第50話 その男の本性は・・・・
マクミラン視点
「君の婚約者、また動き出したみたいだね」
学校の図書館で調べ物をしているとアシュベル・バルトロマイ、カーディル・オルジイトゥの二人が連れ立ってやって来た。
「私の婚約者に、厄介な蝿が集り続けているので仕方がありませんね」
婚約者であるレイファ・ミラノ
縁談の話が持ち上がった時、正直断ろうかとも思った。
面倒な人間に目をつけられているし、何よりも彼女の父親は愚鈍だ。己の力量を知り、大人しくしているのならまだいい。だが、あれは自身を過大評価する上に野心も強い。
身内に入れた場合、下手をすればこちらまで巻き込まれる恐れがあった。まさに百害あって一利なしという感じの男だった。
しかし、その娘は違った。どこからか誘拐してきたのではないかと思ってしまうぐらい使える人間だった。
ただ父親と王女の命令に従うだけのお人形、食い潰されるだけの存在かと思っていた。
まさか、騎士ごっこをする上で父親をしっかりと制御、コントロールをして陛下に何があっても自分たちに非がないよう契約を結ばせているとは思わなかった。それに彼女が行っている事業も面白い。
父親に手柄や利益が全て流れないようにしっかりと管理をしている。まぁ、思った以上に自分の父親が無能だったというだけだろうな。それに、野心が強い割には小物だ。
「彼女は抗うことを止めない。ならば、私は婚約者として彼女の助けになるだけです」
王女の話はよく聞く。
幼い頃から訳の分からない言葉を羅列し、周囲の話を全く聞かない。最初は何かの病気を疑った陛下たちが各国から名医という名医を集めて診せた。しかし、どの医師も問題はないとの診断だった。
実際、見た目に問題はなく、幼い頃は寂しさのあまり妄想の友達を作ったり、自分だけの世界を作って遊んだりすることもあるので様子を見るようにとのことだった。
そして陛下たちはこれも王女の個性だと判断して好きにさせている。
お二人にはなかなか子供ができなかった。側妃の話や縁戚から養子の話も出たほどだ。そして生まれたのがアイル王女殿下。
それゆえに甘やかされまくって育った王女は誰の手にも負えない。だって唯一、王女を諌められる人たちがそれをしないから。
「今まで自分のみでなんとかしようとしたレイファが他人を巻き込み始めたな」
カーディル殿下の言葉に私は周囲で一人黙々と課題をしている人や調べ物をしている人、純粋に読書を楽しんでいる人に視線を向けた。
この中にもいるだろう。レイファのお眼鏡にかない、アイルの被害に合うことになるであろう誰かが。
彼女が自分以外の人間も巻き込みだしたということはアイル王女を潰しにかかったというとだ。少なくとも私はそう思っている。だって、アイル王女はレイファの父親と同じだ。百害あって一利なし。
「まぁ、あれを一人で受け止めるのに限界が来たのでしょう」
私の言葉に二人は「確かに」と同意を示した。
まさか、堂々と裏口入学をしてくるとは思わなかった。しかも、普段は良識的な判断をする陛下がそれを許すというか実行するとは。こと、王女に関してはポンコツだな。あの人は。
まぁ、賢王と呼ばれた人でも美女一人のせいで国を滅ぼす暗愚に変貌することもある。これはそういうことなんだろう。
「私はこれで失礼しますね。所用ができましたので」
馬鹿な王女のために国を滅ぼさせるわけにはいかない。そのためのマクベイン家(私たち)なのだから。
「もう一つ確認させて。アグニス・サラスヴァティー男爵令息は本当に、魔塔に閉じ込められているのかな?」
さすがは親子。宰相と同じ目をしている。優し気な風貌で騙し、全てを見透かして何もかもを駒にする胡散臭い男。まぁ、人のこと言えないだろうけど。
「さぁ、私が知るわけないでしょう。まぁ、分不相応な行いは身を滅ぼすと言いますし、あれは更生できそうになさそなので二つの公爵家を怒らせる前に男爵が何か手を打った可能性は否めませんが。どのみち、私の預かり知らぬことです。それでは、失礼します」
「白々しい」と去り際にカーディル殿下が言うので私は笑って受け流しておいた。
人のものに手を出せばどうなるか、身を持って知る羽目になったのは彼自身の責任だ。どのような結末であろうと第三者に責められる謂れはない。
『お、お前、マヤちゃんと踊ってたろ。なのに、ミキちゃんに手を出すなんて』
マヤとは恐らく王女殿下のことだろう。彼女以外とは踊っていないから。
まさか、ファーストダンスを申し込まれるとは思わなかった。
『ミキちゃんは僕のだ。う、生まれる前からそう決まってる。う、運命なんだ』
『ただ、公爵家当主になりたいだけだろ。男爵令息如きが。王女殿下に何を言われたか知らないけどな、お前にやるつもりはない』
大体、好きだなんだとほざきながら名前を間違えるってどういうことだ?それともただの人違いか?だとしても身分を考えて諦めのが常識だろ。
『お、お前らと同じにするな。ぼ、僕たちは愛し合ってるんだ』
『気持ち悪りぃなぁ』
『本性を隠して、僕のミキちゃんを騙そうとしてるお前に言われたくはギャアァっ』
腕を一本飛ばした。それだけなのに涙と涎で顔がぐちゃぐちゃだ。
さっきまであんなに威勢が良かったのに、口をぱくぱくするだけで何も言えないようだ。
『所詮は男爵だ。息子一人消えたところで、血眼になって探しても見つからなと分かれば諦めざるを得ないだろう。誰を敵に回したか、お前の父親はお前よりもよぉ〜く、分かってるからな』
言葉になっていない言葉を出すだけの男に俺は身の程を解らせてやった。最も理解する前に死ぬだろうけど。
「あら、マクミラン」
「レイファではないですか。奇遇ですね。今からお茶会ですか?」
「ええ」
ああ、いけない。
変な話をしていたから要らぬことを思い出してしまった。ちゃんと彼女の前では平凡なマクミランを演じなければ。
「良ければ、マクミランも参加されますか?」
「よろしいのですか?」
帰って父に報告することができたけど、せっかくのお誘いだし後回しでも問題はないか。
それに参加した方が報告内容も増えるかもしれない。
「ぜひ」
「では、喜んで。エスコートさせてください」




