ち止まる。 その隙を逃さず、黒い煙は一気に左の角へ2人を押しつぶすかのような急加速で走っていく……というか引っ張っていく。
「……そういえば、まだ獣人族が居たな。 【召喚 アンデッドバード】」
魔王はバルテン等の様子を全く気にもせず、思いついたかのように呟き、更に体が骨で出来た鳥を召喚する。 ……こいつ、俺と1対1で戦うつもりのようだ。
「最初は何か4人と戦う気じゃ無かったっけ? 怖じ気付いたの?」
「なに、貴様は思った以上にやるようだ。 この戦いを本気で楽しみたいだけだ……それに」
そう言うと剣にかかる負荷が急に重くなる。 俺が呻くがそんな事を気にせず魔王は話を続ける。
「わしは戦いが好きだ。 だがこの戦いには魔族という種族の命も掛かっている。 だからエルフマスター、貴様には負けれん。 容赦なくいかせてもらうぞ」
「……それは俺も同じだ」
魔王は魔族のために「魔神」に仕えた。 恐らく魔族の頂点たる彼からすれば屈辱だろう。 けれども自分に従うものの為に反乱することを諦めた。 彼にも負けられないものがある……でも
俺の剣が目の前まで迫っている。 だがそれに構わず俺は魔王に告げる。
「俺にだって……守りたい大切な人がいる! そのために「魔神」を倒す! 魔王! お前には負けてられない!」
俺も負けられない! みんなが生きてる世界をこれ以上「魔神」の脅威晒してたまるか!
俺は魔王の大剣を弾き、後方に飛ぶ。 魔王は大剣を両手で持っているが、まだ堂々と道の真ん中で立ちはだかっている。
「……互いに負けられぬ事情がある。 ならばどちらか倒れるしかない」
「……ああ、そうだな」
互いに剣を構え直す。 そして2人は同時にぶつかり合う。 実力は拮抗している……後は心の問題だ。