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第99話 ハイルズ再到着

視点変更 彰→レイ


「たのも~」


 俺が思いっきり木の扉を開ける。 中にはカウンターが幾つも有り、そこに女性が座っている。 その中の1人が俺の方を向き、明るい声を出した。


「あ、レイちゃんだ~」


 俺はその後、順調にハイルズにに到着した。 そしてまずは冒険者ギルドに顔を出しておこう……という話になり、今に至る。


「久しぶり~……あ、アリアちゃんと黒猫さんも~」

「久しぶりです」

『どうも』


 相変わらずの口調で挨拶してくる彼女に返事をする2人。 その後、彼女はネイの姿を確認する。


「あ、大会に出てた獣人族さん」

「私の認識はそんな感じなんだ……まあ、良いけど」

「アルカ、失礼な事言わないの」


 アルカの言葉にネイが苦笑しているとカウンターの方からまた懐かしい声が聞こえる。 この生真面目な雰囲気は間違いなく彼女だろう。


「久しぶり、レイちゃんにアリアちゃんに黒猫さん」

「サラさん!」


 カウンターからサラさんが顔を出し、俺達に微笑んでくる。 彼女達は相変わらず元気で仲良しな様だ。

 俺が安心に近い感情を感じているとアルカさんが「そういえば」と言葉を発する。


「平原で色々有ったみたいね」

「へ?何で知って……あ、ガレーナニュースか」


 俺が驚いた所でサラさんがカウンターの上から紙を持ち上げ見せてくる。 それは記者さんがボイルの港町で見せてくれた新聞であった。

 この新聞ハイルズにも来てるのか。 ガレーナニュースはどうやら全国紙のようだ。 余り移動手段が発達してないのにどうやって配ってるのだろうか?

 なんてガレーナニュースの規模に少し驚きながら疑問に思っているとアルカさんが心配そうに聞いてくる。


「レイちゃん大丈夫だった?」

「ん?大丈夫、大丈夫。 私はピンピンしてるよ」

「そう、良かった~」


 俺の言葉にアルカさんが安堵の表情を浮かべながら胸をなで下ろす。


「アルカ、何か嫌な予感がするって言ってたもんね」

「うん、レイちゃん達が無事で安心したよ」


 サラさんの落ち着いた声に「えへへ」と笑うアルカさん。 どうやら彼女達は心配してくれていたようだ。

 けどアルカさんの嫌な予感は命中しているな……彼女は予言者か何かなのだろうか。


「意外と侮れないな……」

「「?」」


 俺のアルカさんに対する驚きの声に2人のエルフは可愛らしく首を傾げていた。









「……で、これからレイちゃんはどうするの?」

「う~ん、多分ハイちゃんに会いに行って……ヴェルズ帝国に行くかな」


 その後、しばらくアルカさん達と大した内容の無い話(ライヴァン同盟の食べ物等)をしていた時にサラさんから聞かれたことを適当に返答する……がその言葉を聞いたアルカさんとサラさんが2人して目を丸くする。


「え、女王様に? というかヴェルズ帝国に行くの!?」

「ん? 何か変な事言った?」

「言ったよ! 今ヴェルズ帝国は危ないんだよ!」


 俺の言葉に慌てるサラさんとアルカさん。

 俺がそんなにおかしな事言ったかなぁ……と不思議に思い黒猫さんの方を向くが彼女は俺の事を完全に無視していた。 明らかに厄介事に巻き込まれない様にしている。


「レイさん、ヴェルズ帝国は今オルアナ王国と戦争中ですから。 驚かれるのも不思議じゃないですよ」

「あ、成る程……」


 疑問で首を傾げていた俺にアリアが分かりやすい解説をしてくれる。

 今の所戦争とは関係が薄い場所にしかいなかったかし、「魔神」の事ばかり考えているせいか時々戦争中だというのを忘れてしまう。 とは言っても本当に戦いが有るのか疑問だが。


「けどヴェルズ帝国に行く理由が有るからね」

「理由?」

「うん」


 サラさんが俺の目を真剣に見ながら言葉を発する。 ……これは真面目に答えないと怒られそうだ。


「その……ヴェルズ帝国に倒さなくちゃいけない敵が居るの」

「敵?」

「うん」


 アルカさんの疑問の言葉に俺は返答し、魔族と「魔神」の事を説明する。 説明を聞き終えた彼女達は2人して不思議そうな顔をしている。 そして遠慮がちにサラさんが聞いてきた。


「……えっとレイちゃんそれ本当?」

「ほんと、ほんと!」

「何か現実感無いわね……」


 サラさんの顔が何やら悩んでいるような顔になる。 まあ、「魔神」や魔族なんて話。 真面目で一般人代表の様なサラさんからすれば相当衝撃的な話なのだろう。

 俺の世界で例えるならばいきなりゼウスが現れて「人間に雷落とすお」って言われるくらいのドッキリなのだろう。


「レイちゃんが何考えてるのか分からないけど……多分違うと思うよ」

「え、そんなに顔に出てた」

「うん」


 俺の例えは分かりづらいとネイに言われてしまう。 ネイって察しがかなり良いのかもしれない。


「レイちゃん!」

「わっ! アルカさんどうしたの!?」

「私、レイちゃんの事を応援するからね!」


 俺がネイの方に意識を向けていると、大きな声を上げながらアルカさんが急に抱きついてくる。 彼女の身長は俺よりも少し大きくまるで丸み込むようだ。 こんな体験、幾ら女似の俺でも経験無いなぁ……なんて軽く他人事のように考える。

 彼女はサラさんとは違い、俺の言葉を全て鵜呑みにしたようだ。 理解してくれたのは助かるけど、ここまで大きい反応をされるとそれはそれで困る。 それに……


「あ、あの……アルカさん? く、苦しい! 苦しい! へるぷみい!」


 アルカさんの大きい胸が俺の顔にまるで車の事故の時にハンドルから出るアレのように突っ込んで来る。

 柔らかいので首の骨の心配等はしないが、アルカさんに抱き締められてかなり苦しい。 出ようと抵抗はするが、「下手に力を入れたら心配してくれている彼女を傷つけるかも知れない」という不安と「まあ、埋もれてても良いかな……」という男の欲求で上手く脱出出来ない。

 何とか抜け出そうと10秒位パタパタ動くが息が限界になって来た所であきれた感じの救いの声が聞こえる。


「もう……アルカ、レイちゃんが「魔神」とかの前に瀕死になりそうだから、離しなさい」

「え? あぁ! レイちゃんごめん!」


 サラさんに言われて気づいたのか腕の力を弱めたアルカさんから何とか俺は脱出する。

 うわぁ……苦し、窒息死では絶対に死にたくないな。


「れ、レイさん大丈夫ですか?」

『生きてる?』


 アリアと黒猫さんから心配の声を出す。 それに対して笑顔で無事な事を伝える。


「レイちゃん、ごめんなさい。 アルカがまた馬鹿しちゃって」

「あ、大丈夫、大丈夫……ちょっと気持ち良かったし」

「え?」

「あ、いや何でもないです」










「で、レイちゃんあれ本当なの?」


 私が息を整えた後サラさんが真面目な顔で聞いてくる。 俺はそれに対して首を縦に振り返答する。


「うーん、正直私にはまだ納得は出来ないけど……」

「レイちゃんがそんな嘘つくわけないじゃん」


 サラさんが悩んでいた所にアルカさんが大きな声で言う。 こんな突拍子の無い話を直ぐ信じる所に不安を感じないわけでは無いが、アルカさんの態度のおかげがサラさんが「それもそうね」と納得していた。


「良く思ったらレイちゃんも十分有り得ない強さだしね」

「え、そんな理由で納得したの」

「冗談、冗談」


 そう言いながら楽しそうに笑うサラさんだが、彼女とは逆に少し不機嫌な感じの珍しいアルカさんの姿が目に入った。 サラさんはそれを気にしてないような感じで話を続ける。


「じゃあ、何か渡しとこうかな……。あ、レイちゃん回復薬とか足りてる?」

「ん? 回復魔法使えるし、持ってないけど……」


 急な話題変化に疑問を感じるが、サラさんに返答する。 すると彼女は「……まあ、良いか」と突っ込みたそうな顔をしながら呟きカウンターの奥に行ってしまった。

 その急な行動にアルカさん含め呆然としているとサラさんが緑色の液体が入ったビンを持って戻って来た。 そしてそのビンをそのまま俺の前に突きだしてくる。


「……何これ?」

「ポーションよ。 今の所ハイナ教国で作れる最高級の物。 餞別にあげるわ」

「え、サラさんそんな物持ってたんですか!」


 サラさんの解説にアリアが大きな声を上げる。 アリアの驚きようを見る限り相当良い物みたいだ。


「サラ、そんな物何時手に入れたの?」

「お母さんがくれたの。 もしもの時に使いなさいってね……とは言っても私はずっとハイルズに居るから使う機会無いし、レイちゃんの方が使うかもしれないでしょ」


 そう言うと無理矢理ポーションを私の手の中に入れる。 俺には回復魔法が有るから使う機会は無いだろうが、もしもの為に貰う事にした。


「レイちゃん達はこれから直ぐ女王様の城に向かうでしょ」

「うん」

「じゃあ、私達とはここでお別れね……私達はここに居るから。 何か有ったらまた来てね」

「うん、サラさん。 ありがとう」


 「うん、さようなら」とサラさんは今まで通りの態度で私達に別れを告げる。 その様子を見たアルカさんはサラさんに何か言いたい事が有りそうな目を一瞬向けた後私達に向き直す。


「レイちゃん、アリアちゃん、黒猫さんに獣人族の人も……みんな、絶対帰って来てね!」

「うん!」

「はい!」

『分かってる』

「私だけまだ、その呼び名なんだ……まあ、良いけど」


 アルカさんの言葉に三者三様の返事をして、俺達は冒険者ギルドの扉を開け出て行く。

 アルカさんは名残惜しむように扉が閉まるまで手を振っていた。 まるで泣きそうに見えたのは俺の気のせいだろう。

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