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第123話 雪の積もった首都

 規則正しい真っ直ぐのレンガの道。 地面には若干昨日の雪が降り積もっている。 その街らしくない白い雪を俺達4人分の足跡がついていく。

 4人共歩いている間しばらく無言だったが、窓から知らない人の家をネイが覗く。


「本当に人がいないけど……部屋の中もなんかなあ」

「ん? どしたの?」

「何か味気ないといか……何もないというか……」

「どういう事だ?」


 ネイの言葉を聞き、次の家の窓から4人で部屋を覗く。 中は必要最低限の家具が有る。 だけど何というか……俺が入院していた病室をもっと簡素にして1ヶ月間汚しまくったような感じで人が住むというよりは動物の檻という感じがする。


「多分、貧民層の人間だからだな」

「貧民層? つまり、貧しいって事?」

「でも私が住んでた場所より酷い……」

「ヴェルズ帝国は格差がオルアナ王国以上に酷いらしいからな」


 貧民層……そういえばオルアナ王国やヴェルズ帝国は貴族や平民と言った階級のある国だった。ライヴァン同盟やハイナ教国は階級よりは種族に対する差別だったから忘れていた。

 「とは言ってももう貧民、貴族関係なくみんな「魔神」にやられただろうがな」と吐き捨てるように言ったバルテン。 その顔には若干ながら怒りがこもっているような気がする。


「どんなに名誉や地位を手に入れても人は死ぬ……か」

「分かっているレオーナ。 それでも私は家の名誉の為に戦うと決めたのだ」

「……そうだな」


 そんな下層の酷い有り様を見て、オルアナ王国のバルテンとレオーナが思い詰めた顔になる。 同じ階級社会で暮らす2人には少し心に効く光景だったみたいだ。


「とりあえず、早く城に行こ。 魔族に見つかる前に出来る限り近付いてなきゃ」


 ネイはそんな2人に比べると何ともないような雰囲気で俺達に前進を勧める。 だが、彼女も何か嫌なことを思い出したような表情をしている。

 だが、ここで立ち止まっていても何も始まらない。 俺達はゆっくりと音を殺しながら雪を踏みしめて歩いていく。

 魔族がジャイアントスパイダーに接触するまであと少し、激戦は始まり掛けている……早く行かないと。










「……音が激しくなった」


 ジャイアントスパイダーに向かう魔族の下を通らないようにやや東に回り込みながら城を目指していた時、ネイがふと立ち止まりジャイアントスパイダーの方に向く。 先程からジャイアントスパイダーの砲撃で周囲は爆音に包まれているが、ネイが何か変化に気付いたようだ。


「【召喚】したモンスターも魔族に攻撃を始めたみたいだ。 本格的に交戦になるぞ」


 バルテンの冷静なコメントで俺は状況を把握する。 良く見ると黒い集団の中に赤い鳥みたいなのが数羽突っ込んでいるのが見えた。


「ねえ、城までは?」

「後、200から300って所だな。 歩いてだとまだ掛かる」

「とりあえず、落ち着いて行動しよう。 まだ計画通りにことは進んでいる」

「了解」


 レオーナの言葉を聞いた後、また俺達は静かに歩き始めたのだがネイが耳をピンと立て、声を上げる。


「……魔族が何人かこっちに来る。 みんな気を付けて!」


 彼女の言葉を聞き、俺はジャイアントスパイダーの方を向く。 すると彼女の言っていた通り、魔族の塊の中から5人位が俺達の方に向けて勢い良く飛んできている。 俺達は気付かれたようだ。


「レオーナ、計画通りじゃないじゃん! どうするの!?」

「とりあえず、作戦は続行だ。 追い掛けられながら城へ向かう」

「わ、分かったよ!」


 俺達はレオーナの指示に従い、直線の道を4人で走り出す。魔族はその後ろを黒い蝙蝠みたいな翼を広げ、追いかけてくる。 しかしこうして追いかけられると中学の頃を思い出すな……姫、姫と虐めていた奴らに言われ鬘を無理矢理被せられたり、ズボンを脱がされたり……追いかけられるのには良い思い出が無いや。

 何て嫌な走馬灯もどきが起きた瞬間、頭の中で「プツン」と変な音がした。 そして瞬時にマジックボックスを出し、右手に金の刀身と宝石で装飾された剣を俺は握る。


「……ちょっと攻撃してくる」

「え、れ、レイちゃん!?」


 ネイの戸惑いの声が聞こえたが、一切無視して魔族の方へ急転換しながら空を飛び、真っ正面から突っ込む。


「な!?」


 いきなり俺が突っ込んできたからか、魔族から驚きの声が上がるがそれを気にせず、魔族に上から剣の一撃を叩き込む。 黒い男は手に持っていた剣で防ぐが、俺の力に負け雪の美しい地面に勢い良くぶつかる。


「何だこいつは!?」

「やるみたいだな……」


 残りの魔族が驚いているが、俺は容赦なく、敵に近付きスキルを発動する。


「【魔法 サンダーショート】」


 俺が呟くと、俺の周りに一瞬青白い電気が見え、魔族がまるで感電した虫のようにパタパタと落ちて行く。 【魔法 サンダーショート】は自分の周囲に電気を発しダメージを与えるスキルだ。 ついでに状態異常麻痺にすることも出来る……魔族は皆動かなくなったし、ひとまず終わりかな?


「れ、レイちゃん! 何してるの!」

「あ、ネイごめん。 つい……」

「……理由は後で聞く。 とりあえず、他の敵が気づく前に逃げるぞ」

「は~い」


 俺は地面に降り、レオーナの言うことを聞きその場から逃げ出す。


「……全く、倒せたから良いが。 倒されたどうするんだよ」

「ごめん、ついイラッとして」

「……まあ、気持ちは分かるが」


 俺の言葉にバルテンがうんうんと頷きながら納得をする。 いや、自分でやっといてアレだけど、多分駄目でしょ。


「でもラズよりは強くなかったなあ」

「まあ、みんなあの人位強いと私達が勝ち目ないよ……」


 俺の言葉にネイがしっぽが垂れながら反応する。 そういえばあの戦いの時、相当無茶したみたいだし(俺もだが)余り戦いたくは無いよな……。

 先程の魔族のレベルは多分200~250程度。 ラズが400超えていたのと比べるとそこまで強くない。 ラズやクルルシュムは魔族の中でも強い方なのだろうか?というか強い方であってほしいな……。


「とりあえず進むぞ。 喋らずにさっさと団長について来い」

「あ、は~い」


 俺がネイと会話しているとバルテンに軽く怒られたので、黙ってついて行く。 レオーナは俺達の会話など気にもせず、周囲を警戒しながら歩いていた。


「今のところは私達のところに増援は無いみたいだ……」

「よし、とっと行こうぜ」

「ラジャー」


 俺が倒した魔族が来る気配は無いし、コソコソと動き始めた時、バルテンが城の方を何か確認するように見た。


「……どうしたの?」

「いや、人がいたような……気のせいか」

「……それ、フラグだからやめてよ」

「フラグ? 何だそれ?」


 バルテンの疑問には答えず隠れながら、進む俺達。 魔族の城まではまだまだ掛かりそうだ。

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