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10 足元にご用心

 アンドリューが王立ユーチャリス花嫁学校に着いたのは夕暮れ前だった。

 

 あの強盗騒ぎから2か月近く経過している花嫁学校は表の学校の名称プレート以外は何も変わっていないように見える。守衛に一言断って中に入ろうと思ったが、なぜか守衛室はもぬけの殻。学校の外に配置されているという10名の兵士たちも見当たらない。だが、門扉の中すぐのところに背の高い令嬢の後ろ姿が見えた。


「失礼。レディ。来訪手続きをしたいのですが、守衛の居場所はご存じでしょうか?」


 くるりと振り向いたレディを見てアンドリューは驚愕した。


「お前……エリックか!?」


「少佐! わあ。迎えに来てくださったんですか? チェンジですね? 私チェンジですね?」


 エリックと呼ばれた令嬢の格好をした男は北方連隊から学校警備に駆り出された兵士だ。


「ねぎらいに来た。いや、みなまで言うな。察しは着く。校長に無茶ぶりされたな。おおかた密室殺人事件や強盗団乱入事件あたりを設定されて、令嬢役を振り当てられたんだろう」


「違います。今回のは【国家転覆をたくらむ集団に王都に行く途中にあるわが城を襲撃されたけど殿方が遠征に出ていてさあ大変、塔の鐘を鳴らして近在の軍に危機を知らせるのが奥方の務め授業】で、私はモブの令嬢役です。なんたって、男性が一人もいない城という設定なので」 


 カ~ンカ~ンカンカンカンカン


 その時澄んだ鐘の音が鳴り響いた。


「あっ! レディグレースです! レディグレースが1等ですね。お三名とも鳴らし方が別に振り当てられているんです。少佐おめでとうございます」


「ありがとう。移動の件は上申しておくよ」


「よろしくお願いします~。あ! 少佐ちょっとちょっと! ああ……行っちゃったよ。塔の上に行くんだろうな……。あの強盗騒ぎ以来、庭だけじゃなく館の中もいろいろトラップ仕掛けられてるんだけど大丈夫かな。まああれだな! ユーチャリスの鬼神だもんな。がんばれ! 少佐!」


エリックは庭のトラップをよけながら走る上官の背中に声援を送った。


「ふふん! 同じ轍は踏まぬよ」

 アンドリューは軽やかに庭のトラップをよけていき、本館の西側にある塔の中へと入っていった。この塔は3連の尖塔になっていて鐘のあるのは中央の1番高い塔だ。高い塔を最初から上がっていっても、両側のどちらかの塔からあがって最後に渡り廊下で移動してもどちらからでも行けそうだ。アンドリューは最初から真ん中の塔のらせん階段を使った。建物で考えると30階建てぐらいの高さになるだろうか、かなり上がっていったところで上から声が聞こえてきた。


「グレース、本当にすごいわ。おめでとう。あなたここのところなにもかも1等賞よね!」

「すばらしいです! グレースが同級生で誇りに思います!」


「うれしい! ありがとう、みんな。私ね、アンドリュー様がお留守の時も城を守れる立派な奥方になりたくて……。それだけなの。でも生意気なことを手紙に書いてしまって、どうなるかわからないのだけど」


 グレースだ!

 アンドリューは胸は早鐘を打つように鳴り響く。階段を上がる歩はここに来てさらに早くなった。

 そう、足元を注意しないほどに……。


「グレース!!!!」


 カチッ

(え? カチッ?)


 明らかに踏みごたえの違う段に足を置いたとたんアンドリューの身体は宙を舞った。 

 舞った後揺れた。

 左右に揺れた。

ダミエ公爵家の長子、未来のダミエ公爵となるチェスター卿アンドリューは人生二度目の吊り網トラップにかかったのだ。


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