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第105話 思い付いた手段

視点変更 サラ→レオーナ


 雪原の中バルテンが先行し、バリエンスの前へ走り出す。 私もその後に続き剣を握り締め走る。

 バリエンスはそれに対して私達の方へ勢い良く足で走って来る。


「【奥義 霰突き】!」


 前のバルテンがそう叫び、腕に力を入れるのが後ろから分かった。

 そして何十もの刃がバリエンスに襲い掛かる。 ……がバリエンスはそんな事は知らないとばかりに更に走る速さを増し、右の拳をバルテンの攻撃に対して奮った。

 バルテンの剣先とバリエンスの黒い拳がぶつかる。 拳には刃が貫通しない……何て堅さなんだ。

 私はバルテンの剣がぶつかった後、バルテンに姿を隠しながら右へ走り、バリエンスの腹へ向けて剣を向ける。


「行くぞ! 【奥義 ブレイクショット】!」

「効くかよ【奥義 アーマーシールド】」


 バリエンスは俺の動きを見て、退屈そうに宣言する。 その後、奴の体に奥義を使った私の剣が当たろうとするが、体の前で動きが止まる。 さっき奴が使った奥義の影響の様だ。

 そして軽く俺を見ると新しい遊びが思いついたかのようにに話しかけてくる。


「そう言や、お前一回俺に爆発食らわせたな? もう一回いっとくか?」

「何?」

「弾けろ! 【魔法 リアクティブアーマー】」


 バリエンスが意味不明な言葉を発した瞬間、黒い巨体が一瞬白く光り私の体に衝撃がまるでガラスが砕けたような音と共に走る。


「ぐ!」


 その爆発によって私は雪原に体をぶつけながら、滑るように跳ばされ、体の骨が悲鳴を上げる。

 跳ばされる時、バルテンの声も聞こえたので彼も巻き込まれたのだろうか……何て思っていると視界を巨大な黒い影に覆われる。


「……ッ!」


 私は咄嗟に地面を転がる感じで横に動く。 私が元居た場所に男が勢い良く拳を叩き込み衝撃波で私は更に横に跳ばされる。


「団長!」


 意識が一瞬飛びかけるが、部下の声を聞き何とか雪原に着地する。

 ……この声の主は? 私はつい先ほど私が跳ばされた場所に居る魔族を警戒しながら周囲を見る。 周りには【召喚】を邪魔されないようにバリエンスを警戒する騎士達。 その中に1人、魔族を一切見ず私に全意識がいっている騎士が居た……あの新米騎士だ。

 何時もオドオドしていた彼……そして私が未来の有る部下を守ると決める理由になった有望な男。


「おい! 私の事は気にするな! それより魔族を警戒しろ!」

「は、はい!」


 私に叱咤され、魔族に目を向ける彼……だが、その意識はまだ私に向いている事が雰囲気で分かる……実力はまだまだの様だ。 彼にはこれからしっかり指導をしないといけないな。


「バリエンス、まだ私は戦えるぞ。 何動きを止めている」

「……ふ、威勢は良いな。 ま、リーダーならそれ位頑張ってくれないとな」


 「面白くねえ」と付け足すように呟き、バリエンスはこっちに向かって来る。


「……バルテン!」

「了解した!」


 私はバルテンに目で合図をしながら剣を構えバリエンスの動きを見る。 奴は私に対して直線的なダッシュで近付いてくる。 奴のパワーと堅さからしてあの速さで突っ込まれれば直ぐにまた跳ばされバリエンスの拳の餌食だろう……やはり避けるしかないな。

 バリエンスが私との距離を詰めた所で右の拳を顔めがけて放つ。


「……ッ!」


 私は奴の拳を横に跳び回避をする……だが。


「まだだぁ!」


 バリエンスはその後左足を軸に右腕を私に振るって来る。 俗に言うラリアットだ。


「ぐっ……!」


 剣の刃で何とか奴のラリアットと鍔迫り合いをする。 だが、それも一瞬。 直ぐに私は弾き飛ばされ雪原を6メートル近く後ろに滑るように跳ばされる。


「空中に飛ばされなくて良かった……という所か」


 そんな事になれば体を地面に強打し、もう立っては居なかっただろう……今も体全身が痛いが無理矢理動かせるし、まだマシだ。

 そう考えながら剣を構えなおしたとき、1人の騎士が大声を上げた。


「団長! 召喚準備完了です! 【召喚】いきます!」










視点変更 レオーナ→レイ


 ハイルズの北門にハイちゃんと共にやって来た。 そこにはハイちゃんが言ったとおり赤いフード付きの服を着た人達……つまり魔導隊が沢山それぞれの準備をしながら待機している。

 その中の1人が俺達の姿を見て準備をしている人達に何やら合図を送ろうとするがハイちゃんがそれを止める。


「まだ、集めなくて構いませんナハト……レイさん、彼が今回の魔導隊の隊長ナハトです」

「どうもナハトです……あなたが闘技大会の優勝者のレイですね」

「は、はい……冒険者のレイです」


 近付いてきた魔導隊の男……ナハトがフードを取りながら俺の前に手を出して握手を求めてくる。 彼は茶色混じりの黒い髪をしており、顔は細く体も全体的にすっきりしているがしっかり鍛えられている事は見て分かる。 握手をした所、体と顔に似合わない固い手からそれが更に分かった。


「私はこれから女王様の命により冒険者レイ、あなたの指示に全て従います」

「え、えぇ……」

「ですが、私の部下の中にはあなたの事を信頼しない者もいるかもしれません……大丈夫だと思いますが、気を付けて下さい」


 そう言うとナハトは俺から離れ、一度敬礼をすると準備をしている人達の中に入っていく。 それにしても信頼しない人も居る……か


「同じエルフなのに……」

「まあ、それもそうだよ」


 隣でアリアが少し寂しそうに呟く。 けどまあ、幾らエルフで実力は有っても急に知らない人の指示に従えと言われれば誰だって信用は出来ない。 命を預けるんだから尚更だ。

 そう思えば魔導隊の人達の気持ちも分かる。


「なら、しっかり実力で示さないとね!」

「だからってレイちゃん。 適当な所に【魔法】を打ったりしないでね~」


 俺が意気込んでいるとネイがにやにや笑いながら茶化してくる……むう、俺の事を力だけが取り柄だと思っているな。 まあ、他の人に指示するのは苦手だけど……。


「そんな事はしないよ! まあ、ちょっと【召喚】はするかも知れないけど」

『大して変わらない』

「そういえばレイさん。 移動とかどうするんですか? 流石に200人を運ぶモンスターの【召喚】は厳しいですよね」

「アリア、【召喚】するの前提なんだ……」


 まあ、早く行きたいし【召喚】して移動手段は確保したいな。 けど200人を一気に運ぶモンスターなんて……


「あ、居た」

『何が居るの?』


 俺の言葉に黒猫さんが不思議そうな声を出しているが俺の意識は「マジック・テイル」の頃を思い出していた。

 200人を運べる超大型モンスター。 「マジック・テイル」では街を幾つも破壊し、「マジック・テイル」三大事件の1つに数えられるいろんな意味で伝説のモンスター……あいつなら魔導隊の人達も楽々運べるな。 それに「マジック・テイル」じゃ出す度に敵味方から苦情が来たしそんな奴を【召喚】出来るなら最高だな!

 思い付いたら即実行。 俺は近くを歩いていた魔導隊の人に話し掛ける。


「ねえ、ナハトさんがどこに居るか分かる?」

「え、隊長ですか? 隊長ならあちらに……」

「そう、ありがとう!」


 魔導隊が指差した方向に勢い良く俺は走って行く。


「レイちゃん、何か思い付いたのかな?」

『良からぬ予感がする』

「レイさんっていつもこんな感じなんですか? 楽しそうですね」

「えぇ……まあ」


 俺が去った後、ネイ達は思い思いの感想を言い立ち尽くしていた。

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