魔術師とクッキー②
学校での休み時間
瑞希は次の授業の用意をしていた。静かだが真のある声に呼び止められた。
クラスメイトの黒川摩夜が立っていた。
緩いウェーブのかかった長い黒髪がよく似合い、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。
「ま・・・黒川さん?」
「ちょっと顔かしてくれるかしら?」
その一言に賑やかだったクラスの空間が
シンと静まり返った。
学校の人気者である緒方瑞希に
美人だが大人しいハズのクラスの女子が信じられない一言を放ったのである。
本人に人気者だという自覚はなくとも、
今のクラスの空気にいたたまれなくなった瑞希は
逃げるように教室を後にした。
「どうしたの?学校では他人の不利しようって言ってきたのは
君の方じゃなかったっけ?」
「そうよ、私が作ったルール。私の私による私のためのルール。
すなわちこれも私のルールに準じているの」
普段は「摩夜」「瑞希」と呼び合っているが
苗字で呼び合おうと言い出したのも摩夜の方である。
「そ、そう」
(相変わらずだなぁ・・・)
ツッコミをいれたらきっと十倍返しされるので
聞き流すことにした。
「麻里音を屋敷に呼んだそうね、どうして?」
神崎麻里音と摩夜がとても仲のいい友達だと言う事は瑞希自身も良く知っている。
「どうしてって、成り行きだよユーリの屋敷の前でばったり会ったから」
「そう、偶然なのね」
「・・・そうだけど、何かまずかった?・・・・っておい真夜!」
瑞希の言葉を待たずして摩夜はスタスタと教室に戻ってしまった。
「勝手だなぁ・・・・」
瑞希と摩夜は小さい頃から互いを知っており
瑞希やユーリ同様摩夜は魔術師なのだ。
だからこうやって学校では互いの存在を気付かれぬよう
距離を取っていた。
「お帰り摩夜ちゃん緒方君、お話終わった?」
教室へ戻った二人を麻里音が出迎えてくれた。
「ええ、しめ終わったたわ」
「緒方君をしめてたの?」
麻里音はキョトンとした表情で聞き返した。
「まぁ近いものがあったよね・・・」
その問いに瑞希が目を逸らしながら答えた。