第二話 愛の褒美
蕭淵の唇が、長恭の首筋に熱を帯びた痕を刻んだ。火鉢の微かな熱は、陣幕内の空気を急速に濃密なものに変え、外界の冷気から二人を隔てる密室を完成させた。
「蕭淵……駄目だ。私は、妻を持つ身。これは、許されない不貞だ」
長恭は、喘鳴のような声で抵抗した。彼の理性は、都での雅やかな日常に固執していた。
「不貞ではございません。これは、戦場でのみ許される、命の対価です。貴方は明日、蘭陵面の下で多くの命を奪う。その穢れと苦悩を、今夜、この身が全て受け止めましょう」
蕭淵の指は、長恭の甲冑の下の衣を器用に解き、その雪のように白い肌を露わにした。彼は、長恭の全てを独占したいという切ない愛と、長恭の命を守るという使命を、その行為に込めていた。
蕭淵は、まず長恭の美しい素顔に、まるで神殿の像に捧げるように、丁寧な口づけを重ねた。次に、長恭の首筋から胸板へと唇を滑らせ、戦場で負ったかすり傷の跡を、舌先で熱く辿る。
「貴方の傷も、痛みも、全てが私のものだ。貴方を穢すことで、貴方を純粋に保つ。それが、私の忠誠です」
蕭淵の鍛え抜かれた身体は、長恭の全てを包み込み、その熱情は、長恭の皇族としての理性を粉々に砕いた。蕭淵は、長恭の唇を塞ぎ、その口内に深く侵入した。彼のキスは、征服であり、魂の搾取だった。
長恭は、妻との穏やかな愛では決して得られない、魂と魂が激しく衝突するような情愛に溺れた。彼は、蕭淵の背に爪を立て、その愛を全身で求めた。その姿は、まるで白き獣が、己の飼い主を求めるようだった。
「蕭淵……もう、だめだ……」
恐ろしいほどに満たされる。降るような切ない愛撫。
蕭淵は、長恭の敏感な場所を容赦なく刺激し、彼の中に深く侵入した。長恭は、妻への罪悪感を、蕭淵の身体に刻まれる激しい快楽によって、一時的に押し殺した。長恭の心に、蕭淵の愛は、深く、そして抗いがたい依存の痕跡を、永遠に刻みつけたのだった。




