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僕らの猫  作者: みー
21/28

軽井沢でカフェバイト、一日目

軽井沢の外れにあるそのカフェは、白くて涼しげな外観だった。

緑に連れられて、透と凛はここで二泊三日働くことになったのだ。


サテンの深緑のシャツに、濃紺のスキニージーンズ、サングラスをかけた緑は、センスの良さを全開に颯爽と後部座席から降りる。


運転席では少し疲れた様子で、透が首を回していた。

襟に朱色の線が入った黒いポロシャツに、濃いグレーのズボンは、その長い手足によく似合っている。


凛は目的地に着いたのも気付かず、後部座席でうとうとと眠りに落ちかけていた。

運転席から振り返った透がその姿を見て軽く溜息をつき、白いワンピースの裾を引っ張る。


「起きろ。着いたよ」


「ふぇっ」


とぼけた声を出して、寝ぼけ眼を擦る。しかし目の前にある透の整った顔に気付き、一気に意識がはっきりした。


「先行くからな」


そう言うと、透も運転席から出て行ってしまい、凛は車に残された。


三人が店内にに入ると、そこには白とグレーを基調として、テーブルやカウンターがセンスの良く設置されていた。

風通しの良い涼しい店内で、大きな窓に透けるカーテンがたくさんの光を通している。


「素敵な所……」


凛はそう零した。緑はそれに頷き、オーナーを呼びに行った。


気だての良さそうな大人っぽい女性が奥から顔を出す。


「あら美男美女!緑、いい子達つれてきたわねー!」


「真美さん、凛はだめですよ!……透はどうでもいいですけど」


どうやらオーナーは美形好きらしい。凛と透は熱烈な歓迎を受け、カフェの中へ招かれた。


仕事についての説明を受け、白いワイシャツに黒のエプロンを身につけると、三人は早速働き始めた。


緑、凛は元々飲食店でバイトをしているため、接客は慣れたものだ。だが接客未経験の透も、持ち前の容量の良さで難なく仕事をこなしていた。

テキパキと動く三人を、真美さんは厨房から満足気に見守っていた。


ピークを過ぎ、テーブルに空きの出始めた夕方。透はレジ打ちをしながら、あることに気が付いた。

窓際に座った男性ニ人組が、小声で何やら話しながら、しきりに凛へ視線を送っている。


その先には、柔らかな髪を一つにまとめ、小さな体で動き回る凛の姿がある。

華奢なせいで丁度良いサイズのエプロンがなく、すこし大きなサイズを仕方なく着たようだった。捲ったシャツの袖からは白く細い腕がのぞいている。

注文を取る時や、お客さんを送り出す時に見せる笑顔と明るい声が可愛らしい。


どうやら、凛に声をかけようと企んでいるようだった。

呼ぶ口実を作るために水をわざわざ飲み干し、男が凛に呼び掛けようとした。

透はレジを離れ、自分が変わりに注文を取りに行こうと急いだ。


が、間髪入れずにどこからか現れたのが緑だった。

有無を言わせぬにこやかな笑顔で、水を注いでいる。

その笑顔の裏には気のせいか、凛を狙う野郎は殺すとでも言いたげな冷たさが感じられる。



……まぁ、あいつが気付かないわけ……ないか。


拍子抜けした気分だったが、改めて緑の溺愛加減を思い知るのだった。

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