表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【歴史BL】蘭陵王の恋 ~鬼面の向こうの、永遠の契り~  作者: 極北すばる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/13

第四話 虚栄の都と戦場の残像

 宮廷は、雅やかな空気と、権力闘争の陰湿な匂いに満ちていた。長恭は、妻への愛と、皇族としての義務を盾に、蕭淵との戦場での出来事を「特殊な状況下での現実逃避」として、心の奥底に厳しく封じ込めた。彼は、再び冷徹な将軍としての仮面を着け、政務に邁進する。


 長恭の心の中は、二つの世界に引き裂かれていた。一つは、妻・鄭氏の静かな優しさが支配する日常の義務。もう一つは、蕭淵の熱情が刻みつけた戦場での魂の真実。この二律背反の感情こそが、彼の心を絶えず揺らし続けた。


 一方、蕭淵は、長恭の命により、都から遠く離れた自身の故郷で、長恭の帰りを待っていた。彼の手元には、長恭からの公的な感謝の文が届くだけ。個人的な感情は、一切込められていない。


(殿下は、私との夜を、無かったことにされた。殿下の平穏のためならば、私の忠義と愛など……)


 蕭淵は、長恭が望む平穏な日常の邪魔になってはならないと、己の愛を不忠という名の鎖で縛りつけた。彼は、長恭の幸福を願いながらも、報われない愛の苦しみに苛まれた。彼は、都の華やかな日常の中で、長恭が「愛する妻」の元にいることを想像し、胸が締め付けられた。


 だが、その苦しみこそが、蕭淵の愛の深さの証明だった。長恭の心が、妻の傍で安寧であるならば、自分の愛が不純な欲望となろうと構わないと、彼は己に言い聞かせた。彼の魂は、長恭の愛の永遠の影となることを、既に受け入れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ