第一話 魔術師と女子高生①
穏やかな放課後
この学園の一年生緒方瑞希は図書室にいた。
中性的な顔立ちと名前だが男子生徒である。
目の前には同じクラスの女子、神崎麻里音が華奢な身体に
不釣合いな分厚い本を積み、ヨタヨタと歩いていた。
「手伝おうか?」
彼女と話す機会はさほどなかったが
反射的に声をかけた。
「緒方君・・・?」
瑞希に声をかけられたのがよほど意外だったのか
神崎麻里音はあっけにとられていたので
瑞希は上の本を数冊持ってやった。
本のタイトルに目がとまる。
「イイ趣味だね」
本のタイトルは"悪魔の召喚儀式"や"呪いの方法"など、
お菓子作りの本などを楽しそうに読んでいる
甘いイメージがあったのだが、180度違ったようだ。
「部活の資料なの」
「部活?」
「うん、オカルト研究部だよ」
瑞希はオカルト研究部に案内されることとなった。
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部室でお茶を入れるなんて
茶道部くらいだと思っていた。
魔女のお茶会でも意識しているのだろうか
ハーブティーを入れてくれた。
麻里音は自分の分を砂糖をいれるとスプーンを
右回りに三回回したかと思うと今度は左に三回、
そしてまた右回りに三回と繰り返している。
「それはおまじない?」
「そうなのっ」
瑞希の質問に対し、麻里音は目を輝かせて答えた。
「ふふ、そういうのが好きなんだね」
「うん、私魔法とか魔術とかが大好きなんけど
私は魔法が使えないからこうやっておまじないを
日常生活にいれてるの。
こんな事言ってると変な子って思われちゃうかもしれないけど」
「変じゃないよ」
瑞希は即答した。その眼差しがとても優しく感じる。
「本当?特に男の子はおまじないとか嫌がるかと思ったんだけど
緒方君ってきっとそういうところがモテるんだね」
「も・・・モテる?」
「あれ?気づいてないの??」
「う~ん、そんな事ないと思うけどなぁ」
興味なしといった瑞希の頭は
「はたして彼女意外に部員はいるのだろうか?」
という疑問に支配されていたがあえて聞かないことにした。