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第106話 震えるぞ大地!

「はあ……【召喚】ですか?」


 俺は準備していたナハトを捕まえ、ヴェルズ帝国に素早く移動するために【召喚】をしたいという話をした返答がこのいきなりで理解不能という感じの声であった。


「ですが、200名の魔導隊とあなた方を運ぶ程の大きさのモンスターとなると何人で【召喚】をすれば……まず、そんなモンスター居るんですか?」

「そこら辺は大丈夫。 全部私が何とかする」


 俺が胸を張ってそう答えるが、彼はその言葉がどうも信じられない様だ。 まあ、1人で馬鹿でかいモンスターを【召喚】すると言っている様な物だから、信用の前に不審に思われるのは当たり前か。


「私、闘技大会でも【召喚】してたんだよ? 見てなかった?」

「……む、確かにそのような話は聞いた覚えが有ります。 その場で素早くモンスターを【召喚】し鮮やかに倒したとか……」

「そうそうそれそれ」


 俺の肯定を聞いたナハトが直ぐに納得顔になる。 どうやら俺が【召喚】出来ることは理解してもらえたみたいだ。


「……まあ、レイ様の言うことを聞きましょう。 女王様が嘘を付くような方を信用する訳もないですしね」

「うん、ありがとうナハト」


 俺が感謝の言葉を伝えるとナハトは「いえいえ」と言いながら俺から離れていく。 俺の言った内容を部下に伝えにいったのだろう。 やっぱりハイナ教国の人達は物分かりが良くて助かるな。


「「マジック・テイル」はエルフを極めといて良かった……ってエルフじゃないとこっちに喚ばれなかったんだっけ?」

「「マジック・テイル」? ……何ですか?それ」


 気がゆるみ独り言をボソッと呟くと後ろから何時も聞いているツッコミ少女の声が急に聞こえた。 少し驚きながら後ろを振り向くと俺をじっと見るアリアが居た。 ……何時のまに俺の後ろに居たんだ。


「あ、あれ? アリアだけ? 他のみんなは?」

「女王様やネイや黒猫さんですか? 女王様は魔導隊の人達とお話に。 秘書の方は部隊の方とスキルに関する話との事で近くには居ません。 ネイと黒猫さんは女王様の方について行きました」

「へ~」


 スキルの話? 【召喚】して良いモンスターとか話し合うのだろうか?


「で、レイさん。 「マジック・テイル」って何ですか? 本の名前?」

「え、え~っと……」


 やばい、何て言おう。 いきなり異世界とか言い出したら流石のアリアも、というかアリアでも引くだろうな……。 何て考えながら悩んでいるとアリアが更に俺に鋭い?事を言ってくる。



「後、レイさん。 エルフなのに何かエルフらしく無いですね」

「……ん!?」

「いや、会った時から自由奔放だと感じていたんですが……何というか。 意外と他人を信用しないというか……エルフの話にも疑問を持つのがエルフらしく無いな……というか」


 しどろもどろに話すアリア……彼女、本当に鋭いかも知れない。

 そういえば、メイドちゃんやハイちゃんに疑問を感じたりするのってアリアにとってはおかしな事なんだろう……同じ種族の人の言うことを信じるハイナ教国って良く考えると凄く平和で有る意味恐ろしいな……。


「成る程……じゃあ、アリアに教えようか」


 最後の戦いの前だから、アリアには話しておこうと俺は思った。

 そうすればもし「魔神」を倒した後にこの世界から俺が消えても彼女なら理由を察してくれるんじゃないかと一瞬感じて。


「実は私ね……この世界の人間じゃないの」

「は?」


 やっぱりアリアに引かれました。










 さて、アリアに引かれながらも俺は話を続ける。 「マジック・テイル」とは自分の世界に有ったゲームで、俺はそれをプレイしていたらこっちの世界に来た……というのをざっくばらんに説明する。 「俺が男だった」というのは省略したり、俺の居た世界の事は話さなかったが、異世界という事だけで彼女には驚きだったようだ。


「「マジック・テイル」は異世界の遊びでレイさんがエルフらしく無いのは……」

「あっちにはハイナ教みたいな考えが無いからかな」

「そうですか……」


 アリアは俺の言葉に神妙そうに頷く。 驚きはしたが納得してしまったようだ。


「納得しますよ」


 俺の考えていた事が分かったかのように彼女はそう呟いた。


「え、でも私ハイナ教の信者じゃないし……」

「そんな事は関係有りません」

「え?関係無いの?」


 宗教って大事じゃない?と思ったが今の話とは明らかに関係無いのでスルーする。


「はい、レイさんはハイナ教の信者では無い事は分かりました。 ですがレイさんは私の知る限り大きな嘘をついたことは有りませんから……だから信じます」

「アリア……って「大きな」?」


 俺がアリアの相変わらずな信頼具合に少し感動した所で言葉に違和感を覚える。 「大きな嘘」って……どういう事?


「いえ、レイさんが別の世界から来たって事はレオーナニュースの記者さんの話は嘘って事ですよね。 ほら、アルネの森とかなんとか……」

「あ、ああ……」

「まあ、しょうがなかったのでしょうけど」


 「嘘はいけませんよ」と腰に手を置きながら悪戯っぽく微笑むアリア……そういえば闘技大会の時にそんな事言ったっけな。


「……ごめんなさい」

「いえ、良いんですよ。 レイさんにも事情が有ったんですし……それよりも「魔神」の事に集中しましょう。 異世界云々はその後です」


 そういうとアリアが笑顔で俺を見てくる……その表情に俺は思わず心が高鳴る。


「うにゃっ!」

「れ、レイさん!?」


 俺が自分の考えた事に思わず頭を抱える。 いや、そんな筈は無い……俺の昔、色々な意味でショックだった告白以来そんな気持ちになった事は一度もない!

 俺は軽くトラウマを思い出し苦い過去を紛らわすために門からハイナ教国の外に出ようと走り出す。 何も盗んではいないけど夜の街を走りたくなったのだ……今昼だけど。


「レイさん! どうしたんですか!?」

「ちょっと、【召喚】してストレス発散して来る!」

「そんな当たり前の如くとんでもない事言わないで下さい!」


 アリアのツッコミも空しく俺は準備していたり、騒いでいた俺達を遠目からみていた魔導隊の人達を避けながら門の外に出る。


「ええい! 【召喚 ジャイアントスパイダー】!」


 勢い良く俺は外に出ると「マジック・テイル」の問題児を地上に呼び出すスキルが発動する。 すると直径100m近くの魔法陣が俺の前に現れて……。










視点変更 レイ→ネイ


「はい、ではお願いしますね」

「ええ、お任せください! 女王様」


 ハイナ2世……レイちゃんがハイちゃんと呼んでいる人は準備をしている魔導隊1人1人に声を掛けている。

 確かハイナ教国は国民からの不満がオルアナ王国に比べとても低いと昔聞いた覚えが有る……それはエルフしかいないという理由以外にも女王様のあの熱心な交流のおかげではないだろうか?


「どう思う? 黒猫さん」

『興味ない』


 私が黒猫さんに思った事を口にすると見事に一蹴されてしまう。 まあ、これから帝国に行くのに全く無関係な話だったね。


『でも、あの人はしっかりした責任感を持っている気はする。 だからここまで協力してくれたんだと思う』

「ふーん……」


 成る程、それが女王様に対する黒猫さんの評価か……。 つまり人の上に立つには理想的って事かな?


『それとはちょっと違う気がする』

「あ、あれ? 違うの?」

「……どうしたんですか? ネイさん、黒猫さん」


 私達がのんびりと女王様を見ながら会話をしていると私達の視線に気付き女王様がこちらに綺麗な歩き方でやって来る。


「他愛のない話ですよ。 ね、黒猫さん」

『うん、ハイちゃんについて話てただけ』

「ちょ! 黒猫さん!」

「?私の話ですか?」


 私が誤魔化そうとした事を黒猫さんが堂々と暴露する。 それを聞いて純粋に興味が有るという感じで私達の様子を見る女王様……うぅ、レイちゃんは平気そうだったけど貧民な育ちの私としては女王様と話すの少し苦手なんだよね……。


「うん、何というか……ハイナ教国って女王様のおかげで平和なのかな~とか?」

「はあ……そんな話を?」

『まあ、有ってる』


 黒猫さんの言葉を聞いた後、女王様は「いえいえ……」と手を横に振りながら静かに微笑んで来る。


「ハイナ教国が平和なのは私のおかげでは有りませんよ。 私の秘書や女官、メイド等の真面目な方々の補助と優しい民のおかげです」

「この謙虚な態度は支持率の高さの要因かな?……」

『かもね』

「??」


 私が黒猫さんと2人で首を傾げているハイちゃんを見ながら推理をする。 けど女王様がこんな人だったら確かに平和になるんだろうな~なんて少しエルフの事を羨ましく思ってしまう。

 ……その時、大地が上下に大きく揺れる。


「な、何!?」

『門の外から』

「女王様はここでお待ちを。 私達が見に行きます!」


 私や魔導隊の人達が驚いた声をあげる中黒猫さんが冷静な声で情報を伝え、それを聞いた魔導隊の人が門の外へ走り出す。


「女王様! 無事ですか!」

「行こう! 黒猫さん!」

『うん』


 女王様の秘書が急いで主の元へ帰って来たので女王様の事を任せ、私達は魔導隊の後に続く形で門の外へ走り出す。 ……そこには


「な、何あれ……」

『……街?』


 1つの小さな街が有った。

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