第114話 本気モード!
「うわ……壊れてる」
「これはまた見事に……」
俺とネイが2人で驚きの声を上げる。 目の前には堅牢そうな巨大な砦が砦本来の役目を無くしてしまう程の大穴が開いていた。
あの後、俺達はナハトの予想通り昼頃にヴェルズ帝国の砦に到着したのだが、そこでこの壊れた砦を発見した。
「誰が……って「魔神」や魔族の仕業か」
「だろうね~」
ヴェルズ帝国にこんな穴を開けて入るなんて出来るのはあいつら位しか予想できない。 何て考えていると隣のアリアが「あっ」と何か気付いたような声を上げる。
「どったのアリアちゃん?」
「い、いえ大した事じゃないのですが……」
「何でも良いよ~」
「その……記者さんが前にヴェルズ帝国の近くで「平原の主」が逆走したって話を前に聞いたのを思い出して」
『有ったね。 そんな話』
ガレーナニュースの記者さん……確かにそんな事を言っていた覚えが有る。 という事は……
「アリアちゃんは「魔神」を見たから「平原の主」は逃げたって思ってるの?」
「はい、恐らく」
ネイががアリアの考えを分かりやすくまとめる。 ふむふむ、確かにそれなら一理ぐらいは有りそう。
『でもご主人様には攻撃してきた』
「そういえば私は戦ったね。 でも「魔神」の方が恐らく強いんだし……」
「もしくはレイさんはそんなに強そうには見えなかった……とか?」
『あー……』
「成る程」
「いや、納得しないで」
黒猫さんとネイの納得した声に俺は突っ込みを直ぐに入れる。 俺に攻撃されたから怒って攻撃してきたに違いない。 決して俺が弱いわけではない。
「……まあ、いいや。 ジャイアントスパイダー! 進んで!」
俺は話題を終わらせるためにジャイアントスパイダーに指示を出す。 ジャイアントスパイダーは巨大な足を一本ずつ上げ、ゆっくりとそれでいて俺達に揺れが余り来ないようにしながら砦の上を通る……こいつも砦の役目を無意味にしてて砦の事を少しかわいそうに思ってしまった。
「ついにヴェルズ帝国だね……」
俺がそんなどうでも良い事を考えている隣でネイがぼそりと呟く。 そうだ……ここから先は「魔神」の領域。 いつ魔族が来ても可笑しくない。
「私も本気モードにならないとね」
「本気モードですか?」
アリアが俺を方をジト目で見てくる。 まるで「そんなの有るなら最初から出せよ」と言わんばかりの冷たい目である。
その気持ちは分かる。 けど大丈夫、これから真面目に働くから。
「うん、装備変えるの。 「魔神」とか魔族相手に「見た目重視!」とか言ってられないからね」
「成る程……」
「レイちゃんの服。 その時点で十分凄いけどね」
俺の言葉を聞きやっと理解を示したアリアとそれを聞き苦笑いをするネイ……そうだ。 俺は自分の持っている装備の事を考え、ある事を思いつく。
「アリアも着替えよ? 今回は本気で」
「本気って……」
「確かにこれは本気ですね」
『何か雰囲気違う』
俺達が根城にしている建物へ戻り、アイテムボックスから出した装備に着替え2人と1匹に見せる。その姿を見て2人と1匹がそれぞれ感嘆の声を漏らす。
今の俺は頭以外全部をどんなものでも弾きそうな純白の鎧が守っている。 頭は大切な友達がくれたリボンでポニーテールにした後、頭の上に純白と黄金のティアラを付けている。 そして上半身はどのパーツもまるで蔓のような金色の装飾が施されていて胸のところには黄色く輝く宝石が取り付けられている荘厳な鎧、下半身は上の鎧の下からスカートのような黄金の布が左右に出ていて多少ゲームの女性装備らしさが有るが、そこにも装飾付きのプレートが付けられている。 靴は可愛さゼロ、神々しさプラス100の純白の足甲に替えられており、中からちょこっと見える黒いストッキング位しか萌えるものが無い。
このガッチガチの装備の名は「聖帝の鎧」と言われる装備であり、俺が「マジック・テイル」をプレイしていた時点では最強装備の一角である。 防御力は「マジック・テイル」1を誇り光属性のスキルの威力強化や【魔法】によるダメージを10%カット、挙げ句の果てにはHPの自動回復すらあるというまさしく絶対防御と言われる程の代物であり、これを手に入れる「マジック・テイル」は火の海に(大体俺のせいで)なった程である。
「今までとは雰囲気が違うどころか……あなた、レイさんですか?」
「これは魔導隊じゃなくてもレイ様って呼びたくなるわ~」
『元々ご主人様だから関係無い』
三者三様の感想を言ってくる内容が概ね聞きたかったものを貰え俺は内心満足する。よし、次に移行しよう。
そう考えると俺はマジックボックスから濃い紫のような色で、紋章のようなものが描かれた黒いローブを取り出す。
「さあ、アリアもこの服に着替えよ」
「え……何ですか?これ」
「Sランク装備だよ。 アリアだってこえから危ないところに行くんだし、装備くらいはしっかりしないと」
『……ご主人様が真面目』
俺がアリアにローブを手渡すと黒猫さんが有り得ないものを見る目で見てくる。 ……流石に俺だって仲間のことは考えてる。 失礼な使い魔である。
そんな俺達を気にせずアリアは服を素早く着替え終える。 今までと違ってちょっと妖しい雰囲気が出てしまったが。 アリアの幼い顔のおかげで何処か可愛らしくなっている。
「何か不思議な肌触りですね……レイさん、ありがとうございます」
「どう致しまして」
アリアが自分の背中を確認しながら俺に向けて感謝をしてくる。……うん可愛い!
俺がそんなアリアを見て鼻を押さえ、黒猫さんから「何だいつも通りか」という視線を受ける中ネイが俺にちょっと疑問に思った感じで話し掛けて来る。
「ねえレイちゃんさ……」
「ん?」
「その鎧、重くないの?」
「え? ああ、何か全然重くないよ」
俺はネイへの解答の後、クルリとその場で一回転する。 鎧自体は鉄がぶつかる音が凄いするが、俺自身全く重さを感じない。 恐らく「不思議な魔法パワー」が有るのだろう。 分からない事はそうだと決めつけておくに限る。
「へ~、何かレイちゃんが今までと違って重装備だからどうなのかな~っと思ったけどSランク装備って凄いなあ……」
「ネイも着る? 私義賊用の装備も有るよ?」
「え? 良いの?」
「うん、というか。 残ってる服は魔導隊の皆さんに渡そうと思ってたし」
魔導隊の服は確かBランク相当だと前アリアから聞いた覚えがある。 なら俺の持っているそれ以上に強力な装備を渡せば1人1人の戦力が上がり。 勝てる確率が増えるのでは?という考えがついさっき思いついた。 「魔神」を倒すためだ。 自分で装備出来るのは限られてるし持っているだけじゃ何の意味も無いしな。
「け、決してネイが心配とかそんな訳ないんだからね!」
『急に真面目からボケるのやめて』
「はい……」
「あはは……うん、好意をありがたく受け取るよ。 それでどんな服が有るの?」
俺の提案に苦笑しながらも目を輝かせて聞いてくるネイ。 ネイも冒険者だしSランク装備とかは気になるのかな?
「うーん……そうだね……」
俺はワクワクしているネイをみながらアイテムボックスを探す。
「魔神」を倒した後、こんな風に騒げたら良いな……と心の中で感じながら。