第10話 シイラ村での出来事
村の建物は殆どが木製で出来ている。 ……うん、村だ何もない普通の村だ。 村の人は皆アリアを見かけるとみんなやってきた。
「あれ?アリアちゃんじゃないか! 何処に行ってたんだい! みんな探したんだよ!」
「……すみません迷惑を掛けました。」
「いや!無事ならいいんだよ。」
「あ!アリア!何処に居たの!?」
「ルイス!ごめん心配掛けちゃって。」
「……ううん。 村じゃあ人さらいに攫われたんじゃないかって言われたから。 大丈夫だったんだね。」
「うん、レイさんに助けられたから。」
「へぇ、ありがとうございます!あなたのおかげで私の親友を助けてくれて。」
「ふっふ~ん、どうしまして。 あなたはアリアの友達?」
「は、はい! ルイスです。」
「アリア、いい友達いるじゃない。」
「ま、まあいますよ。」
アリアは慕われているんだなぁっと俺はこの光景を見て思う。 それでもアリアは外に出たいと思った。 まあこんなに小さな村に14年もいれば外に出たいと思うのも当然か。
「あ、私の家はそこです。」
「おぉ~、本当に教会なんだね。」
「そりゃあ、神父の娘ですから。」
村の中に一つだけレンガ造りの教会が建っている。 これだけ雰囲気が他の建物と違う。 中々高級そうだ。
「ハイナ教の教会は国が建てるんですよ。」
「そこにアリアは住んでいるの?」
「はい、そうです。」
「じゃあ、あそこが戦場か!」
「だから実力行使は最後ですよ。」
「最後ならいいんだ!」
なんだかんだと会話しながら教会の扉に辿り着く。
「中でお祈りとかしてる可能性はないの?」
「お祈りをしてるときは見張りの人以外はみんな教会にお祈りに行きますから。 大丈夫ですよ。」
「ふーん。」
本当に熱心な信者が多いんだなぁ日本とは大違いだと関心しているとアリアが扉をノックしてから開ける。
「お父さん? 居ますか?」
「アリア!無事だったの!?」
アリアが教会に入ると黒髪が腰に着くくらいの長さでややウェーブがかかっている。 胸は結構大きいな……アリアの将来が期待できる。 アリアはとりあえず今までのいきさつを伝えているようだ。
「とりあえず帰ってきてくれてよかったわ……もう何処にも行かないわよね?」
「え、え~っと。」
「ふっふ~ん。 アリアは私と冒険をするのだ~。」
「は?」
「……レイさんもっと分かりやすく説明を。」
「そこら辺はアリアが説明してよ。」
「なら口を挟まないでください。」
「……すみません。」
『これはレイが悪い。』
黒猫さんにも言われてしまった……。 がっくりと俺はうなだれる。
「旅に出る!? そんなのダメよ!」
「一人ではないから大丈夫だってばお母さん。」
「ダメよ! あなたは大事な娘なのよ。」
「ですがずっとこの小さな村に閉じ込めておくつもりですか!」
『小さな村言っちゃうんだ。』
「変なところで関心してないの。 大丈夫ですよ私がいますから。」
「だから心配なの! たかが人さらいから娘を助けたくらいであなたみたいな小娘一人で信頼できると思っているのですか!?」
「ちょ、ちょっとお母さんその人は……。」
「信頼できるか証拠が欲しいという事ですね?」
『……レイ?』
「レイ……さん?」
「そ、そうね信頼に値すれば考えてあげてもいいわよ?」
「じゃあ明日朝に誰か相手を用意してください。 決闘で決めましょう。」
「そうね……いいわ。 夜にお父さんと相談するから。 アリアは今日は教会に泊まりなさいね。」
「……はい。 すみませんレイさん。」
「分かったわアリア。」
いったん別れて黒猫さんと教会を出る。 そして宿を一人と一匹で探すことにした。
「そういえば【補助 変身】って使えるのよね?」
『ん? まあ出来るよ。』
「やってみてくれない?」
『……まあ、いいけど。』
そういうと黒猫さんの体が白く光り出す。 あまりのまぶしさに俺は目をつむってしまった。 しまった!変身シーンとかあったんじゃないのか!?
「何で目を閉じているの?」
「ん?うわあ!かわいい!」
目を開けたらそこには黒いコートを着たヒューマンの女の子がいた。 髪はどちらかというと白に近い色の灰色。 身長はアリアよりも小さい位。 胸はぺったんこだ。
「……失礼な事考えてない?」
「い、いいえ何も?」
「考えていたでしょ。」
「……と、とりあえず宿を探そう!」
「……逃げた。」
黒猫さんが猫の体に戻る。 理由を聞いたら『宿代が一人分で済むでしょ?』とのこと。 中々考えているようだ。 村人に聞きながら宿屋を見つける。 二階建ての木造の家だ。 俺は宿屋の中に入る。 中にはエルフの女性が一人……多分この宿の女将なのだろう。
「中々かわいいお嬢ちゃんと……黒猫?冒険者かい?」
「はい、こっちのは私の使い魔です。」
「へぇー、使い魔かい。」
『その通り。』
「おっ喋るのかい。 なかなか面白いねぇお嬢ちゃん達は。」
「ところで泊まるときは。」
「ああ、一人分でいいよ。」
「ありがとうございます。」
「あっ、でも今は狼の集いっていうギルドが来ているから一応気をつけておいてくれよ。」
「何で?」
「正直言って。 偉そうにしていて困ってるんだよ。 まあ刺激しないようにって事だ。」
「はい、分かりました。」
お金を払い中に入る。 一階は食堂になっていて二階が客室らしい。 女将に誘われて二階に行く。
「ん?女将さん?何だそのお嬢ちゃんは。」
二階の廊下でいきなりヒューマンの男達にからまれました。
「ああ、お客さんだよ。」
「客?ということは村人じゃあねえんだな。」
「ああ、冒険者らしいよ。」
「冒険者?んな馬鹿な!?」
男達がいきなり笑いまくる。 正直いますぐ全員を【魔法 エクスプロード】で炭にしたいが耐えて、質問する。
「何がおかしいんですか?」
「だってお嬢ちゃん一人だろ? 一体何で戦うんだよ? 魔法か? 一人で使う魔法なんてたかがしれてるぜ。」
「そうそう、お嬢ちゃんみたいな世間知らずが冒険者名乗ったら俺たちの名が落ちちまうぜ。」
そうだそうだと言いながら男達が去る。 苦い顔をした女将が俺に話しかける。
「すまないね、気分を悪くしたかい?」
「いいえ、大丈夫です。」
女将に部屋を案内されてからはすぐ風呂に入り、明日の作戦を黒猫さんと考えていたが途中から黒猫さんの着せ替えショーになっていたのは気にしない事にしよう。
視点変更 レイ→アリア
「……で、アリアお前の気持ちは変わらないんだな。」
「はい、私は自分の目で外の世界をみたいと思います。」
夜、教会でお父さんとお母さんと一緒に夕食を食べる。 正直、この二人よりもレイさんと居る方が何かと気が楽に思えてしまう。 たった四日間しか一緒にいないのにおかしな事だ。 まあ、なんか私が勝手に特別視しているのだが。
「どうか言ってよ!あなた!」
「……まあ、お前の言うレイという子が決闘を申し込んできたのだろう? 俺たちが用意した対戦相手と闘えばアリアの事は諦めるのだから強い相手を用意すればいいじゃないか。」
「誰を相手に出すつもりですか?お父さん。」
「今、狼の集いというギルドの者達が泊まっているだろう? そこにギルドマスターがいてな。」
「まさか!?」
「そのまさかだよアリア。 ギルドマスターが直接闘ってくれるように頼んだ。 あのような20歳にも満たない少女にギルドマスターと闘わせれば流石に諦めてくれるだろう。」
「大丈夫かな……。」
「流石に少女相手だ手加減はしてくれるだろう。」
「いや、そのギルドマスターの人が。」
「はっ?」
「いえ、何でもありません。」
「まあ、レイという娘が負ければこの村に残ってくれるのですよね?」
「ええちゃんと言いましたよ。そこは守ります。」
その後、一人で風呂に入り。 レイさんに少しの不安を思いつつもベットで寝た。
なんだかんだ言ってレイさんが勝つとしか私には思えなかった。