お中世ラブロマンスの破滅する悪役で意地悪な妹に転生したので、謙虚堅実に生きることにしました~本来破滅するはずの私が溺愛されて、主役の姉がなんか破滅してるんですが、知りません~
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「カレンデュラ゠フォン゠デュマ! 貴様との婚約を破棄させて貰う!」
学園の卒業パーティにて、この国の王太子アルバート様は、カレンデュラ【姉様】に向かって、そう言い放つ。
「やっときた……ここまで長かった……でも……もう少しだ……!」
と、カレンデュラお姉様は、俯いて笑いを堪えている。
とてもじゃあないが、婚約破棄されて、ショックを受けてる主役の顔をしていない。
「どうしてですの!? わたくしが、婚約破棄されるだなんてっ!?」
と、一転して、カレンデュラお姉様は悲劇のヒロインっぷり(お見事)を披露しながら言う。
しかし……お姉様。顔のにやけっぷりが隠せてないですよ?
「僕は……真実の愛に気づいたんだ! カルカ! おいで!」
…………………………はい?
アルバート王太子が私を見つめる。
いや、まあ。原作ではこうなるけど?
でも、こうならないように、立ち回って来たつもりだったんだけど?
「カルカですって!? どうしてわたくしの妹と!? いつの間に!?」
お姉様は原作通りの展開に歓喜してるのか、にちゃあ……と嫌な笑みを浮かべる。
一方で、私は冷や汗をかいていた。
どうしてこうなった……?
「カルカ! おいで!」
そのときである。
「待て……!」
私たちの間に、一人の男がやってくる。
青髪の美青年。
「きたぁ……! マデューカス帝国第三皇子アクアマリン゠フォン゠マデューカス様!」
……と、大興奮の姉、もとい、姉に【入ってる人】。
そう、原作では、婚約破棄されたカレンデュラの元に、颯爽と現れて、アクアマリン様が助ける……。
それが、原作の展開だ。
「カルカは、俺の嫁だ……!」
「そうそう、カルカは……って、え、ええええええ!?」
驚く姉様。
無理もない、原作では、違う展開をなぞっているのだから。
★
私、広丘 良子は転生者だ。
その事実に気づいたのは、私が5歳の時のこと。
高熱を出した翌日に、私は唐突に、前世を思い出したのである。
私がいるのは、「虐げられていた私のほうが真の聖女でした。妹は破滅しましたが、私には関係ありません」の、世界。
タイトルからわかる通り、昨今流行の中世ラブロマンス小説、その小説を元として作られた漫画の世界だった。
内容はタイトルの通り。
作品の主役カレンデュラは、幼い頃に母親を失ってしまう。
父親が連れてきた継母と、義妹に毎日虐められる日々。
継母と父は元々恋人同士だったのだが、祖母に結婚を大反対され、別れることになった。
こうして新しい女と付き合い、生まれたのがカレンデュラ。
でもその後母親が死亡し、新しい妻として継母と義妹が家にやってくる。
大反対された祖母に似ているカレンデュラは、父、継母、そして……義妹から虐められる日々。
カレンデュラには本来、大いなる聖女の力が備わっていた。
けれど周りから否定されて育ったせいで、自分に力がある自覚がなく育った。
一方、義妹にもカレンデュラほどではないけど、聖女の才能があった。
けれど義妹はその力を伸ばすことよりも、姉を虐めることに心を砕いた。
そんなある日、デュマ家に婚約話がやってくる。
姉であるカレンデュラと、この国の王太子アルバート様だ。
役立たずと見下されていた姉が、王太子と結婚することになるのが、ムカついた義妹は、姉を陥れようと決意。
義妹は姉の悪評を流し、王太子に取り入ろうと色仕掛けをする。
その結果、卒業パーティでカレンデュラは婚約破棄される。
しかしイケメンの隣国皇子に、その聖女の力を見込まれて、隣の国に連れてかれる。
そしてほどなくして、カレンデュラには聖女の素晴らしい力があることが判明。
一方、カレンデュラを虐めていた義妹は破滅することになる……。
以上が、「虐げられていた私のほうが真の聖女でした。妹は破滅しましたが、私には関係ありません」のストーリーだ。
で、私はその主役カレンデュラを虐める、嫌な女、カルカとして転生したという次第だ。
……当然、いやだった。
破滅なんてまっぴらごめんだ。
なので、私は破滅しないように振る舞うことにした。
まあ、と言ってもやったことはシンプルだ。
1.敵を作らない
2.婚約破棄された後も生きていけるように、力を鍛える
3.蓄えをする
以上。
それだけ。で、気づけば「虐げられていた私のほうが真の聖女でした。妹は破滅しましたが、私には関係ありません」の本編時間軸となり、婚約破棄されて終わる……はずだったのに。
どうしてこうなった。
★
「あ、アクア様! な、何をバカなことをおっしゃってるのですのっ!?」
カレンデュラが焦った調子で、アクアマリン様に詰め寄る。
まあ、気持ちはわかる。
「虐げられていた私のほうが真の聖女でした。妹は破滅しましたが、私には関係ありません」では、ここでカレンデュラは婚約破棄され、この皇子に拾われるはずだったのだ。
だというのに、彼が選んだのは、本編主人公ではなく……私。
「義妹がわたくしを虐めていた! それを……あなた様も見ていたのでしょう!?」
そう、原作では、ね。
「ああ、見ていたさ」
「ほらぁ……!」
「カレンデュラ、君の……悪行をね」
「あ、あ、悪行……? わたくしが? いつ?」
アクアマリン様が、アルバート様を見やる。
「平民を見下し、虐めていた。僕やアルバートといった、【特定の人物】以外の貴族に対して、無礼を働いていた」
「あ、いや……だって……本編と、関係ない【キャラ】なんて、どうでもいいじゃんって……」
……さて。
一つ、言ってなかったことがある。
それは、この「虐げられていた私のほうが真の聖女でした。妹は破滅しましたが、私には関係ありません」の世界に転生した人物が、どうやら私一人じゃあなかったってことに。
今カレンデュラに入ってるのは、どうやら私と同じで、この作品を知ってる人物、らしい。
そう、そいつは「虐げられていた私のほうが真の聖女でした。妹は破滅しましたが、私には関係ありません」の展開を知っていた。
だから、自分が最終的に、イケメンとくっついて幸せになることを、知っていた。
だから、何もしなかったのだ。何もせずとも、かっこいい隣国の皇子とともに、幸せな暮らしができるのだから。
でも……私は違う。
この作品の顛末を、知っていた。だから……私は破滅しても大丈夫なように、備えていたのだ。
貴女と違って。カレンデュラの中の人。
「僕とカレンデュラの婚約破棄に、反対のものはいるかい?」
とアルバート王太子が周りに尋ねる。
だが、誰一人として、反対の声が上がらない。
むしろ、そうなって当然とばかりに、カレンデュラ(の中の人)に向けて、冷ややかな目を向けている。
「こ、こんな展開聞いてない! おかしいじゃないのよ!? ざまぁされるのは、私を虐めてたカルカでしょぉお!?」
と、言うけど……。
「お姉様」
「なによぉお!?」
「私、別にあなたを虐めてないです」
カレンデュラを虐めていたカルカと、目の前にいる私は、別人なのだ。
「そうでしょう?」
「た、確かに……そうだけど」
「あなたが婚約破棄されたのは、単純に、あなたの愚かな振る舞いが招いた結果です。甘んじて受け入れてください」
「ぐ、ぢ、くしょぉお……!」
とても淑女とは思えない声を上げるカレンデュラお姉様。
まあ、これにて悲劇は回避できた……わけだけど。
「カルカ」
ぎゅっ、とアルバート王太子が私を抱きしめる。
「私を、真実の愛に目覚めさせてくれた、愛しい人よ」
「おいおい、カルカは俺の女だ。おまえの婚約者はそこのポンコツクソ女だろう?」
ポンコツクソ女って……。酷い言い草。
まあ、事実そうなんだけども。
「カルカは僕のだ」
「いいや、俺のだ!」
「「どっちと付き合う!?」」
……私の答えは、最初から決まってる。
「どっちとも、付き合いません」
「はぁああ!? なによそれぇえええええええ!」
さっきまで落ち込んでいたお姉様が立ち上がり、私に詰め寄ってくる。
「どういうことなのよ!?」
「いえ、だから、別にこのお二人どちらとも付き合うつもりがないと」
「な!? わ、わたくしからキャラを奪ったくせに、付き合わないってどういうことなの!?」
「別に奪ってないです。あなたが自滅しただけでしょう? カレンデュラの、【中の人】」
「!?」
……あれ、もしかして。
この人……私も同様に、現実からこの漫画の世界に転生してきたのに、気づいてない……?
「か、カルカがこう言ってるのです! ねえ、アルバート殿下! わたくしと婚約いたしましょうよっ!」
私を突き飛ばし、王太子に詰め寄る愚かな姉、の中の人。
「僕は君と婚約するつもりはない。さっきもいったとおり、品位にかける君を王太子妃にするつもりはない」
「うぐ……! じゃ、じゃあアクアマリン様! わたくしを隣国に連れてってくださいまし!」
するとアクアマリン皇子は姉を見てフンッ、と鼻を鳴らす。
「貴様の、貴様の聖女としての実力はカス同然だ」
「か、カス……?」
「一方、カルカは元々持っていた力を、日々の努力でここまで大きく成長させた。俺が欲しいのは、実力派の聖女であった、おまえのような怠け者の聖女じゃあない」
はっきりと、中身を否定されて、大ショックを受けてるカレンデュラの中の人。
「ということで」
「カルカ」
「「僕(俺)と付き合ってくれ!」」
はあ……もう……。
なにが、ということで、なのだろう。
周りがなんと言おうと、私の答えは……最初から決まってるのだ。
「お断りします」
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