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04 ドキドキのティータイム

「皆様、こちらが左からレディグレース、レディセーラ、レディジェーンの3名です。わがアマリリスの誇る成績トップ3の優秀な淑女ですのよ」


 昼下がりの大広間で、優秀な3名の娘たちは居心地が悪そうだ。


「そしてレディたち。こちらの殿方がチェスター卿、ロングレイル卿、ウォーレン卿のお三方です。皆様はここを卒業したらそれぞれ婚約式を迎えられることになりますね。おめでたいことです。さて、わが国では貴族は婚約式までお相手と会うことがないことも多く、みなさんもその例に漏れずという状態でしたが、私、それでは授業のモチベーションが……いえいえ、式までのときめきが足りないと考えました! そこで、今回各ご家庭と打ち合わせの結果、お顔合わせの場を設けましたの。ああ。チェスター卿だけはもう昨日お勉強中のグレースと対面は終わらせてらっしゃいましたね。婚約式はまだ先と言っても、もう皆様方は貴族家庭庁に婚約者としての届は済ませておられます。ささ、みなさまそれぞれのお相手としばしご歓談あそばせ」


 校長はにこやかに給仕に合図を送り、広間の3つの丸テーブルにそれぞれお茶とお菓子を用意させた。


「ごゆっくり」

 校長が広間を出ていき、歓談タイムのはじまりだ。 


      

 〜遡ること8時間前〜


 きちんとした学習予定表がないこのアマリリスでは、日々校長の朝の一言によってその日の実技授業が生徒たちに知らされていた。

 7名の脱落者が出た今朝も校長がお通夜状態の全校生徒(3名)を前にして朝食時に予定を報せた。ちなみにその3名とはグレース、グレースが最初に友達になったセーラ、委員長タイプのジェーンだ。


「皆さん、今日はみなさんのそれぞれの婚約者、チェスター卿、ロングレイル卿、ウォーレン卿を学校にお招きしています。ああ。グレースのお相手のチェスター卿は遠方からなので昨日もういらしているわね。あなたの勤勉さをお見せできてなによりでした。入学時からこれはカリキュラムに組み込まれていたのだけど、前もってお話したら浮ついた気持ちになってお勉強がおろそかになるやもと考え、話しませんでした。私はこれから正門に立ち、逐電した7名の生徒の婚約者が来たら追い返さなくてはなりません。おや、グレースなんです?」


「先生、私チェスター卿に合わせる顔がありません! 穴があったら入りたい!」


「今から3時間なら入ってよろしい。トラップ穴がたくさんあってよかったですね。……泣いているの?」


「穴は例えに決まってるじゃないですかっ……。なっ泣きたくもなります……! うぐっうぐっ……だってだってこれは破談になるでしょう? 伯爵家はどうなりますか? 弟は10歳です。あの子は伯爵を継げますか? ひっくひっく……。あっ! 私まさかお手打ちに…?」


「お手打ちにはならないと思いますよ。伯爵家もどうにもならないと思いますよ。弟さんは伯爵を継げると思いますよ」


「思いますよじゃ嫌ですぅぅぅぅわあ~ん」


「グレース! しっかりして」「泣かないでグレース」


セーラとジェーンも泣きながらグレースの肩を抱く。


「さあ、泣き止みなさい。皆さんは今日午後のお茶の時間をそれぞれの婚約者と過ごすのです。1か月の学校生活の成果をここでお見せするのですよ。グレースは目を冷やして! セーラもジェーンも化粧しなさい。」


 部屋を出かかって振り向いた校長は振り向いて娘達に忠告した。

「あ。今日は体育着ではなくドレス着用のこと」


 そりゃそうだろう。しかし学校生活の成果……。一体、何を見せたらいいのか3人娘はわからなかった。



 ~~~  

       

 そして、今3人の娘たちは令嬢らしいドレスに身を包み婚約者とペアになり3つのそれぞれのテーブルに着いている。

 どのテーブルも緊張の空気をただよわせていたが、その中でも1番緊迫した香りを醸し出しているのはグレース、チェスターペアだ。


「あの……チェスター卿、きのうは申し訳ありませんでした。どこかおけがはありませんか? 本当に本当にすみません。あのあの私、あなたがあそこをお通りになることを知りませんでしたの。あなただけでなくあそこを人が通ることを知りませんでした。あ、でもでも校長先生には黄色テープの内側にトラップを仕掛けろと言われていたのに外側にも作ってしまったのは私ですし、やっぱり私が悪かったのは間違いなく、でも軍人で鍛えていらっしゃるあなたではなく、もしきのこを採りに来た母親が落ちたら大けがをしていたかもしれないのでやっぱりあなたでよかったといいますか、よくないですね。よくないです。本当にごめんなさい」


「レディ」


「あの、それでですね。私の弟は10歳でして、姉の私が言うのもなんですが、賢くて素直でこれは10年も経てば王国の立派な家臣としてお役に立てると思いまして、それがいま私の失態で伯爵家が断絶となりますとこれはもう国家の損失というか、ダミエ公爵家としても、『あ〜。あの時にローゼブレイド断絶にしちゃったのまずかったなー』とかきっと後悔なさると思うのです」


「レディ」


「私との婚約解消はもちろんなのですが」


「しません」


「え?」


「婚約解消なんて思ってもいません。もちろんご実家に何か起こることもありえません。」


「え?え?え?」


「王国軍人なのに3連続で罠に落ちた自分を恥じているのです……。できればもうその話は勘弁していただきたく……」


「ではでは。私との縁談はそのまま……?」


「もちろんです」


 その時ドアが開き、校長が広間に入ってきた。


「はい。ご歓談タイムは修了です。なんです? まだ5分も経っていない? 上級貴族たるもの5分で相手の人となりを知るのは当然のこと! それよりも今日婚約者の皆さんをここにお呼びしたのはお嬢様方の授業を一緒に受けていただくためなのです! 共に協力しあい困難に打ち勝つ! なんという美しい姿でしょう!」


 上級貴族が5分で相手の人となりを知らねばならないのはよくわからなかったが、婚約者のチェスター卿たちが気の毒なことに巻き込まれるのはグレースにはよくわかった。


「お気の毒なチェスター卿……、でも婚約解消されなくてよかった。お家取り潰されなくてよかったわ……」


 校長は高らかに叫んだ。


「さあ!これからお顔合わせ後初めての共同作業が始まります!」














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