まさかの決定。
妙なことになってしまった。
リビングのテーブルに、凛、その隣に緑、その手前に透が座り、気まずい雰囲気のなか黙っている。
「すいません、私の手違いで……」
気丈な緑が珍しく肩を窄めて、この事態の説明を始めた。
そもそもこのマンションは、緑のお父さんの所有物らしい。
そのため家賃はタダ。(凛は光熱費や水道代、食費の一部を請求されていただけらしい。どうりで安いと納得)
大学が始まってからこのマンションの余った部屋を借りて緑が生活を始めたが、ひとつ問題があった。
広すぎるのだ。この部屋は家族用で、リビングルームの他に四つの空き部屋がある。
そのうち一つを緑が使うにしても、部屋は三つも余ってしまう。だがこのマンションにはこの部屋しか空いていない。
緑は仕方なく広過ぎる部屋で一人で暮らしていた。
そんな時連絡が入った。
もうすぐ引っ越す人がいるために、マンションにひとつ空き部屋ができる。そこに緑の従兄弟である透が住みたいというのだ。(緑もその部屋に移りたかったが先を越された)
だが土壇場になり、その部屋の住民の引越しにトラブルが生じて先送りになった。
いずれは引っ越すが、いつ引っ越せるか分からないという。
もう既に荷物をまとめていた透は、部屋を引き払う手続きも済ませてしまっていたた。そのため、その部屋があくまで緑の部屋を一つ借りて住むことにしていたのだそうだ。
その方が、部屋が空いた時簡単に移れるしね。
だがバイトで忙しく、その話を完全に聞き流していた緑はルームメイトとして凛を連れてきてしまった。
そして引越す前に部屋に寄ってみた透と、引越しを済ませた緑が鉢合わせ。
かなり、あり得ない話……。
「だから、ごめん!空き部屋になるまで、どっか友達の家に居候しててよ!」
緑が透に手を合わせて懇願した。
「無理。そんな迷惑かけられないし……」
透は困ったようにそう言う。そりゃそうだよね、うん。
緑がちらっ、と凛を見た。半分ほどしか事態が飲み込めていない凛は、ん?と首を傾げる。
「だめ!凛はやっぱり追い出せないもん!」
緑は激しく首を横に振る。透は眉を寄せて反論した。
「でも、俺行く所なんて」
「仕方ない。三人で住む!」
緑の突然の宣言。さすがの凛も思わず瞬きをした。
「部屋が空くまでよ!すぐに空くかもしれないじゃない。同居って言っても、それぞれ帰りは遅いでしょう?問題ない!」
決定!と手を叩いた緑に誰も言葉が出なかった。