どちら様ですか?
実家から大学への通うためには、片道二時間電車に乗らなければならない。
「遠すぎるよね?だから大学の近くで一人暮らししようと思ってるんだけど、なんだか不安で」
そんなことを大学でできた親友、緑にぼやいた。
すると緑はこんなことを言った。
「じゃあ、凛も一緒に住む?」
彼女のこの一言が、すべての発端となった。
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引越し当日。
緑の帰りはバイトで遅くなるらしい。引越し業者に荷物を運び入れてもらい、凛は緑の帰りを待った。
格安の家賃を提示された割に、部屋は本当に住みやすそうだった。バス、トイレ付きで、1人ずつの部屋まである。オシャレな緑が揃えたインテリアのおかげで、カフェのような雰囲気のリビングはとてもくつろげる。大学へも自転車でいける距離だ。
幸せかもー!
凛は荷物整理を放棄して、ふわふわのソファに横たわった。
緑と二人暮らし。楽しいルームシェアの生活を想像し、自然と微笑んでしまう。
緑、早く帰ってこないかなぁ……!
緑が帰ってきたら、笑顔でおかえりって言おう。新鮮でわくわくする!
そうしているうちに、タイミングよくインターフォンが鳴った。
緑が帰ってきたと決めつけていた凛は、誰かも確かめず笑顔でドアを開けた。
「緑っ!おかえ……り?」
「……どちら様ですか」
そこにいたのは、名前も知らない男の子だった。