心の内側
あまりの申し訳なさに、緑は透をマンションの入り口まで送った。
「ごめん、こんなことになって……」
小さくなって謝る緑に、透はため息をついた。
「本当。何か言う気も失せる」
「う……すいません」
「とりあえず住む所ないから明日は荷物運ぶから」
妙な間が空く。もの言いたげな緑に、何?と透が尋ねた。
「その、勝手に同居決めた私が聞くのもアレなんだけど……。透は、大丈夫なの?」
「何が?」
「凛と同居して。だって、女の子苦手というか、嫌い……だったよね?」
透の表情が影がさしたように曇る。緑はしまった、と思った。なるべく触れるべきでないこの話題。俯いた顔から透の闇が垣間見える。
「仕方ないんだろ。あの子には悪いけど、なるべく関わらないように生活するよ」
「でも、それじゃ凛がきっと居心地悪いから……」
「だめなんだ」
緑の言葉を遮り、苦しそうに透が顔を背けた。
「あの子はだめだ。関わりたくない。緑ならわかるよな?」
緑は驚いて、まじまじと透を見つめた。この言葉の真意がわかるために、なおさら二の句が告げない。
「だから俺があの人に冷たくしても、緑がフォローしてほしい。優しく接したり、親しくなるわけにはいかないから……」
申し訳なさそうに透は言う。
凛の居心地が悪くなる前に、部屋を移れればいいんだけど。緑は俯いた。
「とりあえず明日からはよろしく」
「うん、よろしく……」
帰って行く透を見送り、緑はこれからの生活を思いやった。