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8話

 翌朝、小鳥のさえずりで目を覚ました俺は、まずは新設した「聖域」で用を足し、清々しい気分でアジトの周囲を探索することにした。


 この山は断崖絶壁だと思っていたが、歩いてみると盗賊たちが日常的に見回りに使っていたらしい、踏み固められた獣道のようなルートが一周にわたって続いていた。


 その道を辿るうちに、俺はなぜ彼らがここをアジトに選んだのか、その本当の理由を悟った。


「……なるほどな。ここは略奪者にとって、最高の『管制塔』だ」


 魔法の望遠鏡を覗き込むと、その利便性は一目瞭然だった。

 森の隙間からは遠く離れた王国の城壁が陽光に輝き、反対側を見れば活気ある都市国家アイゼンの街並みがはっきりと見える。そして何より、両国を結ぶ街道を行き交う商隊の列が、蟻の行進のように丸見えなのだ。


 盗賊たちはここで獲物をじっくりと吟味し、警備の薄い商隊が死角に入る瞬間を狙って、完璧な計画で襲撃していたのだろう。


 だが、この利点は俺にとっても、最高の「狩場」としての利益をもたらした。


「あそこにいるのは……鑑定で習った『白銀鹿シルバーバック』か。角が高値で売れるやつだな」


 俺は山の各所に点在する絶壁や岩場を巡り、望遠鏡で獲物を探した。

 数キロ先の森の開けた場所に、価値の高い魔物を見つけては、意識を集中させるため指先を向ける。


「――置換」


 一秒間に数十回という次元に達した連射能力は、もはや「射撃」ですらなかった。

 俺が意識を集中すれば、遠方の空間が連続して水に書き換えられ、獲物は自分が死んだことすら気づかずに素材へと姿を変える。

 その後は、悠々と山を降りて回収し、アジトへ持ち帰るだけだ。


 数日のうちに、ガストン氏に教わった「価値の高い獲物」を、驚くほど効率的に、かつ傷一つなく仕留めることができた。これだけで十分に、いや、一生遊んで暮らせるほど稼げる確信が持てた。


 そして、手強い魔物を仕留めるたびに、俺の身体には爆発的な経験値が流れ込み、レベルはさらに上昇していく。

 もう、一秒間に何回能力を使えるのか、自分でも把握できない。意識した瞬間に、世界が水に侵食されるような全能感すらあった。


「生活の基盤は完璧に整ったな」


 干し肉を齧りながら、俺はアジトのテラスから沈みゆく夕日を眺めた。

 金、食料、安全な拠点、そして清潔なトイレ。

 サバイバルの段階は終わった。


「さて……そろそろ、この能力の『限界』を試してみるか」


 俺は指先から溢れ出す、制御不能なほど強大な力をじっと見つめ、次なる実験の構想を練り始めた。


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