1888年・ドーバー海峡
1882年秋・ドーバー海峡
大英帝国籍商船・蒸気船オクタヴィウス号
ヴァン・ヘルシングは先ほどグレイが座ってったソファに腰を下ろした。
元はスペイン人の征服者で若返りの泉を探していたが、見つけた後は自分の運命を呪った。
泉の力で永遠の【命】を得て、不死者の仲間入りを果たしたと同時に満たされることのない【渇き】の呪いを抱え、正体を偽りながら、数世紀存在をし続けた。
元の身分を捨て、当時のスペイン帝国領だったオランダへと渡り、色んな名字を名乗ったが、約半世紀前から廃れたヴァン・ヘルシング家の名字を拝借した。
泉の力で永遠を【命】を得たと考えていたが、それはまがい物の命であった。彼は転生し死ななくなったのではなく、転生する際に死んで、尚且つ存在し、意思を保ち、他者を糧にしながら獣以下の存在になり下がったと感じた。
ヴァン・ヘルシングは系統の開祖となった。征服者仲間を次々と転化させ、自分の系統の闇の子どもであると同時に構成員兼部下にした。
若い系統で元征服者たちで構成していたため、攻撃的な者も多く、近隣国に根付いていた古くからの系統と争い、すべての構成員が滅ぼされた。評議会の計らいで存在することが許されたが、200年前に闇の子孫を増やすことを禁止された。
泉の力でそれなりに魔力を含む様々な能力も獲得し、少しだけ外見を変え、オランダ人っぽく装った。年齢も偽り、数世紀存在していたため、知識も膨大となり、今世紀の精神科医療の稀有な天才と拝まれることになった。
辛うじて【渇き】を申し訳ない程度に癒すための人間の【血】を最低限の保持を認められていたので、数日ぶりにがぶ飲みしていた。
客室のドアがノックされた。
「誰だッ!」
ヴァン・ヘルシングはぶっきらぼうに聞いた。
「あなたの友人です、ヴァン・ヘルシング殿」
聞き覚えのない声だった。英国の訛りがなく、どちらかといえば、東洋訛りの英語だった。
ヴァン・ヘルシングは立ち上がり、懐に隠していた銀をコーティングされた短剣を握った。
勢いよく客室のドアを開けて、前に二人の男が立っていた。
一人は若い見た目と裏腹に年齢不詳の雰囲気が漂う東洋人で高級な英国式スーツで身をまとい、よく手入れされた口ひげを生やしていた。もう一人は丸い顔で栗色の髪の毛をした30代の東洋人と西洋人の混血だった。
「名乗れ、返答次第で滅ぼす」
ヴァン・ヘルシングは彼らは自分と同じ側の存在であることを感じたので警戒心を最大限にあげた。
「そんなに警戒しなくていいのです、私は今フー・マンチューと呼ばれているものでして、そして彼は私の部下のジャン・パスパルトゥーです」
年齢不詳の若い東洋人の男は人懐こい笑顔で話した。
「今とか言ったな・・・何者だ?ッ」
ヴァン・ヘルシングはその名を知っていた。目の前に立っていたのはフー・マンチュー博士、噂では非凡な才能を持つ非常に明晰な頭脳と冷酷、狡猾で極めて残忍な性格の暗殺団の統領であり、ロンドンの暗黒街の二大顔役の一人だった。
「なるほどですね、私は嬴政と申します・・・現代の清国のずっと昔にあった国、秦の王であの地域を最初に統一したものです・・・私の本名より始皇帝という呼び名の方が浸透しているのです・・・こんな自己紹介でいいのですか、フアン・ポンセ・デ・レオン殿?」
ヴァン・ヘルシングは恐怖で氷づいた。目の前に立っていた男は自分より遥か永く存在している不死者の一人で評議会の重鎮でもあった。
「申し訳ございません・・・あなた様・・・評議会の上院議員に対して失礼な態度を取ったことを深くお詫び申し上げます」
「気にしなくていいのです、あなたに話があって、評議会の配達人が帰るのは待ってました」
「ああ、はい・・・どうぞ、お入りください」
二人の男が客室に入った。
「評議会の依頼とは別にあなたに依頼したいことがあるのです・・・評議会、特に|始まりの4人《 クァットゥオル・プリモルディアーレース》には知られてはならない依頼なのです」
「と言います・・・」
「革命です・・・古い体制を壊す革命、そのためにドラキュラ伯爵が必要なのです」
続く・・・
次回の更新予定12月8日(火曜日)




