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僕らの猫  作者: みー
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悲しみと謎

凛は思い切って律先輩に打ち明けてみた。同居という事実だけは伏せたが、自分の素直な気持ちも、嫌われて落ち込んでいることも洗いざらい話した。


「どうして嫌われたか心当たりはある?」

「何も。でも、あたしが気付かないうちに、癪に障るようなことしちゃったのかも」

心当たりはない。全く見当がつかないほど、透くんのことを知らないのだ。

それでも嫌われてしまったことは疑いようがなく、とても悲しかった。

肩を落とす凛に先輩は言った。

「そいつ、よくわかんないけど、仲良くしなきゃならない理由でもあるの?」

理由?

考えてもみなかったことを聞かれ、凛は答えに詰まった。

そういえば、あたしはどうしてこんなに必死になっているのだろう。透くんがあたしと関わりたくないのは態度を見ればわかることだ。それなのに、毎日少しでも親しくなろうと話しかけている。

透からしてみれば迷惑かもしれない。

だが凛が話しかけなかったら?

想像してみた。二人の間にはきっと挨拶すらないだろう。同居こそしているが、それはある意味で赤の他人よりも冷めた関係かもしれない。


しかし、緑を探しに車に乗せてもらった時を思い出す。

『大丈夫だよ』

『そんな顔しないで』

凛を安心させるためにかけた声を聞いて、この人は本当は優しいひとなのだ、と確かに感じたのだ。


迷惑かもしれないのに、どうして関わりたがる?


律先輩に問われ凛は、自分の中に解けない謎を見つけた気がした。




ーーーーーーーーー



その日は帰りがすっかり遅くなってしまい、暗い道を歩いて帰った。


足取りは重たい。あの家に帰るのに気が引ける。


仲良くなれたらいいのに……


そんなことを考えながら、しばらくぼうっとしていた。

だが少しして、何か様子がおかしいことに気付く。


さっきから一定の距離を保って、後ろに足音が聞こえるのだ。

凛は恐る恐る振り返った。すると、物陰に隠れる人影が見えた。


つけられている?


ううん、勘違いかもしれない。凛は再び歩き出した。念のため試しに複雑な道を選び、早足で歩いて追いつけないようにする。


すると足音も早くなり、凛の後を追う人の存在がはっきりと意識できた。


やだ……怖い!

凛は緑の携帯に電話をかける。マンションにも近いし、時間をかせげば迎えに来てくれるかもしれない。

コール音が鳴る。


お願い、出て……!


しかし緑が電話が出るより先に、足音がすぐ近くまで近づいて、凛は腕を掴まれた。


「い……やっ!」


マスクに鋭い目の男が凛の腕を強く掴んでいて、振りほどこうとするもびくともしない。

痛い……っ


「いや!誰か助けてっ……緑!」


凛が大声を出すと、男は手で凛の口を塞いできた。


苦しい、触らないで……


恐怖で凛が涙目になった時、突然男が凛から引き剥がされた。


男を引き剥がしたのは透だった。

男は襟首を掴まれ、呻きながら後ろによろめいた。透は間髪入れずに男を思い切り殴る。

鈍い音に、凛が小さな悲鳴を上げた。

殴られた男が立ち上がり、透に掴みかかって来た。透は怯むことなく男の腹に膝で蹴りを入れ、男は地面に崩れ落ちた。


「走れ!」

透が恐怖で硬直する凛の手を取って走り出す。凛はわけもわからないまま、透に助けられていた。









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