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第100話 心配だから冷たくしちゃう

虎道場的なイメージでやってます

視点変更 レイ→サラ


 レイちゃんが冒険者ギルドから出て行った後、アルカが私の方に向き合う。 彼女の目はどこか怒っているように見えるが、恐らく見間違いでは無いだろう。


「どうしたのアルカ、仕事が有るわよ」

「サラ、どうして直ぐにレイちゃんを信用しなかったの」


 私の言葉を無視してアルカは私に話し掛けて来る。 レイちゃんとの会話の途中アルカが不機嫌なのは気付いていたが気のせいじゃなかったみたいだ。


「そりゃレイちゃんは嘘をつかないわよ。 私達と同じエルフなんだし。 でも話が大きすぎて……」

「それは分かるよ。 サラ、私と違ってとっても頭良いし、真面目だし。 あの話を私以上にしっかり理解して、驚いてたと思う」

「そう?」

「でも、だからサラには私以上にレイちゃんが大真面目で本当の事言ってたって分かったよね」


 私はアルカのその言葉に体の動きが一瞬止まる。 その時、まるで私の全てを見透かされたような気がした。


「サラにはレイちゃんがどんな人か分かってたよね? もしかしたらアリアちゃんやあのネイって言う獣人族の人以上に気付いてたよね? 冗談は言っても嘘は言わない人だって」


 アルカの言葉が私の中に入って来る。 モンスターの牙のように遠慮無く。

 昔から感じていたが、アルカは相当勘が冴えている……というか周りの雰囲気に臆病な位敏感な人だ。 普段はおっちょこちょいなクセで無害な小動物みたいだが、こんな時だけはとても恐ろしく感じる。


「そうだよね? なのに何でサラは真面目なレイちゃんに「納得してない」とか言ったの? 本当は分かってたのに……理解も納得も最初に聞いたときから全てしてたのに」

「……何となくよ」

「え?」


 私の言葉にアルカがおかしな声をあげる。 どうやら彼女の予想の答えでは無かったみたいだ。


「確かに分かってたよ。 レイちゃんが本気だって」

「なら!」

「でも逆に分かったからかしらね。 直ぐに応援なんて出来なかった」


 私の言葉にアルカが静かになる。 ついさっきまで表情と違い、素直に私の言ってる事が分からないようだ。


「正直私にはレイちゃんがあの話を何で私達にしたのか不思議だったの……まあ、レイちゃん隠し事とか出来ないみたいだけど……それ以上にもしかしたら、周りに気を使ってるんじゃないかなって私は思ったの」

「気を……?」

「うん、例えが悪くなるけど……アルカに私が「明日死ぬかも知れない」って言っておけば。 アルカは私に何かするでしょ? 別れの挨拶とか」

「本当に例えが悪いよサラ……でも言われたら何かするかもね」

「アルカなら泣きながら抱き付くので十分よ」

「あ、あれはつい勢いで……」


 私の言葉にうろたえ始めるアルカ。 ついさっきまでのオーラも無くなりすっかりいつも通りだ。


「逆に何も言わなかったら私が死んだ後にアルカが勝手に後悔するかも知れないじゃない。 「どうして気付いてあげられなかったんだろう」みたいな感じでね」

「あぁ、有るかも……でレイちゃんとその話、何の関係があるの?」

「さっきの例え話のようにね。 レイちゃんは「もし自分が死んだ時」の為に私達に気を使って居るんじゃないかなって私は思ったの……そう思ったら素直に頷けなかった」


 彼女にとっては無意識でも私が直ぐに頷いたらレイちゃんが死ぬのを私が受け入れた……そんな気がしてしまった。

 私がそう独り言の様に呟くと、アルカが別の事に怒り出す。


「じゃ、じゃあ気付いてるなら何でレイちゃんに最後までそっけなかったの。 応援位は出来たでしょ」

「応援したらレイちゃんに更に気を使わせちゃう気がしたの……まあ、ポーション渡すよりは応援された方がレイちゃんには嬉しいかもね」


 あのポーションは値段は高いが私には実際使い道が無い。 そして回復魔法が使えるレイちゃんには無用の長物という奴だろう。 けど私としては応援みたいに一方的な物よりはレイちゃんにも少し位役に立つ物を与えたかった。


「ま、私の自己満足ね」

「……大丈夫だよサラ!」


 私が自嘲気味に言うとアルカが私の手を無理矢理掴みながら、顔を私の鼻に当たると思うくらい近付けてくる。


「サラがそうやって、レイちゃんの事を思っての事なら、レイちゃんにもきっと届いてるよ!」


 余りにも根拠の無い言葉。 だがアルカの表情を見ると、そうかもしれないと思えてくる。


「……ありがと、アルカ?」

「?サラ何か言った?」

「何でもないわ。 それよりも、仕事に戻りなさい。 依頼の整理が残ってるわよ」

「う、面倒くさい……」


 私の言葉にぐったりしながら、カウンターに座るアルカ。 それを見て少し微笑んだ後、私は仕事に戻った。

 私がレイちゃんに出来ることはもう無い。 後は彼女次第だろう。


「レイちゃん、帰って来てね」


 私は小さな声でそう願った。










視点変更 サラ→レオーナ


 ヴェルズ帝国首都。 その周囲は巨大な砦で囲まれており、中に皇帝が住む城と鋼の街があるという。 今雪がゆっくり降るその砦の前に1つの影が立っている。

 今、私達オルアナ王国騎士団はオルアナ王国ではめったに見ない雪に襲われてはいるが順調に歩いて来た。 そして首都の砦が見えて来た所でその存在に気付いた。

 それは部下が【補助 ホークアイ】で見た所身長が高く、体つきも相当良い。 それだけで中々の武人だと分かる。 だが、それ以上にそれには特徴的な物が有った。 体全身が黒いのと、背中から生える巨大な翼、そして頭に見える2本の角。


「あ、あれって魔族って奴なんじゃ……」

「団長、どうしますか?」


 怯える部下とあくまで冷静な書記官。 この2人を見ながら私はしばらく悩んでいた。

 もしあの魔族みたいな物が帝国の味方なら、こちらは危険だ。 騎士団には慣れない雪という天候の中、砦を1人で守る者と戦わなくてはいけないのだ。 砦の前で仁王立ちをしているという事はもしかしたら私達が束になっても勝てるという自信からかもしれないし、そしてもしそれが弱くても帝国の兵を中から呼ぶ可能性も有る。


「だがしばらく待機も私達の士気を減らすだけ……」


 私がそれを注意しながら見ていると、それが私達を見た気がした。 今のヴェルズ帝国には隠れる所が全く無いので私達は雪の上に寝る事で隠れている。 私達はまだ豆粒程の小さなそいつの姿を視認は出来るが、それは影が立っているという条件付きだ。 雪で見えづらい中私達を見るのは困難だろうと考えていたら、部下が声を上げる。


「あ、あの魔族らしき者が翼を大きく広げました! 飛ぶつもりです!」

「総員、体を伏せろ! 決して動かすな!」


 部下の言葉を聞いた後、大声で命令を出す。 その時、小さな影が一気に雪とは真逆の方向に勢い良く飛ぶ。


「……」


 しばらく私達の間に無音と緊張が起きる。 そしてどれくらい経ったか分からなくなった瞬間空から轟音が響く。 ……まさか!


「!総員、起き上がり今いる場所から離れろ!」


 俺のそう叫び声を聞き騎士達が動き出す……が動き出した瞬間、空から恐ろしい速さで黒い塊が私達の前に落ちて来て、衝撃により雪と砂が飛び散り、視界が塞がる。


「……! 総員、戦闘準備!」

「お? 中々威勢が良いな」


 私が叫んだ時、前から影法師のような黒いそれがまるで暇つぶしの道具を見つけたような声を上げながら現れる。


「見張りなんてつまんねーと思っていたが、まさかこんなに現れるとはな……あれ?こういうのは爺さんに言わなくちゃいけないんだっけか?」


 全身が黒く、巨大な翼を持つ大男……間違いない、ついさっき帝国の砦に居た奴だ。

 私は怯えと戸惑いで動けなくなっている騎士達から一歩前に出て、黒いそれと向かい合う。


「私はオルアナ王国騎士団長レオーナだ。 そなたの名を伺いたい」

「あ?名前?」


 そう呟くとしばらく悩む動作をし


「バリエンスだ」


 と名乗った。


「バリエンスだな? そなたはヴェルズ帝国の者か?」

「ヴェルズ帝国? ……ああ、ここの名前か残念ながら違うな……というかここに住んでた奴らはみんな殺っちまったぞ」


 殺した……私はその言葉を聞き驚き、納得した。

 私が動かないで居ると、男はまるで明日の天気の話でもするかのように言った。


「まあ、どうでも良いな……お前ら、俺の暇つぶしにはなれよ?」

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