結婚式:誓いの言葉-3
◎
ああ、よかった。
とりあえず、ハルコは胸をなでおろした。
神父が、何とか場を静めて進行してくれたのである。
まあ職業柄、非常に気は長いだろうから、いきなり式そのものが取りやめになる、などということは心配していなかったが。
そういえば。
自分たちも、あの場所で誓いの言葉を交わしたのだ。
少し離れたソウマの方を見やると、ようやく新婦の父親役から、ベストマンの位置と表情に戻った彼が、軽く視線を合わせてくれた。
やれやれ、と言いたげな表情だ。
クスッ。
その表情に、笑みが浮かび上がってくる。
カイトほど激しくはなくても、ソウマだって嫉妬くらいするだろうに。
お互いがお互い以外の人にも、つい優しくしてしまう性格のせいで、表面上は心配や嫉妬をしていないような素振りでも―― 実は、胸を騒がせていたということが過去に何度もあった。
ソウマは、チョコレートをたくさんもらうタイプだった。
それでも、ハルコが用意したものにだけは、特別の反応を返してくれた。
誰にでも優しい表情がちょっと崩れて、困ったりあせったり、でも平静を保とうとしたり。
だからこそ、自分に言い聞かせていたのだ。
嫉妬する必要はないんだわ、と。
でも、学校の裏庭で告白されているのを目撃してしまうと、その場を遠く離れながらも、気分が沈んだりしたのだ。
優等生で、人にも優しい私。
その内側では、ずっとソウマに胸を騒がせていた。
初めて、屋根の上にいる彼を見た時から。
まさかあの時は、結婚してしまうなんて、思ってもみなかったけれども。
そうして、ソウマと一緒に動き出した歯車の中に、カイトやメイが混じった。
複雑な事情があったのだが、2人とも余りに恋愛にデキの悪い生徒だった。
一時は、もう完全にダメなのではないか、とまで思って胸を痛めたこともある。
その2人も、いまこんな風に誓いの言葉を交わすことになるなんて、思いもよらなかったに違いない。
結婚なんて、本当にそんなものなのかもしれない。
それを決めた瞬間に濁流に呑まれ、押し流され、気づいたら全然違うところに立っているのだ。
「誓います」という、カイトの声。
「誓います…」―― これは、メイ。
2人とも、これまでのことを思い出したのか、胸に詰まったような音だった。
私も。
誓いの言葉の時は、本当は泣きそうだったのよ。
覚えてる?
ソウマの方に、視線でそう言ったが、彼はさすがに分からなかったようだった。




