14話
ガストンの邸宅に戻ると、リナが待っていたかのように出迎えてくれた。
俺は今日あった出来事――グレートボアの群れとの遭遇、彼女たちの即時撤退の判断、そして少しばかりの「助っ人」としての働きをかいつまんで話した。
リナは俺の話を聞きながら、まるで自分がその場にいたかのように表情をめまぐるしく変えた。
無謀な状況に心配そうな顔をし、準備不足の友人たちに憤慨し、最後には俺が彼女たちを無傷で連れ帰ったことに深い感謝と、「あなたに頼んで本当によかった」という心底安心したような笑みを浮かべた。
その日の夕食もガストン氏と共に囲んだ。話題はやはり今日の狩りのことになった。
「サトウ殿ほどの腕であれば、一人ならもっと多くの獲物を狩れたのではないかな?」
ガストンが純粋な疑問として尋ねる。俺は肉料理を口に運び、飲み込んでから答えた。
「ええ、倒すだけなら。ですが、一人で持ち運べる量には限度があります。必要以上に殺めても、貴重な素材を森に捨てて無駄にするだけですからね」
「なるほど、それもそうか。欲に溺れず理性的だ」
ガストンは納得したように頷いたが、ふと思いついたように膝を打った。
「それなら、リナを荷物運びとして連れて行ってはどうかな? 娘も外のことを学ぶ良い切っ掛けになるし、君のそばにいれば安全だ。そして、何より君の負担が減る」
リナは「えっ!?」と顔を赤くして慌てたような表情を見せたが、俺は即座に首を振った。
「……あんな盗賊に襲われた直後ですから。今はまだ、彼女を危険な外へ連れ出す時期じゃないでしょう」
俺の至極真っ当な正論に、ガストンは「……確かに。早計過ぎたな」と肩を落とし、リナもどこか残念そうに視線を落とした。この親子、意外と行動派というか、俺に信頼を寄せすぎではないだろうか。
翌朝、俺は再びアジトへの補給物資を買い揃えるために市場へ向かった。
朝の光に包まれた市場は昨日にも増して活気に満ちており、行き交う人々のエネルギーが、喧騒が、何か新しい発見や出会いを与えてくれるのではないかと、気分を自然と高揚させる。
「よう兄ちゃん! 聞いたぜ、冒険者ギルドに登録してないんだってな。もったいねえ!」
声をかけてきたのは、昨日の職人風の男だ。
「……まあ、王国から追放された身ですから。あまり派手に目立ちたくはないんですよ」
俺が苦笑いしながら答えると、男は「なるほどなあ、訳ありってわけか。自由都市にゃあ、そういう奴は珍しくねえよ」と深く追求せずに笑い飛ばしてくれた。
この都市の深く追求しないこういうところも良いところだ。
俺が猟師として活動するために食料や日用品を買い込んでいることを話すと、男は顎をさすって思い立ったように言った。
「猟師か……、ちょっと工房まで来い。あんたに見せたいもんがある」
こうして声をかけられたのも何かの縁だろう。俺は快諾し、男の後に続いて工房へと足を進めた。
通りから少し外れた場所にあるその建物からは、金属を叩く音や、何かが焦げるような力強い匂いが漂っていた。
「……さて、何か面白いものが見れるといいんだがな」
俺は腰の短剣に手を触れ、未知の技術や道具への期待に胸を膨らませた。




