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結婚式:新郎・新婦入場-5

 嗚呼。


 シュウは、決して新郎から目を離してはいなかった。


 ソウマに頼まれていたのだ。


 そこから逃げ出さないように、見張っていてくれ、と。


 見るからに、カイトはイライラし続けていたが、暴走するタイミングを掴めずにいるようだった。


 油断はしなかったが、シュウの目にはそう見えていたので、逃亡の確率は極めて低いと踏んでいたのだ。


 第一、逃亡されると困るのだ。


 この結婚式、並びに披露宴には、仕事関係者も多い。


 社員や取引先の目の前で、鋼南電気の代表取締役社長として、堂々たる態度で臨んでもらわなければ困るのだ。


 後々の、会社全体の評判にかかわるのだから。


 なのに。


 カイトは、やったのだ。


 ようやく、ソウマと新婦に当たる女性が扉の向こうから現れて、彼の体内時計では57秒後。


 シュウが知っている以上のダッシュで、中央通路を逆走したのである。


 式の流れを頭の中に入れているが、予定ではカイトは一歩も動かなくてよかったはずだ。


 そこまで、ソウマが新婦を運んできて、そこから2人で歩いていくはずだったのである。


 すみません、ソウマ。


 シュウは眼鏡の位置を直しながら、知人に詫びた。


 彼の知る程度のダッシュであったなら、止めることが出来たはずだ。


 だから、この役目を引き受けたというのに。


 またもイレギュラーだ。


 いや、最近は余りにイレギュラーなことばかりで、そっちの方が日常化しつつある。


 シュウのよく知っているカイトが、次第に過去の産物になろうとしているのだ。


 人は、何かのきっかけで大きく変わるもんだ。


 大学時代に、ソウマがそんなことを言っていた。


 その時、カイトはハンと鼻であざ笑い、どこかへ行ってしまった。


 彼は、自分が絶対に変わることなどないと思っていたのだろう。


 それについては、シュウも同意見だった。


 その男が、いま―― ソウマから、新婦を奪い取っている。


 そのまま。


 再びシュウの側を、風のように通り抜けていってしまった。


 一歩、後ろに下がらなければ、きっと彼はカイトに跳ね飛ばされていたことだろう。


 ふむ。


 シュウは、記憶の中にソウマの言葉を反芻した。


 あながち。



 その言葉も、外れてはいないようだ。

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