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灰の隔離地に咲く魔女  作者: 榛原
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第三章 灰を裂く声

エドの目的の帝国の復讐は進む中、エミルの中では心配になっていた

いくらエドが強くても一人で帝国に立ち向かうのは無謀である事を知っている

剣を抜く音は、

驚くほど静かだった。


だがその一瞬で、

城壁の上の空気が変わる。


兵たちは恐怖を抱えたまま、

それでも武器を握り直した。


――エドが立っている。


ただそれだけで、

崩れかけた心が辛うじて繋ぎ止められる。


城壁の外。


黒き巨影は、

ゆっくりと首を傾けた。


まるで品定めをするように、

エドだけを見ている。


「……なぜ帝国の紋章がある」


エドは低く問う。


返事はすぐに来た。


「命じられた」


濁った声。

感情の欠片もない。


「捕らえよ、と」


兵の一人が息を呑む。


捕らえる?

この規模の軍勢で?


それはもう、

戦争ではない。


一人を奪うための――侵攻。


エドの背後で、

若い兵が震える声を漏らす。


「隊長……どうします」


隊長ではない。

正式な階級もない。


それでも彼らは、

自然に判断を委ねていた。


エドは短く息を吐く。


考えるまでもない。


「門は開けるな」


「で、ですが――」


「ここで止める」


静かな断言。


ざわめきが走る。


城壁の外には、

数えきれない影。


止められるはずがない。

誰もが分かっている。


それでも。


エドの声には、

不可能を現実に変える響きがあった。


黒き巨影が一歩進む。


それだけで、

大地が沈むように揺れた。


灰が舞い上がり、

視界が濁る。


「最後に問う」


巨影が言う。


「従うか」


エドは答えない。


代わりに――


剣を、

わずかに構えた。


その仕草だけで、

答えは十分だった。


沈黙。


そして次の瞬間。


巨影の口が、

大きく裂ける。


「――ならば壊す」


咆哮。


衝撃波が城壁を叩き、

兵たちがよろめく。


同時に、

黒い群れが動いた。


地面を埋め尽くす魔獣たちが、

一斉に突進する。


足音。

唸り声。

砕ける岩。


世界が、

暴力に塗り潰される。


「弓兵、構えろ!」


誰かの叫び。


矢が放たれる。

だが――


止まらない。


一本、二本、十本。

突き刺さってもなお、

魔獣は進む。


距離が、消える。


城壁へ届くまで、

あとわずか。


そのとき。


エドが、

前へ出た。


止める声はない。

出せる者もいない。


彼は城壁の縁に立ち、

静かに目を閉じる。


――思い出すのは。


灰の降らない日。

笑っていた少女。

交わした、帰るという約束。


「……まだだ」


小さな呟き。


目を開く。


その瞳の奥で、

何かが揺らめいた。


次の瞬間。


エドは――

城壁の外へ跳んだ。


兵たちの悲鳴が遅れて上がる。


だが彼の体は、

恐怖ではなく、


まるで最初から

そこに落ちる運命だったかのように――


静かに、

灰の大地へ着地した。


迫り来る黒い波。


その中心で、

ただ一人立つ影。


風が止む。


音が遠のく。


そして。


エドの足元から、

淡い光が滲み出た。


灰色の世界に、

不釣り合いな――


白い光。


魔獣たちが、

初めて足を止める。


巨影の声が低く揺れた。


「……それか」


確信を帯びた響き。


エドは剣を構える。


光は、

ゆっくりと刃を包み込んでいく。


まるで。


眠っていた何かが、

目を覚ますように。


「来い」


静かな宣言。


次の瞬間。


白い閃光が――

灰の戦場を切り裂いた。



魔獣という帝国が作り出したモンスターの暴走にエドは帝国の不満が募る

引き返せなくなったエドは運命はどうなるのか

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