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その幼なじみ99パーセントの確率でバットエンドを的中させる、占い師だった。

作者: ぽんず
掲載日:2022/11/06


朝礼前のクラス。

「昨日のドラマみたー?ほんと!あの俳優ほんとうに押しなんだよね!!」


「ええーああいう顔が好みなのー?そういやさあ・・・これ見てよ!このコスメ!超かわいくない??」



陽キャが朝からワイワイガヤガヤと教室を賑やかにさせる。


私はこういった雰囲気がとても苦手だ。




一人でいたい。

一人で静かなところで。

誰もいないところで静かに暮らしたい。



「よお!!浦内!!」






義務教育というのはこういう煩わしい、他人のパーソナルスペースに入りこんでくるのも

いるのが嫌だ。



さっきの陽キャくらいならまだ我慢できる。

私のような人種を無視してくれるからだ。



暗い人間に見られていた方がいろいろと楽なのだ。


だから、髪色が自由な学校でも真っ黒の髪を長く伸ばして、

目元も片目だけ隠すようなアシンメトリーにしている。




両目を隠すと仕事に支障をきたしそうだから、一応視力低下を予防するためのものだ。





(早く・・・・夜にならないかな・・・・)




「おい!浦内!無視するなよ!!おはようって!!」




ああうざったい。こういう手合いはあまり無下にしていると

彼を目当てにしている陽キャの女どもに目をつけられてしまう。





「・・・・ああ。。おはよう。陰山くん。こんな私に挨拶すると・・・君もその変な人だと思うから。

構わないほうがいいと思うわ・・・・」




「相変わらず、暗いな。浦内は。」


「・・・・・私、眠いから寝る。」




机に伏せる。


必殺、陰キャの空き時間の過ごし方。

寝たふり。

眠い。

寝る。



これに尽きる。


朝から読書なんてしているからこういう手合いが声をかけてくるんだわ。





「浦内、昨日8時くらいには寝てただろ?部屋の明かり消えていたぜ。」






心臓がバクバクする。

確かに、昨日はお勤めがなかったから早く寝た。

夜の仕事は毎日やっているとさすがに疲労がたたるから完全週休二日制を自分でちゃんと作っている。

土日はよく客が入るから、働いているから平日を休みとしている。



というか陰山くん。




そういう家が近くてマジで昔から仲良くて毎晩、窓越しに話をしている

王道ラブコメな幼なじみですうー!みたいなアピールになるような

「お前、昨日早く寝てただろ?部屋の明かり消えていたぜ。」


みたいなことを教室で大声で言わないでほしいんだけど。







こういう時は、決まっている。

変に言い返すと陰山くん目当ての女子どもに目をつけられてしまうから。






「陰山くん、キモイんだけど。」



「うわあ!!!ショック!!俺と浦内の仲じゃないかよ!昔はよく夜空を一緒に見ながら話しをしたのに。」




ああ・・・やらかしてくれる。




この鈍感男は気づかないのだろう。




私はあなたから遠ざかろうとしているの。




でもあなたは、近づいてくる。



まじで勘弁してほしい。









「ちぇ・・・寝ちまったかよ。おらあ悲しいぜえ・・・・」







陰山光。


一応私の幼馴染なんだけど、それはもう遠い昔の話で、訳あって私は距離を取ろうとつとめている。

でもそれでも距離を縮めてくる。



スラっとしていて髪もさらさらななかなかなイケメンくんだけでなく、

ある事情でバイトをしながら通学している苦労人なのだ。



そんな頑張っている陰山君は非常に女の子から人気がある。

先輩や後輩、同学年の女の子にどのくらい告白されたのだろうか。



なんとなく聞く噂だけでもそれなりの美少女を振っていると聞いている。




だからだ。

私のような陰キャに構われると静かに穏やかに学生生活を過ごしたい身としては

結構めんどうくさいのだ。









「おい・・・・浦内?ちょっと面、貸してほしいんだけど・・・・」




顔をあげる。



髪が茶髪で長い。

スカートの丈も校則からはるかに短くしている。

すこし褐色肌で目はくりくりしているが、私に声をかけるくちもとからは八重歯が見え隠れしている。



胸の前で腕を組み偉そうにこちらを見ている。

胸元が張りがあって、容姿だけ見るととても女性的だ。





それでいてヤンキー的なノリな女。




落前子おとしまえこ




何度目だろうか。


面倒くさい女に絡まれた。











♦♦♦♦♦♦


「あんたさ・・・・わかってんの?陰山はさあ、そういうあんたを見て心配してやってんのにさ。

ていうかまた振られてんのみて嘲るわけ?ほら、あんたも泣いてばっかいないでなんか言ってやんな。」



毎回毎回、落は陰山くんに誰かが振られると最初にかぎつけて、


その女の子を連れてこうやって校舎裏に私を呼び出す。




落のとなりにいるのは・・・うーん、私より学年が下の子かな。



「浦内さんは!陰山くんのなんなの!!あんなに仲良くしておいて・・・うわあああん!!!」




泣いている女の子を見る。


(どこかで・・・見たことのある・・・?)


どこだっただろうか。

顔もかわいいし、胸もでかいしスタイルもいいのになんで陰山くんは振ったのだろうか。






「・・・・わたしは・・・べつに・・・・」



「なんなのよ!あなた!!陰山くんの!!」



襟をつかんでくる。

目が見開いて虚ろな感じだ。


瞳に光を感じない。


ああ、メンヘラ化している。



うん?この子・・・・・



♦♦♦♦♦♦

1週間前の夜。




「占い師さん!私、好きな男の子がいて!!でも告白して失敗したら・・・いやで・・・・どうしたら?」



赤羽の飲み屋街の入り口付近に路上占い師として陣取っていた時のことだ。

夜も活気なため、こうやって路上で占いをやっていると

いろんなお客に会う。



しかし、同い年くらいの女の子に会うのは初めてであった。


よく覚えている。

虚ろな目をしており、藁にも縋る思いで占いにきました!という感じだった。




「占いましょう。」



占った。

水晶に現れたイメージはこの子が振られる未来だった。

そんでもって振られた結果、なぜか落前子と一緒に今いるこの校舎裏で

私が詰められる未来まで予測できた。



なんとかこのバッドエンドというか。

うわあ、私、落さんにまた殴られるじゃん。


といったバッドエンドとしか思えない未来が映し出されていた。



(告白を阻止しないと。)




「えーー、、ああその人には好きな人がいるみたいで・・・うーん、あなたではないようだ。

悪いことは言わない。別の良き人を見つけ・・・・」




椅子に座っていた、その女の子はいきなり立ち上がると、

占い代金1000円をテーブルにたたきつけてどこかへ行ってしまった。



♦♦♦♦♦♦



もともとメンヘラ気質のある子だったか。

陰山くんも女の子は見る目があるんだなあ・・・・・。

そんな風に少し関心していると。





「あんたさ。いい加減にしなよ、陰山に気がないならそう言ってやんなって。被害者が増えるんだよ!!」




落が怒鳴り散らす。


なんでそこに私が陰山くんに気があるかどうかみたいな話が出てくるんだ。」




「・・・・・いや・・・・別に何もないです。私のこと怒鳴って、殴って気が済むならどうぞ・・・

私みたいな虫けらを相手にしている時間の方が・・・なんかごめんなさい。」





「てめ!!!」





頬から乾いた音がした。

落は息があがっていた。



体力はありそうな落がなぜ?


心なしか顔が赤いように見える。







(ははーん。)





この落前子。

いい人ぶっているように見えるけど・・・・・。

もしかしたら陰山君のこと好きなんじゃないだろうか。



振られるたびに必ずこの子が連れてくるし。

なぜか私が陰山くんをさっさと振るように促すし。


だとしたら、なんつうか、面倒くさい。




私は別に陰山くんの文字通り幼なじみだった人に過ぎないのだから。




♦♦♦♦♦♦


私が落さんに殴られた放課後。

今日は仕事の日だ。


占いは継続が大事だ。

どうにかいい未来を的中させられるようなそんな占い師にならなくてはならない。





赤羽の飲み屋街の入り口にテーブルとイス、水晶を用意して、

全身を紫のローブで身を包み、口元は鼻から胸元まであるマスクを垂らして顔ばれしないように

身なりを整える。






占い1回1000円。

高いのかもしれないが、こちらも商売だ。



酔っ払いに「ぼったくり!!」とののしられながら、占いの結果を伝えたことがある。





その人は確か、娘さんがいてその娘さんは同姓愛者らしく、そのことについて悩んでいたそうだ。

中年といった感じの男性で、八重歯が特徴的な人だった。





今時そんなことで悩むなよ、男女が恋に落ちるように男同士でも女同士でもいいじゃないかと

個人的には思っているので少し説教たれてやろうかと思った。



だけど、まあ一応お客さんだし。




水晶をかざすとその娘さんが同級生の女の子に振られたショックで

海外で性転換をする未来が見えた。






それをそのまま伝えると、「ぼったくり!!」とののしりながらお客さんは帰っていった。








そんなことを思い出しながら、座ってお客さんが来るのを待っていた。






♦♦♦♦♦♦

「あの!!」


「はっ、はい!!」




いかん。

少しうとうとしていた。


目の前には制服を着た女子高生が立っている。

また高校生か。





「う、占いをお願いします!!」


「わかりました。」



私は客の顔をろくにみることなく水晶に手をかざし、未来を占うことした。




「何を・・・・占えばいい?」


「私が・・・・・私が・・・結婚できるかどうかを知りたいです!」





今度の女子高生は結婚か。

全く恋だの愛だの忙しいもんだ。

こちらと日々、占いの研鑽で忙しいってのに。




水晶に手をかざす。

見えてくる。見えてくる。


この女子高生の未来は・・・・・










パイプオルガンの音が鳴り響く。


誰かと腕を組んでいる。

腕元を見ると、白い手袋のようなものを身に着けていた。

隣にいるのは・・・・顔にレースをかけている。花嫁か。



花嫁?

この人の恰好は・・・タキシード??

タキシードということは、花婿ではない・・・・。




え・・・?父親?


どういうことだろうか。女子高生だよな?この子。




水晶から顔をあげてお客の顔を見る。





思わず噴き出した。











髪が茶髪で長い。

スカートの丈も校則からはるかに短くしている。

すこし褐色肌で目はくりくりしているが、私に声をかけるくちもとからは八重歯が見え隠れしている。



胸の前で腕を組み偉そうにこちらを見ている。

胸元が張りがあって、容姿だけ見るととても女性的だ。





それでいてヤンキー的なノリの・・・・いつもそういつもとは違う女の子。




落前子おとしまえこ





落が顔を赤らめて周りをきょろきょろと見ながら、座っている。

そこにいるのはいつものヤンキーな感じの女の子ではなかった。









ただただ恋に恋焦がれている思春期の女の子だった。






♦♦♦♦♦♦



「ねえ!見た見た!!?昨日のニュース!!」


「すごかったよねえ。ってか、この服かわいくなーい?インフルエンサーが来てたんだけどさあ・・・・」









いつものように騒がしいクラス。

いつものようになりを潜めているのではあるが、いつもと違い心穏やかではない。




昨日の落のあの占いはなんだったのだろうか。




「よう!!浦内おはよう!!」




落は男の子なのか?


そればかり、頭が駆け巡る。



「浦内!おはようってば!!」




ああ、騒々しい。



「なに・・・・陰山くん。」



「だからおはようって。」



「わたしなんかに・・・・声をかけても・・・・変な噂立つだけだから・・・やめたほうがいいよ。」




そう吐き捨てて寝る振りをする。




「浦内。」



おでこの間に教科書を入れられる。

「痛い。とうとう私を・・・殺す気ですか・・・・」



「違う違う。どうしてそんなに俺を避ける?」



「・・・・私なんかに・・・構うといいことはありませんよ・・・・所詮虫けらですから・・・」



「質問に答えてくれ。どうしてそんなに俺を避ける?」




そんなことは。





聞かれても困る。






♦♦♦♦♦♦


浦内当うらないあたり


俺の幼なじみだ。



いつも教室の端っこで難しそうな本を読んでいる。



おはようと声をかけても、ネガティブな返ししかしてこない。



「わたしと関わらないほうがいい。」とか「虫けらですから」とかしか言わない。



昔はそんなことはなかったのに。






心当たりはある。

だけどそんなことは関係なかった。

俺の気持ちは・・・・・。







「陰山くん!!好きです!!付き合ってください!!」



まただ。

好きでもない相手から向けられる好意というのは非常に面倒くさい。

というのと、早くバイトに行かないといけない。





今月は割とピンチだ。

借金も返さなくてはならない。









「ごめんね!!俺、大事な人がいるから!!」



「え・・・・・」





全力ダッシュだ。

お金がとーーーっても必要だ。











土木作業は大変だ。夜間帯の仕事だからそれなりに稼げるのは、今の俺にとってはとても助かることだ。

赤羽はいつも陽気だ。


日本でも有数な飲み屋街があるからか、明かりが絶えない。

こんな風に飲める大人になれるといいなと横目でその空気を感じながら、歩く。



飲み屋街を抜けて、駅の方向へ歩こうとしたとき。





「あ・・・・・」


俺の幼なじみがいた。相変わらず夜ここで占い師として商いにいそしんでいるのか。

お客は・・・・あの制服はうちの高校か。




あいつにいつから占ってもらっていないだろうか。

(あんなことがあって・・・うしろめたさを感じているのだろうか。)






そんなことを感じる必要はないのに。


横目に見ながら、赤羽駅に向かう。




♦♦♦♦♦♦

翌日。



浦内はいつも通り、教室の隅っこで本を読んでいる。

あれは占いの本だ。



でも・・・なんだかいつもと違って集中していないように見える。



「おはよう、浦内。」



「・・・・。」



無視はいつも通り。

知っている。こいつが俺にこんな態度をとる理由。



でもそれは俺にとってそんなに大したことではないのだ。




「浦内。」



おでこの間に教科書を入れていつものように伏せるのを止める。



「痛い。とうとう私を・・・殺す気ですか・・・・」



「違う違う。どうしてそんなに俺を避ける?」



「・・・・私なんかに・・・構うといいことはありませんよ・・・・所詮虫けらですから・・・」



「質問に答えてくれ。どうしてそんなに俺を避ける?」




「そんなこと・・・」



「なあ・・・浦内。今夜、お前の占い屋に行っていいか?」


「・・・・っつ。私の占いなんて・・・・呪われますよ。」



「呪うくらいに、憎いのか・・・・?」




「うるさい!!!!」






教室が一気に静まり返る。


「おい・・・浦内・・・??」



「くっ・・・・!!!」




浦内は教室から走り出す。


それを追いかける。




♦♦♦♦♦♦


夜になってしまった。


浦内はどこにもいない。

今日は占い師をやっているはずなのに。




「参ったな・・・・俺も少し感情的になってしまった・・・」


探し回る。


どこにもいない。



「今日は・・・・帰るか。」




♦♦♦♦♦♦


翌朝。


登校する。

浦内は・・・・いないか。



自席に座る。

いや、座ろうとしたときだった。






「おい!!!陰山あぁぁぁぁぁぁ!!!ツラ貸せやああああ!!!!!」











「えっと・・・・どういうことでしょうか?」



落前子。

と校舎裏にいる1限前。


「あんた・・・・浦内に何をしたの・・・・?!」


「いや、何って・・・・・」


「あの子。学校来てないじゃない。あんたと言い合った昨日の朝のこと。まだ登校してなかったけど、

聞いたわよ。何をしたのよ!!あんた!!」



落前子って、浦内にいつも突っかかってなかったっけ?




なんでこんな剣幕なんだ?





「お前には・・・・関係ないだろう!?」


「関係ないって・・・・。あたしがどんな思いで!!」



「は・・・?どういうことだよ?」


「う・・・うるさい!!」



落はなぜか顔が赤い。




「と・・・ともかく!!浦内に何かあったら承知しないから!!!さっさと探すわよ!!!」




落そういって俺の腕を引っ張っていった。













♦♦♦♦♦♦

駅前だと、陰山くんにばれてしまうから赤羽の路地裏、

飲むのが目的の人以外は通らなさそうな通りを選んで1日中、占いをやっていた。






「呪うくらいに・・・・憎いか・・・・」






憎まれるのは私らの方なのに。

それでも話しかけてくる陰山くんに距離を置いているのは私だ。




私の母親は陰山くんのお父さんの会社のコンサルタントをやっていた。

どうも社長レベルになると占い師をコンサルタントに迎えるような発想が出てくるそうだ。




母は確かに学もあった。

占い師業だけでは食えていけないと、社会人スクールに通って経営学を学び経営コンサルタントになれるくらいの知見は得たようだった。

そんな中、陰山くんのお父さんは母をコンサルタントとして、自分の右腕として迎えた。



最初は好調だった。




母の占いで次々と大型案件を受注し、業績は拡大。

陰山くんのお父さんの会社のホールディングスの顧問になるくらいの影響力を持ち始めていた。

当然、株もそれなりにもっていたし、資本関係的にもかなり内部まで入り込んでいた。





しかしだ。

母は1つ致命的なミスを犯した。

それは、陰山くんのお父さんの死が占いで近いことを悟ってしまった。



CEOの死だ。

株価も当然一時的とはいえ下がるだろう。




母はCEOが変われば自分の食い扶持もなくなるだろう。

そう思い、株式を全部手放した。





それが運の尽きであった。





CEOは母が株を手放した翌週に病死。

すでに社内の幹部クラスには知らされていたことであった。


その為、死の目前で株を売り払った母にインサイダー取引の容疑がかかった。




母は捕まり、母が株を売った先もよくなかった。






ある投資会社の幹部の人間に株式を売ってしまったのだ。

そして、投資会社の人間は母から得た株をもとに会社を丸ごとのっとってしまった。





母は逮捕され、陰山くんは御曹司としての立場も失い、零落してしまった。









そんな母の子である私を恨んでいないはずがない。

だから私は陰山くんがああやって毎日明るく挨拶してくることに違和感を感じる。

当然、負い目もある。




だって・・・・陰山くんは今、自分でバイトして自分で稼いで学費をねん出している。



本当はそんなことする必要がないのに・・・・・。




私は自分の運命を呪った。

それでも浦内家の家業は引き継がねばならなかった。



こうやっていつ帰るかわからない母を待ちながら、占い師を続けている。









ただ、私は母が捕まっていらい、他人のよくない未来ばかりを見るようになってしまった。




幸せな未来を占うことができない。

占いで人を不幸にしてしまう。





それはやはり占いで陰山くんを追いやった母と同じ血筋だからではないだろうか。





「醜い・・・・」



そう醜い。

この水晶も、母から引き継いだこの衣装も、体内に流れている母の血も。

何もかも。











「浦内。」




私は・・・・汚い。



「浦内、ここにいたのか。」



「え・・・?」




目の前には陰山くんがいた。









♦♦♦♦♦♦



「えっと・・・・」


「なあ浦内。お前はずっと俺を避けているよな。」



「・・・・・占いは1回1000円です。」





しらを切る。

浦内当ではなく、ただのどこの馬の骨かもわからない占い師を演じる。


「はあ・・・・面倒くせ。じゃあ占ってくれよ。」



「はい。何を占いましょうか??」




水晶に手をかざす。

全身が一気に血が巡り、熱くなる。


ここはなんとかしてやり過ごすんだ。



私は占い師だ。

プロだ。



目の前のお客さんの要望に従うだけ。





陰山くんを一瞥する。




陰山くんはため息をつき、目を閉じる。

そして口を開いた。






「俺は、今の自分の生活に満足している。自分の足で金を稼ぎ、汗水たらして生きている。親父の会社があった時に比べるとたくましくなったような気がするさ。

でもな1つ満足していないことがある。それはな、幼なじみとの関係だ。そいつは家業が占い師らしくてな。家業ってだけでずっと血筋や技術を絶やさないように

頑張れるやつなんだ。そいつも自分の足で金を稼いでいる。しかも自分の得意なことでだ。俺はそんなあいつの姿がきれいで憧れていて・・・・でもそいつは

親がやったことに対して引け目を感じているみたいで。俺の大切な幼なじみなんだ。なんなら俺はそいつとこの先の人生を歩んでいきたいと考えている。

でもそれはそいつの気持ちがなければなされないことだ。そこでだ、占い師さんにお願いがある。そいつと俺との未来を占ってくれ。」











そのセリフを聞き終わるころには、額からだらだらと汗が噴き出ていた。

顔が熱い。

全身の血という血が高速で巡るのがわかる。


心臓の音がよく聞こえる。




「ああ・・・占い・・・ましょう。」



なんでこんな。私のことを恨んでいると思っていたのに。

陰山くんは全くそんなことなくて、

なんなら私のことをとても思ってくれていて。

こんなにまっすぐに気持ちをぶつけてくれるのならば・・・・









水晶に手をかざす。

お母さんが捕まってから占った人の暗い未来しか描けなかった私のイメージは

陰山くんを占うことで何かかわるのだろうか。





彼との未来は

明るいのだろうか。





手が震える。

どうか。

私が見たい未来を

水晶に映し出して・・・・・・・・・・





















♦♦♦♦♦♦

夏が終わり、秋が過ぎ去り冬を超えて、春になった。




私らは高校3年生になった。




「おう!浦内!おはよう!!」


「・・・・・」


「相変わらず無視かよ。連れねえなあ・・・」






春は眠気が強い。

惰眠をむさぼりたい気分だ。



桜がとてもきれいだ。


桜並木に2人だけ。




「・・・私なんかと関わってもろくなことないよ・・・虫けらだから。」



「そう卑下すんなって・・・・俺はそんな浦内が好きなんだからさ。」





思わず吹き出す。



「うわっ!大丈夫かよ!!」



歩きながら飲んでいたコーヒーがすべて桜の絨毯を黒く染めた。




あの衝撃的な告白から、陰山くんはずっとこんな感じだ。





私らの関係はなんとも微妙な感じだ。

彼からの告白に対して私は何も返事をしてないし、陰山くんも正式にお付き合いしてくださいとはいってこない。




「なあ・・・そういや最近、落みないよな・・・・」


「・・・・うん・・・・海外留学だって・・・」






落前子。


彼女との関係は少し変化があった。










♦♦♦♦♦♦


陰山くんを占った翌朝、

私は普通に学校に行った。



すると、落がまた呼び出してきた。






校舎裏。


その日は、落だけだった。




「なんで・・・しょうか。」



「あんたこの2日どこいってたの。」


「え・・・いや別に・・・・そんな」



「心配したの。」



「え・・・?」


「あんたに何かあったらと思って!!心配していたの!!」



「なんで・・・私なんか・・・・心配するだけ時間の無駄ですよ・・・・」



「だから!!あんたがいないと私が心配するの!!ああじれったい!!この際だから言うけどね!!陰山君のこと好きじゃないのなら!!私と付き合いなさいよ!!

私くらいでしょ?こうやって心配してあげられるの!!」



「は・・・付き合うって・・・・」



「だーかーらー!!!ああ鈍いわね!!私は女の子が好きで!あんたのことが大好きなの!!」



「あーーーーーーーーー・・・・・・」





だからか。

陰山くんに気がないならとか、さっさと振ってあげなさいとか、

いちいち陰山くんにふられた女の子捕まえて、陰山くんが私のこと好きなのかどうか調べて・・・・・。





でもなんでいちいち殴られなければいけなかったかはよくわからないけど・・・・





そういや、前に「ぼったくり」とクレームいれていたおっさん。

八重歯が特徴的だったな。

そして落も八重歯が特徴的。

なんなら目元が似ている。





あのおっさん、落のお父さんだったのかな・・・・。







「えっと・・・・まずは私の恋愛対象に同姓は入っていないの・・・。」



「え・・・・・。」


「あとね。殴ってくる人はちょっといや。」



「・・・・え・・・あいや・・・・・」



「ごめんなさい。」




「殴ったのは悪かった!!謝る!!ごめんなさい!!」



土下座をされた。

少し対応に困る。




「えっと・・・・・まあいいんだけど・・・・男の人が恋愛対象だから・・・・」



「わかった!!男ならいいんだな!!よし頑張って男になるから!!」



「えっと・・・・どうやって?」


「海外でもいけばなんとかなるだろ?よーし、じゃあ金貯めて・・・それから・・・」



「海外って・・・・・お父さんはこのことは知ってんの・・・?」



「親父?なんで・・・親父のことを知っている!!親父だけなんだよ!未成年だから性転換手術も親の同意が必要みたいで・・・」









ああ・・・・。

やっぱりあのおっさんは落のお父さんだったか。




♦♦♦♦♦♦


無事、お父さんの理解を得たのだろうか。

海外留学しながら落は見た目も男性になって帰ってくるのだろう。











えっと・・・・・だとしたら・・・・


「あ・・・・。」




落の占い結果。


落はタキシードを着ていた。

隣にはたぶん自分の娘さん?







だとしたら落は男性として誰かと結婚して・・・お父さんになるのだろうか。




「なあ・・・・浦内。」





ぼーっと物思いにふけっているところ、視線を遮られる。

陰山くんの顔が近い。



「うわ・・・・・わたし顔なんて見ても・・・・近くに見られると・・・・ニキビとか・・・・うつるよ。」




「浦内の顔ならどんな顔でもずっと見ていられるけど?」






私はすでにゆでだこ状態であった。

あれ以来、甘ったるいように求愛をしてくる陰山くん。





私はいつまで彼のそんな求愛に耐えられるだろうか。

私は彼と結ばれていいのかわからない。



私は母の逮捕以来、ずっとその人のネガティブな未来しか占うことができなかった。


そう他人の未来であれば・・・・の話だ。






彼との未来を占うというのは

自分の未来を占うことでもあった。









水晶には何も映らなかったのだ。


だから、私はどんなバッドエンドが待ち受けているかわからないこの状態で彼と付き合っていいのか

わからなかった。




彼を不幸にしてしまうのが怖いと感じた。

だから今のこうやって微妙な関係を続けていた。



そのことは彼に内緒だ。




でも・・・・



時間の問題な気がする。









「浦内みろよ!!めちゃくちゃこの桜並木きれいだな!!!」




そうやって私にはにかみながら話す彼に


すでに心をわしづかみにされていたから。









桜が舞い散る。

占いがどうであれ、どんな未来が私らを襲うか、それもわからない。




でも今日、桜がきれいで空が青くて・・・・


そんな今この瞬間の幸せに




浸かってもいいのではないかと占い師らしくはないが思い始めていた。

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