どちら様ですか?2
「み、緑の友達です」
「あぁ、そう」
そのやりとりだけで、当然という顔で男の子は部屋に入ってきてしまった。慣れた様子で冷蔵庫から水を取り出し飲んでいる。
凛は少し離れたソファから横目で彼をじーっと観察した。
どうしよ。知らない人を勝手に部屋に入れちゃった。
もしかしてこの来慣れた様子からして、彼氏、なのかな?
でも、緑は彼氏と遠恋中のはずなのに……
頭の中が混乱し、緑は小さく唸ってみた。
そうだ。メール!
『知らない人が部屋に入ってきちゃった。彼氏??気まずいよ!』
もうバイトが終わったのか、すぐに返信が返ってくる。
『もう着く』
短っ!
本当に着く所だったらしい。慌しく鍵をあける音がすると、緑が飛び込んできた。
例の男の子を見て緑は固まる。その表情は明らかにまずい、と言っている。
凛は緑の方にかけて行き、顔を覗き込んだ。
「緑おかえりっ。もう荷物は全部運び込んだよ。後は整理だけ……んっ!」
突然緑が凛の口を手でふさいできた。凛は驚いて目を見開く。
「どういうこと?」
顔は見えないが、凛の後ろで男の子の低く冷ややかな声がした。
「と、透。これは……!」
「何で友達住まわせてるの?明日からここに住むって、言ってあるよな?」
えっ!?ここに住む?
凛は緑の手を振りほどいて、後ろに振り返った。
明らかに面倒なものを見る目つきで、透くんというひとが凛を見おろしていた。