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4話

 朝日が昇ると同時に、俺たちは盗賊の拠点を出発した。


 リナを連れて昨日の襲撃現場まで戻ったが、そこにはもう、商隊の姿はなかった。地面には乱れた轍と、捨て去られ壊れた荷箱が転がっているだけだ。


「……行っちゃったみたいですね」


 リナが寂しそうに呟く。


 無理もない。商品を奪われ、護衛も蹴散らされた彼らにとって、あそこに留まるのは死を意味する。


 だが、娘を奪われた父親の心境を思えば、胸が締め付けられるようだった。おそらく、絶望に打ちひしがれながらも、「国へ戻り、私兵を組織してでも娘を奪還する」という燃えるような意志を胸に、必死で馬を走らせたに違いない。


「大丈夫だ、リナ。君の親父さんはきっと、君を助けるために動いてる。俺たちが直接そこへ行けばいいだけだ」


 俺たちは隣国へと続く街道を歩き始めた。


 道中、すでに「水」の能力を見せていることもあり、俺はふと思い立って、自分がこの世界の人間ではないこと――「転生者」であることを彼女に明かした。


「テンセイシャ……? 別の世界から来たっていうことですか?」


 リナは恐怖するどころか、宝石のように目を輝かせて食いついてきた。


 元の世界には馬車よりも速く走る鉄の箱があること、空を飛ぶ巨大な鳥のような乗り物があること、そして夜でも太陽のように明るい街のこと。俺が語る「現代日本」の話に、彼女は一言も漏らさぬ勢いで聞き入っていた。


 もちろん、これはただの思いで話ではない。


「悪いが、俺はこの世界の常識を何一つ知らないんだ。ギブアンドテイクといこう。この国の成り立ちや、魔法の仕組み、商売のルールを教えてくれ」


 そうして俺たちは、互いの世界の知識を交換しながら旅を続けた。

 数日の野宿を伴う道中だったが、俺の能力は意外なほど重宝された。


「サトウさんの能力、旅には本当にうってつけですね。飲み水に困らないなんて、商隊からしたら神様みたいですよ」


 焚き火を囲み、俺が生成した澄んだ水を飲みながらリナが笑う。


「……ああ。本当にそう思うよ」


 かつて、都会のベンチで、たった一杯の水すら得られずに喉を焼いて死んだ自分を思い出し、俺は深く、激しく頷いた。皮肉なものだ。死の原因だった「渇き」が、今では俺を救い、この少女を守る力になっている。


 旅を続けて数日。

 地平線の向こうに、重厚な石造りの城壁と、天を突くような尖塔が見えてきた。


「見えました! あれが私の故郷、自由都市アイゼンです!」


 リナが歓喜の声を上げる。

 王都を追い出され、盗賊を屠り、異世界の知識を蓄えながら歩いた旅が、ようやくひとつの節目を迎えようとしていた。


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