魔術師とお人形③
二人は当初の予定通り麻里音のいっていたカフェへと入った。
麻里音はレモンシフォンパイ
ユーリはフロマージュモンブランを頼んだ。
向かい合って座る麻里音は膝の上に人形を置き嬉しそうにしている。
「名前どうしようかなぁ」
(名前!?)
悪魔が宿った人形に名前をつけようとしている。
これは結構マズいかもしれない。
「うーんと、金髪で巻き髪だから・・・金田チョココロネってどうかな?」
「かねだ・・・」
麻里音は気付いていなかったようだが、
人形、もとい金田チョココロネの腕がピクリと反応した。
「い・・・いいと思うよ」
適当に相槌を打つとユーリはこの状況の打開策を一人考え始めた。
カフェから出ると公園を通って道を抜ける途中甘い香りが鼻をくすぐった。
「あ、クレープ屋さんがあるよ」
ユーリはワゴン車型のクレープ屋を指差した。
「さっきケーキ食べたばかりなのに足りなかったんだねクスクス」
「うん、僕チョコのやつ食べたいな」
「いいよ私も甘いものはどんどん入るから買ってくるね」
クレープ屋に向かう麻里音の姿を確認し、ベンチに置いてある
金田チョココロネに向き合った。
「金田チョココロネ」
名前を読んでみるとチョココロネは力強く腕をベンチに振り下ろした。
(よっぽど嫌なんだな・・・)
先ほどの控え目な反応より大分大胆な動きを見せた。
ガシッと金田チョココロネの頭をつかむと
茂みに入り、転がっていた枝を適当に拾って慣れた手つきで素早く
魔法陣を描いた。
その間も金田チョココロネは手足をバタつかせる。
「大人しくしろっ」
魔法陣が書き終わると陣の中にチョココロネを乱暴に投げ入れ
急いで草むらから出た。
「間に合ったか」
ベンチにまだ麻里音の姿はない。
「お待たせ~」
麻里音がクレープを両手に二つ持って帰って来た。
「あれ?チョココロネは?」
「チョココロネは・・・
魂が宿っていたようでいきなり起き上がって公園を爆走して
駆け出して行ったよ」
「ええ!?」
流石に無理があったか?
ユーリの心配を余所に麻里音が反応した。
「凄い!!私も見たかった!!」
(僕何気に麻里音の扱い上手いかも・・・)
ユーリ達がクレープを食べている頃
館では朋がユーリを探して部屋を訪れていた。
「おーーいユーリ!」
「何だ、眼鏡執事しかいないのか」
中では執事がせっせと主の部屋を掃除していた。
「何ですかユーリ様に御用ですか?ノックもせずに失礼ですよ」
ムッとする執事を無視してズカズカと部屋に入った朋は
床に描かれた魔法陣に興味をしめし近付こうとしたその時
ボトッと
音がしたと思ったら
魔方陣の中に少女の人形が出現した。
「ギャーーーーーーーーーーー!!!」
「こっ腰が・・・!腰が抜けた!!」
タイミングが悪かったせいでその場にへたり込んでしまい
逃げるに逃げれない状態となってしまった。
朋の悲鳴にイラッとした執事だったが人形の出現に気づいて
近くまで来て観察し始めた。
「これは・・・中に悪魔が入ってますね」
「ホギャーーー!!!!」
「朋君・・・あなた魔術師でしょう
しかも時期教皇候補の一人でもある。悪魔を怖がってどうするんですか」
「こういうモノに宿ってるのって怖いんだよ・・・」
「大丈夫ですよ、どうせこの魔方陣からは出られないんですから
見てください、出たくてもがき苦しむ悪魔を
虫かごから出られない哀れな虫ケラのようですよククク」
「ごめんお前の方がよっぽど怖いわ」
二人の眼前では魔法人の中横たわった人形に宿った悪魔が動こうとするも
魔法人の力に押さえつけられビクビクとかすかに手足を震わせていた。