結婚式:新郎・新婦入場-1
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ようやく。
本当にようやく、聖堂の扉が開いた。
それまで、カイトはずっと一人で、こんなところでさらしものになっていたのだ。
こんなところ―― ヴァージンロードを少し入ったところで、両側から知り合い連中の視線が突き刺さり、自分のこの姿をあざ笑っているような気がして、屈辱の限りを味わっていた。
その上、彼女と引き離されているという事実に、こめかみにはくっきりと四つ角が浮き上がっていたのだ。
そばには監視のためなのか、シュウが配置してあった。
ソウマの差し金に違いない。
いざとなったら、このロボットを蹴り倒して逃走することは可能だろうが、彼の忍耐はどうにか持ちこたえたようだった。
扉に視線を向けると、寒風と共に、まずはハルコや子供が入ってきた。
違う。
カイトの目標ではなかった。
イライラ度が、また一歩アップする。
その後で、ようやく白いドレスが、ぱっと目に飛び込んできた。
メイだ。
そう認知するやいなや、心臓が信じられない速度で走り出す。
さっきまでの見せ物状態へのイライラも、この一瞬は吹っ飛んだ。
視線を、一気に上まで跳ね上げる。
途中経過のきれいなドレスを眺めるよりも、いまの彼女の顔が見たかったのだ。
綺麗なのは決まっている。
頭の中にある、彼の仮ヴィジョンを、きっと遙かに越えているに違いない。
たとえ、それで自爆してしまったとしても、視線を上げずにはいられなかった。
が。
カイトは眉間にぐっとタテジワを寄せた。
視界に入ったのは、にこやかなソウマの表情だけだったのだ。
アイソ、ふりまいてんじゃねぇ!
鋭いツッコミが、こういう時でも頭の中を光速で突き抜ける。
メイの方は、というと。
白い薄布に隠されていて、この距離からでは、はっきりと見ることが出来なかった。
扉のところから、カイトのところまでは少しある。
彼女が、手元に運ばれてくるまで、おとなしく待ち続けなければならないのだ。
イラッ。
カイトは、最後の忍耐を強いられていた。
視線は、自分以外の男と腕を組むメイに注がれている。
相手が、対象外のソウマだということは、重々分かっているし、自分に何度もそう言い聞かせもした。
けれども。
あの白いヴェールの内側を、自分より先に見たかと思うと。
そして、まるで頼らせるように腕を貸している姿を見ると、ムカムカしてしょうがなかった。
あの役は、自分のものなのだ。
メイに頼られるのは、自分だけでいい。
オレが、オレが、オレが―― というものが、またふつふつと煮えたぎるのだ。
プチンプチンと、一本ずつキレていく。
なのに、あの二人の歩みはゆっくりすぎた。
一歩進んでは止まり。
メイを気遣うようにしながら、次の一歩を、これまたゆっくりと踏み出すのだ。
こんな、拷問な時間はなかった。
あっ。
そんなカイトの早い心臓が、ビクッと反応する光景があった。
次に踏み出した一歩で、彼女の身体が横に傾いだのだ。
慣れない靴のせいで、バランスを崩したのである。
危ない、とカイトが身体を動かしかけた直後。
ぎゅっと。
メイが、ぎゅっとソウマの腕にしがみつくことで、転ぶのをこらえたのだった。
父親代理の方も、最初から分かっていたかのように、いかにもスマートに支えて見せる。
まるで。
彼ら二人の様子こそが、新郎新婦のようにさえ見える瞬間。
ブチブチッッッ!!!
限界だった。
もう、耐えられなかったのだ。
あの役は、自分のものだ。
ほかの誰にも、絶対に代わらせたくなかったのである。
カイトは。
ヴァージンロードを、猛スピードで逆走した―― 教会始まって以来の新郎となったのだった。




