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第101話 接触

「全騎士隊! 後、冒険者部隊。 前面に展開! 第1から第5魔法騎士隊は後ろで攻撃準備! それ以外は騎士隊に補助魔法の準備! 支援隊は回復薬だ!急げ!」


 バリエンスという黒い男が一言呟いた瞬間、私の部下に命令を送る。 バリエンスへの驚きで体が動かなくなっていた彼等は私の言葉を聞き、直ぐに動き出す。

 バリエンスはこの様子を楽しそうに見ていた。 まるで自分に戦いを挑んで貰えるのが楽しいかのようだ。


「お、準備完了か? ……ホラ、来いよ。 先手は打たせてやる」

「……騎士隊、行け! 深追いはするな!」


 バリエンスの余裕を表情につい感情的に成りそうになるのを抑え、部下に命令を送る。 騎士達はそれぞれ規則正しい動きで剣を抜き、構える。

 その動きに対して魔法騎士隊の者が声を上げる。


「魔法、いきます! 【魔法 ディフェンサー】」


 するとここに居た騎士、冒険者全員の体が緑色のオーラの様な物に包まれる。


「皆行くぞ!」


 部隊長の騎士が騎士隊に声を掛け、走り出す。 それに他の騎士、冒険者達も続く。


「……ほう、躊躇いもせずに来るか」


 バリエンスはその様子を身動き1つせず見ていた。 構える必要など全く無いかのように。


「それは勇気か……それとも無謀か」


 騎士達と人3人分位の距離になってもちっとも動かず、男は独り言を呟いている。

 それを見た騎士隊長は気に障ったのか声を上げる。


「オルアナ王国騎士団を……舐めるな!」


 男との距離はゼロ、騎士達が一斉に剣を胸に向け、騎士隊長は剣を横に首を狙って振るった。










視点変更 レオーナ→レイ


「お待ちしておりました。 レイ様、アリア様、黒猫様、ネイ様……どうぞ女王様がお待ちです」


 ハイちゃんのお城の前で出迎えてくれたのはいつぞやの生真面目メイドだった。 相変わらずのポーカーフェイスでお城の前にずっと立っていた。

 俺達はその言葉に従い、城を案内しようとするメイドについて行こうとするが、ネイだけが何故か躊躇っていた。


「ね、ねえメイドちゃん? それって私も入って良いの?」

「はい、女王様はネイ様にも会いたがって居ます。 例えあなたに行く気が無くとも、私が無理矢理女王様の元へ連れて行きます」

「わ、分かった。 私も行くよ。 行くからその本気の目は止めて」


 メイドの気迫に怯むネイ。 冒険者に対してあそこまで堂々と出来るとは……やはり彼女はプロの様である。


「ではこちらに」


 ネイの返事を聞いた彼女は元の生真面目な感じに戻り、何事も無いかのように案内を始めたので、私達は少し動きが強ばりながら着いていく。


「にしてもハイちゃんに会ったら何の話をしよう? 魔族や「魔神」の事は言っちゃったし……」

「え? レイちゃん報告するだけなの?」


 俺の独り言にネイが不思議そうに反応する。


「え、うん。 おかしい?」

「だって、自分で強力な敵だって理解してるのに私達だけで行くっておかしくない? まあ、私はレイちゃんを信頼してるからそれでも良いけど」


 む、確かにネイちゃんの言い分は尤もだ。 危険なのにたった3人と1匹で行くのはおかしい。


「でも私達がハイちゃんに魔導隊を出してくれるように提案しても。 私達は急いで「魔神」を止めなくちゃいけないし……ハイちゃんにそんな無理強いは出来ないよ」

「レイ様ちょっとよろしいでしょうか?」


 俺が思った事を口にしているとメイドちゃんが歩きながら口を挟んでくる。 事務的な事しかしない印象だったので少し意外だ。


「え、何?」

「秘書から聞いた話によると女王様が昨日伝聞機から来た報告を見て急いで何かしていたそうです。 何でも魔導隊の総隊長を呼びつけていたとか」

「へ?」

「つまり魔導隊の総隊長に何か命令をしていたという事です」

「……はあ」


 メイドちゃんの意味深な言葉に不思議そうに首を傾げるアリア。 俺もアリアと同じ気持ちだ。 そんな話を何故俺達にするのだろうか?

 何て思っていると見透かしたかのようにメイドちゃんが話を続ける。


「女王様は危険な事をしにいく友人を黙って見送るようなお方では有りません。 何かしらの措置をレイ様にするでしょう」

「え、そう?」

「はい、女王様はそういう方です」


 メイドちゃんの言葉が余りにも急で少し驚いたが、生真面目な彼女がここまでハッキリ言うのだ。 ハイちゃんが何か準備をしているかもしれない。 一国の主から何か支援を受けられる。 ……それは相当すごいのではないか?


「じゃあ、ハイちゃんも信用してくれたんだ。 あの話」

「はい、当たり前です」


 俺の呟くような言葉にメイドが少し不機嫌そうな目をしながら返す。 俺がハイちゃんを侮辱したように感じたのだろう。


「女王様が私達の言うことを信じない訳が有りません」

「あ、そうだね。 ゴメンゴメン」

「……」


 俺が不貞腐れたメイドちゃんに謝っていると何か考えるような表情でアリアは俺を見ていた。

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