第七話 鬼の面が剥がれる時
戦場での激しい殺戮が終わり、辺境の陣に静寂が戻った。蘭陵王は、陣幕に戻ると蕭淵以外の者を下がらせた。
長恭は、火鉢の前に座し、血に濡れた鬼の面を、自らの手でゆっくりと外した。その瞬間、彼の白い素顔が、陣幕の微かな光に照らされる。彼の顔には、戦場での殺意の残滓と、極限の疲労が深く刻まれていた。彼の瞳は、虚ろで、まるで魂が抜け落ちたかのようだった。
「蕭淵……」
「はい」
「貴方の愛は……私にとって毒だ。だが、この毒がなければ、私は、この戦場で窒息してしまう。本当に死んでしまう」
「殿下……」
「どうか私を生かしてくれ。私の魂の自由を、今夜、貴方の愛で与えてくれ」
長恭は、蕭淵の腕に飛び込み、彼の逞しい身体を求めた。彼の求愛は、もはや将軍としての命令ではなく、一人の男の切実な魂の叫びだった。彼は、鬼の面の下で失った人間性を、蕭淵の深い愛によって取り戻そうとしていた。
蕭淵は、長恭の切実な願いを受け止めた。彼を寝台に押し倒した。
「貴方の命が、私の全てです。貴方の求めに応じ、貴方を永遠に私だけのものとします」
蕭淵は、長恭の衣服を剥ぎ取り、彼の美しい身体に、熱い愛の刻印を何度も押した。彼は、長恭の首筋や胸板、戦場で負ったかすり傷を舐め上げ、その痛みと快楽を全て自分のものとした。
「ああ、貴方は、私にとって、神が与えた最も美しい罰だ……」
長恭は、蕭淵の愛の激しさに、歓喜と苦痛が混ざった叫びを上げた。彼は、鬼の面が守りきれなかった心臓の奥の弱さを、蕭淵の愛の前に曝け出した。
蕭淵は、長恭の敏感な場所を容赦なく刺激し、彼の密やかな奥に深く侵入した。その愛は、長恭の理性を完全に奪い去り、彼を激しい快楽の渦に沈めた。
長恭は、蕭淵の愛の中で、初めて「高長恭」としての全てを解放した。彼は、蕭淵の愛を、生きた証そのものとして受け入れた。この禁断の愛こそが、鬼の面の下に隠された彼の魂の真実だった。彼の体からは、戦場で吸い込んだ血の匂いが消え、蕭淵の男くさい愛の匂いに染め上げられていった。




