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僕らの猫  作者: みー
10/28

演劇と彼

授業終わりにカフェテリアで緑を待ちながら、凛は課題の洋書と格闘していた。


マーカーで塗りつぶされ、使い古された辞典を引きながら、文脈を検討していく。

あぁ、だめー。

完全に行き詰まってしまい、凛は作業を放棄した。カフェオレを口に含み辺りをを見回す。


午後の授業が休講になったために凛は時間を持て余しているが、他の生徒は授業があるのでカフェテリアは閑散としている。


凛は斜め前でうたた寝している男の子に気付いた。


うわぁ……きれいな人!

普段は人の容姿にあまり興味を抱かないのだが、寝ているくせにまるで違うオーラを放つそのひとに、凛は釘付けになった。

この大学にモデルさんとか、芸能人なんていたかしら。

茶髪のパーマがよく似合っていて、片耳に黒のワンポイントのピアスがのぞいている。長いまつ毛と白い肌がまるで欧系の少年のよう。


彼は冊子を見ていたらしい。広げたまま置いてあったため気になって覗き込むと、演劇の台本のようなものに、たくさんの書き込みがしてあった。

役者さん?

凛は彼が寝ているのをいいことに、その台本を小声で読み上げてみる。


「私は人が信じられない。とてもじゃないけど、もう誰かを信じることなどできないのだ……」


悲劇なのだろうか。人間不信の女のセリフは、凛の身体に痛く染みた。


「それではあなたは一人で生きてゆくおつもりですか。私がそれを許すとでも?」


それに対する男のセリフ。目で読んでいただけなのだが、どこかから声が聞こえてきた。びくっ、と飛び退いて、台本から顔をあげるとあの男の子が起きていた。


「ご、ごめんなさい!あたし……」


しどろもどろになる凛を見て、ふっ、と目を細めて微笑む。


「演劇に興味が?」

「いやあの……文学部でたまに題材にするくらいで、詳しくないんです。ただ読んでいたらセリフに見入っちゃって。ごめんなさい勝手に……」


申し訳なさげに凛は彼を見つめた。その姿をじっと見ていた彼は、脈絡なくこう言った。


「暇だったら、練習に付き合ってくれない?」

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