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第118話 作戦会議

「……」

「つまり、オルアナ王国側としてはヴェルズ帝国の領地を全て欲しいということですね……ハイナ教国には一切分けず」

「ええ、単刀直入に言えばそうなりますね」

「私達としては土地には全く興味がないので良いですが……あなたがたはしっかり動きますか?」

「……どういう意味かな?」


 オルアナ王国の騎士団のあるテント。 その中でナハトと騎士団のいかにも作戦とか考えていそうな男が静かな口調で……しかし敵意に近いものを出しながら口論をしている。 話の内容は分かり易く言えば勝った場合魔導隊と騎士団、それぞれ何を獲得するか……そんな取らぬ狸の皮何とかな話題で2人は変な方向にヒートアップしていた。


「正直に言ってオルアナ王国の冒険者を募って出来た部隊を私は信用していません。 彼らが周りを考えない動きをすれば私達が被害を被りますから」

「それに関しては問題有りません。 冒険者部隊は気性は荒いですが力のある部隊。 【魔法】がメインでロクに接近戦が出来ない魔導隊にはちょうどいいでしょう」


 と皮肉った口調で言う男。 それを聞いたレオーナとバルテンは少し驚いた顔をする。 どうやら普段はこんな感じではないようだ。 それに対してナハトは


「それは只の厄介払いでしょう? 残念ながら魔導隊はそういう協調性の無い部隊では無いので要りません」

「ちょ、ちょっとナハト!」


 背筋が冷たくなるような笑みで返していた。 ナハトは確かに少し天然毒舌な感じはしていたが、彼のあの言い方からするとどちらかと言えばわざとの様な気がする。


「今は変な口喧嘩しない。 一応、騎士団と作戦を考えてるんだから……」

「すみませんレイ様、つい勢いで……」

「お前もだ」

「……団長、申し訳ございません」


 相手の方も団長に注意され大人しくなる。 全く……これから協力するというのに先行きが不安である。 俺が軽くため息をつくとレオーナは軽く咳払いをし、話を戻す。


「……とりあえず首都には魔族と「魔神」と呼ばれている者しか居ないんだな」

「私が魔族から聞いた限りではね。 騎士団の方は調査とかは?」

「一応鳥型のモンスターを使って偵察したが、人は1人も見当たらなかった。 だが偵察のおかげで今まで不明瞭だった首都の地図は作れた。 書記官、地図を」

「はい」


 書記官……あの武道派ではなさそうな男が先程とは違い冷静な態度で机の上に紙を引く。 そこにはたくさんの四角が規則正しく描かれており、外側には長方形、真ん中には他のと比べ5倍近い大きさの四角が有った。

 ……平安京みたいというのが地図を見た俺の第一印象だ。 形が全然違うが、何故かそう感じた。


「何というか……堅苦しそうですね」


 ナハトはその地図を見て呟く。 成る程、ハイナ教国のナハトにはそう見えたか。


「家屋はオルアナ王国と同じレンガ製が大半ですね……外側にあるのは恐らく国営の工場でしょう」

「工場?」


 俺は書記官と呼ばれた男の言葉に思わず聞き返す。 何というか物凄く懐かしい響きだった。


「ええ、兵士の武器の生産などは全部、国に管理されているようです。 武器を職人に頼んで作って貰うオルアナ王国やハイナ教国とは違い、質は劣るが大量生産が出来る設備が有ると言われております」

「……成る程な」


 書記官の言葉にレオーナが頷く。 ヴェルズ帝国はヴェルズ帝国で独自に進化して居たみたいだ……今はもう「魔神」によって人は消えてしまったが。


「……話がそれました。 とりあえず「魔神」や魔族を倒すというのが目的ですね」

「そうだよ」

「でしたら「魔神」を探すのにあなたを含め何人かで行き、他の魔族を騎士団、魔導隊の共同戦線で倒す……というのが定石だと思います」

「……やっぱりそういう感じだよね」


 「魔神」や魔族の数は分からないが数で倒す。 正直、敵の情報がまだまだ分からない以上これがベストだろう。


「作戦の決行は?」

「日が出たら、魔導隊の使っていたあのモンスター……」

「ジャイアントスパイダー?」

「はい、それで突撃をしましょう。 後、騎士団、魔導隊は出来る限り【召喚】をしておき、モンスターをメインに戦います」

「うん、分かった」

「後「魔神」への攻撃の人員はどうしますか? レイ様は確定だとして……」

「私が行こう」


 「魔神」の話になった瞬間、今まで黙っていたバルテンが急に手を出してそう言った。


「実力は問題無いだろう」

「ま、まあ……私は良いけど」

「レイ様が良いなら私としては言うことは有りません」

「……」


 魔導隊側は俺の一言で「問題無し」という結論に落ち着く。 彼はあれでもAランク冒険者だし「家に貢献する」っていう野心も有るし、逃げることは無いだろう。

 だが騎士団長のレオーナはバルテンの言葉にしばらく考えるような素振りをしていた。


「……どうしましたか、バルテン」

「いや、お前が良いなら構わない。 ……レイ、私も「魔神」側に入って良いか?」

「え? 騎士団長が!?」

「団長、正気ですか?」

「お前は相変わらず失礼なことを言うな……」


 書記官の上官に対する発言とは思えない言葉にため息をつく騎士団長。 その様子から何時もの事みたいだ。


「なに、敵の首領の所へリーダーが行くのは当然だろう」

「ナハト、そうなの?」

「魔導隊には別にそんな事は……」

「とにかく、私も行かせて貰う。 他の騎士や魔導隊の指揮はナハトだったな、君に任せたいのだが」

「……はあ」


 レオーナの言葉に訝しげな表情になるナハト。 まあ、他国の人にあれやこれや言われるのは余りいい気分では無いのだろう。


「ナハトが居なくちゃ、纏められないって意味だよ。 大丈夫、応援してる」

「レイ様がそう言うなら……分かりました。 受けましょう」


 俺の言葉で若干不満そうながらレオーナの意見をナハトは快諾する。 これで「魔神」へ向かうメンバーはレオーナ、バルテンに俺……うわ、男しか居ないし話したことが少ないメンバーだから色々不安だな。

 何て頭の中で考えているとふと頭の中に猫耳と尻尾が浮かび上がる。 そうだ、彼女ならレベルも高いし信用出来る。


「あ、私としてはネイも一緒に連れて行きたいんだけど……」

「ネイ? 何処かで聞いた名だな」


 俺の提案に首を傾げるバルテン。 そういえばネイとバルテンって闘技大会で戦って居たんだっけ?


「獣人族の人だよ。 かなり強いし、魔族とも戦ったから信頼できると思うけど……」


 俺が相手の出方を伺いながら聞く。 するとレオーナとバルテンは首を縦に振る。


「私は構わない」

「獣人族……まあ、良いが」


 良し、許可を取れた。 ネイが居れば、空気が重くなることも無いだろうし大丈夫大丈夫。


「ではこのメンバーで良いですか? なら細かい作戦を……」


 その後は書記官を中心に更に細かい部隊の配置やモンスターの数を考えて、ひとまずお開きになった。

 ……戦いは後少し、俺の冒険は終わりに近づいていた。

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