表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/142

第109話 ジャイアントスパイダーで進むよ何処までも

視点変更 レイ→彰


「……何か騒がしいな」


 俺が街に着いた時、目に入ったのは慌てて走る人の姿だった。

 どの人も露天でアイテムを買ったりしている。 何か依頼に大勢で行くのかとも思ったが、そんなに慌てる理由が分からない。 という事は……

 俺はあるモンスターを思い付き俺の隣を走り抜けようとしていたプレイヤーに話し掛ける。


「おい、ここにジャイアントスパイダーでも来るのか?」

「あ、ああ……ついさっき近くに休止状態のが見つけられたんだ。 ここら辺に街はここしかないからな……多分来るぞ。 お前も拠点がここに有るなら急いだ方が良い!」


 ジャイアントスパイダー……「マジック・テイル三大事件」の一角の超巨大モンスター。 それがここに来るようだ。 だがジャイアントスパイダーが現れるときは事前に連絡が来るはずだが……。


「あ、アキ! おーい!」


 俺が走り回っている人達を見ながら考えているとアルナが俺の姿を見つけ、重そうな鎧から音を鳴らしながら走って来る。 俺がこの街に来たのはアルナと近くのダンジョンにレベル上げする為なので彼女がここに居るのは間違いではない。


「ジャイアントスパイダーだって、アキはどうする?」

「んー」


 アルナも聞いていた問題を聞いた様で。 俺に軽い調子で聞いてくる。 ジャイアントスパイダーか……奴を倒すには基本集団で挑むものだ。 だから拠点がここにある人達は今慌てているのだが、ここに拠点が無い俺とアルナにはわざわざ戦う理由が無い。 けど事前の知らせが無いジャイアントスパイダー……正直少し気になる。


「後ろの方で参加してみようかな?」

「え……アキ? マジで?」

「マジだ。 アルナはやんなくても良いぞ」

「むぅ……」


 俺がアルナに言葉を返すと彼女は拗ねるように口を尖らせる。 俺の言葉に何か不満が有るようだが……どうかしたのだろうか?


「わ、私もアキとやるよ!」

「え? アルナジャイアントスパイダーと戦うのは無いんだろ? 大丈夫か?」

「だ、大丈夫だよ! 誰だって初めてはあるよ!」


 まあ、それもそうか。 と心の中で納得する。 まあ、アルナのレベルなら邪魔にはならないだろうし問題無いな。


「じゃあアイテムは……問題無いから砦の大砲が残ってたら借りに行くか」

「うん! あぁ~大砲かぁ、良いよねぇ……」


 俺の言葉を聞いた途端いきなり頬を緩ますアルナ……いきなりどうしたのだろうか?


「前の戦争の時に使ったけど超格好良いじゃん! あの弾を込めてバーン!って感じ!」

「まあ、言いたいことは分かるが……」


 大きな手振りで俺に説明をするアルナ……言いたい事は分かるんだがもうちょっと表現は無いのだろうか?

 だがいつもよりハイになった彼女はまだ喋る。


「分からない? ほら、あの敵に当たった時のドーンって感じ! 興奮しない?」

「分かるけど……」


 分かるけど、凄い面倒くさい。 何か色々頭が痛くなってきた。

 俺が疲れた感じのため息を1つこぼすと、不意に俺の後ろから黒い布を着た黒猫がスタスタとアルナの前に歩いてくる……あれは黒猫さん? 俺は黒猫さんは召喚してないんだけど……。 何て少し考えながらアルナの前で止まった黒い塊を見ていると


『うるさい』


 とアルナへ向けて鈴のような綺麗な声で苦情を発した。


「へ?」

「ん?」


 黒猫さんに思わず驚きの声を上げる俺達。 黒猫さんって喋れたのか……今まで一度も喋ったこと無かったのでかなり驚いた。 しかも第一声が苦情とは……ついさっきまで騒いでいたアルナもポカンとして黒猫さんを見ている。


『夢の中でもうるさいのがいるのは苛つく』

「え、えっと……ごめんなさい?」


 黒猫さんの容赦がない言葉に少したじろぐアルナ。 そして使い魔とはいえNPCに頭を下げるアルナ……そう考えたら彼女の事を少し哀れんでしまった。

 アルナが頭を下げること約10秒。 彼女は黒猫さんから返答がない(本来黒猫さんは返答しないのだが)のが気になったのか顔を上げる。


「く、黒猫さん?」

「何時もの通りに戻ったみたいだな」


 黒猫さんはアルナが頭を上げるのを見た後は頭を下げていた事を歯牙にもかけず、ゆっくり俺の後ろに移動する。 そして指示を待つかのように俺を見て来る。 どうやら俺の黒猫さんのようだ。


「……おかしいな【召喚】した覚えは無いんだが」


 黒猫さんの奇行を見た後、俺はメニューを開き自分の状態を見る。 すると画面にはHPやMPの下に【召喚 黒猫さん】と簡単に書かれている。


「アキ、私が来る前は黒猫さん居なかったよね?」

「ああ、それは間違いないんだが……」


 俺達はしばらく黒猫さんをジャイアントスパイダーの事を暫く忘れながら眺めていた。










視点変更 彰→レイ


「むむ……」


 誰も居ない右にも左にも、前にも後ろにも何処にも誰も居ない。

 ジャイアントスパイダーにそんな隠れられる場所有ったっけ? いや、俺の周りに居ないだけか……。

 俺は独りで納得しながらジャイアントスパイダーの街をゆっくり歩き始める。


「誰も居ないな……」


 ちょっと歩いていたが誰も居ない……いやいや、流石にこれは人居なさすぎだろ。 なんて心の中でツッコミを入れる。

 他に探してない所は……。


「あ、そっか建物の中か」


 俺はジャイアントスパイダーの建物を見ながら思わずそう呟いた。 ジャイアントスパイダーの上に有る大量の柱のような建物。 「マジック・テイル」では中に入れ無かったが、きっと入れるに違いない。 そう思い手近の建物に近づく。

 建物には鉄でも木でも無い茶色いドアノブ付きの扉が設置されており、俺がドアノブを回し扉を開ける。


「あ、レイさん」

「ヤッホー」


 扉を開けた先は二階へ行けそうな階段と下に続く怪しい階段が有るだけで他は何にもないが、中にはアリアとネイそして黒猫さんのいつものメンバーが居た。


「良くここに居るって分かったね。 他の建物には魔導隊が居るんだけど……」

「レイさんは中の様子が分かるんですか?」


 どうやら魔導隊の人達も建物の何処かに居るという予想は当たっていた様だ……まあ荷物には食料とかも有るだろうから雨に当たらないしないと大変だもんな。


「いや、何となくかな……あれ、黒猫さん寝てるの?」


 俺がアリア達を見ていると黒猫さんが丸まってピクリとも動いていない事に気付いた。 何時もならジッと冷たい目で見ているのに……何か珍しい。

 少し寝ている黒猫さんに好奇心の様な物で観察していると黒猫さんが急に目をパチッと開く。


『……何?』

「あ、いや、何でもないよ」

『……そう』


 俺の言葉を聞いた後黒猫さんはゆっくり立ち上がり体を起こすために体を伸ばす。 その時、少し不審そうな顔をして俺を見て来る。


『ご主人様、まだ移動しないの?』

「……あ、そうだね」


 そういえば俺が乗っている街をまだ動かしていなかった。 黒猫さんが日が出ている内に俺に気付かず寝ているのを珍しがっていて忘れていたが、ジャイアントスパイダーを動かさなくちゃいけないんだった。


「よし、起動! 移動ルートは北……行くよジャイアントスパイダー!」


 俺がそう叫ぶと声に反応してか街が大きく揺れる。


「うわっ!」

「きゃっ!」


 その揺れにネイとアリアが悲鳴を上げ転ばないように踏ん張っているがそんな事はお構い無しに揺れは続き、足場が少し斜めになったりしてジャイアントスパイダーが徐々に立ち上がっているのを体で感じる。

 しばらくすると揺れはピタリと収まった。 そして先程よりは穏やかで規則正しいリズムでまた揺れ始める……どうやら揺れが止まったのは完全に立ち上がったからで、今はヴェルズ帝国へ向け歩き始めた様だ。



「……予想はしてたけど凄い揺れたねえ」

「はい、少し頭がクラクラしますが……」

『問題無い』


 皆の何時も通りな様子に少し安心するが頭にこれからの事が思い浮かぶ。

 これから今までとは比べられない程の強敵……「魔神」と戦う為に進む。 それが今まで以上にリアルになり緊張で体に力が入る。


「皆、勝とう」


 俺がアリア達を見て言う。 彼女達は全員俺の方を向き、それぞれ返答をして来た。


「はい!」

「もちろん」

『当たり前』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ