表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/142

第97話 レイの悩み

「……ふむ、あそこで何があったのか大体の事は分かった」


 魔導隊の男が紙にペンを走らせながらそう言った。 今俺達はハイナ教国の砦の中の一室。 砦の茨の蔓はライヴァン同盟の砦みたいな頑丈な岩の周りに生えているらしく、中は部屋などが有る普通の砦だった……普通の砦を知らないけど。

 俺達は魔導隊と遭遇した後、彼等にここまで連れてこられ何があったのか聞かれた。 俺達は特に説明しない理由が無いので有った事を大体話した。


「しかし、マンスターを君達でか……」

「?どうしたの?」

「いや、マンスターには我々も時々遭遇するんだが結構手こずるのでな……」


 事情を聞き終えた魔導隊の男は信じられ無いという顔をしている。 彼等はマンスターに相当苦戦した覚えがあるらしく、俺達が倒した事に複雑な気持ちになっているようだ。


「いや、私達にはシャイニングユニコーンもヒッポグリフも居たし……」

「レイさん、そんなモンスターを【召喚】した時点で凄いですよ」


 彼を慰めようとするが、アリアが冷静な指摘をする。 そう言えばそうだ。 俺は普通に使っているが、【召喚】は結構大変なんだった。


「えーっとじゃあ、マンスターが手を抜いてた?」

「レイちゃん、あいつらバリバリ襲って来てたよ?」

「実はシャイニングユニコーンが全部やってくれた!」

『それでも【召喚】したのご主人様じゃん』

「実は倒したのはアリア!」

「意味不明です」


 慰めようとする言葉は全てアリア達に否定されていく。 ああ、彼女達の純粋なツッコミが心に痛い!

 俺達がそんなどうでも良いやりとりをしていた所、魔導隊の男が口を押さえながら肩を震わせているのが俺の視界に入った。


「あ、失礼、君達のやりとりが面白くてついな。 ……そうだ、今砦には空き部屋があった筈だ。 君達はここに泊まって行かないか?」


 と男は提案して来た。 俺達は元々野宿の予定だったし屋根が有る所に寝れるなら、泊まった方が良いと俺は判断しアリア達に聞いてみる。


「私もレイさんに賛成です」

「私も~」

『どうでも良い』


 ……若干一名賛成も反対もしていないが、俺は過半数が決めた事に従う。


「じゃあ、ここに泊まるよ」

「そうか、じゃあ案内しよう」


 そう言うと男は立ち上がり、俺達の前を歩いていく。 俺達はそれについて行くのだった。










 その後、砦の中では特に目立った事は起こらずアリア達は小さな部屋で寝ている。 部屋には小さな窓とベッドが幾つか有るだけの何にもない部屋だが、野宿よりはマシである。

 魔導隊の人達は俺とアリアがエルフという事もあってかネイとも友好的に接してくれ、色々な話が出来た。 ハイナ教国で出来た最新の道具の話や砦の近くに現れたモンスターの話等々……大した話はしてない。 ハイナ教国には魔族は来なかった様でとても平穏だったらしい。

 俺の方もライヴァン同盟の魔族の事を話したり、これからハイちゃんに会いに行きたい云々の話をした。 すると魔導隊の1人が


「女王様に会いに行くんですか? なら、私達がその事を御一報しておきましょうか?」


 という提案をして来た。 何でもこの砦には伝聞機という道具が有り、それを使えば女王様の元へ手紙を素早く確実に送れるらしい。 俺がそんなことをしていいのか?と聞くと


「魔族の話が確かなら結構大変な出来事ですから……後伝聞機って実地試験中なのに余り使われないんですよね……適当な文章を送るわけにもいかないのでこういうのを送ってくれた方が助かります」


 という余り笑えない言葉を言われてしまったので送る事にした。

 文章の内容はボイルの港町のラズとクルルシュムの事と彼等が話した「魔神」の事、それとハイちゃんと会って話がしたいというのをアリアと四苦八苦して無礼にならないような文章にした。 幾らハイちゃんと親しくてもその文章は魔導隊やメイドさんが検分とかするかも知れないし、その過程で捨てられてはしょうがないからな。 そんなめったにしない作業をしたせいか文章を完成させ、魔導隊に渡した時にはアリア達はヘトヘトになり直ぐ部屋で寝てしまった。


「まあ、戦闘も有ったしね……」


 ネイはまだしもアリアは戦う力が無いのだ。 幾ら俺と行動を共にしてるからってモンスターを目の前にして緊張をしない訳が無い。 マンスターとの戦いは彼女の精神も疲れたのだろう。


「そう思うとアリアにはいつも心配を掛けてるのかも」


 闘技大会の時も「平原の主」の時もラズとの戦いの時も戦いが終わったらアリアはいつも不安そうに俺の事を心配していた気がする。 そう思うと寝ているアリアに今、感謝の言葉を言いたくなった。


「ありがとう……アリア、そろそろ安心させないとね」


 勿論寝ているアリアから返答は無い。 その後、しばらくアリアの寝顔を眺めていると「魔神」との戦いが終わったら俺はどうなるのだろうか?と疑問に思った。 俺が元居た世界に帰るのか。 それともアリア達の居るこっちの世界で「レイ」として生きるのか。

 こっちの世界にはアリアやネイ、黒猫さんにサラやアルカ、ハイちゃんの様な大切な友達が居る……けどそれはあっちの世界も同じで、1人だった時に友達になってくれた彰が居る。

 そういえばあっちの世界はどうなっているのだろうか? 俺が居なくなった後の家族は? 妹は大丈夫だろうか……。


「……どうなんだろう」


 俺はベッドに寝転ぶと目を閉じながら考える。 「魔神」を倒した後どっちに行くのかは分からない。


「まあ、そう言う事考えてもしょうがないか」


 まずは「魔神」を倒さないと……俺は悩みを忘れるために首を左右に振り、そう呟く。

 今日の夜は中々寝付けなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ