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37.元男性の膝枕

「女性の着替えには時間がかかるというが、いつまで経っても誰も戻ってこないな」


 まさか女になったとはいえ、爺さんの着替えで三時間以上かかるとは思わなかった。

 何を手間取っているのだろう。

 外は暗かったのにすっかり明るくなっていた。


「こんなに戻らないなら柘榴シーリオをおかずにできたな」


 声や性格はともかくとして、見た目は理想の女性なのだ。

 二次元の姿絵とは比べ物にならないインパクトだった。


 脳裏にはまだ柘榴シーリオのあられもない姿が焼きついている。

 ちょっともったいなかったかなと思った。


「ふわぁ、寝直すか」


 七龍チーロンが理想の女性の姿になった衝撃は大きかったが、睡眠不足で放置されれば目蓋も重くなってくる。


「んっ、何だよ。もう少し寝かせてくれ」


 寝直しておそらく一時間くらいした頃だろうか。

 ユサユサと布団の上から体を揺さぶられた。


 仕方なく薄目を開くと、赤い二つの山が目に飛びこんできた。

 大迫力の山脈だ。一気に目が覚めた。


「うわわ!」


 柘榴シーリオが軽く動くだけで大きな山が上下に揺れる。

 露出の高い赤い服を着ているとはいえ、ブラジャーは着けてないみたいだ。


「そのまま服を着てしまうと胸が擦れてしまうのぅ。これは盲点じゃったな」


 爺さんの渋い声を聞くと興奮は下がったが、まだ心臓はドキドキしていた。


「お兄ちゃん、服は私が縫ったの。自信作だよ」


 ずっと戻ってこなかったのは、ロココが柘榴シーリオの服を手縫いしていたからだった。

 それなら時間がかかって当然だろう。


「お、おう、驚いた。さすがはロココだ」


 ロココが頑張ったんだよという顔をしたので、頭を撫でて褒めてやる。

 三角の耳が気持ち良さそうにピクピクと揺れていた。

 サラサラの銀の髪を触っていると、少しは心が落ち着いてきた。


「それはチャイナ服なのか?」


「うむ。お主が好きそうだと思ってロココに頼んだのじゃ」


「くっ、爺さんにブックマークをしたサイトを見られていたとは」


 大人しく音楽を聞いていたと思ったのに油断できない爺さんだ。

 爺さんにエロ画像サイトを見られても気にしないはずが、見た目が美人だと妙に気恥ずかしくなってしまう。


「ワシは永遠の十七歳の乙女じゃぞ」


 俺が爺さんと言うと、柘榴シーリオは不満そうに言い返してきた。

 決め台詞を変えたみたいだが、千歳の爺さんが乙女なんてよく名乗れると呆れてしまう。

 だが、それに見合う美貌はあるので否定もできない。


「それでワシがチャイナ服を着てみた感想はどうじゃ?」


「くそ! もう最高に決まっているだろ」


 挑発的な笑みを向けられて俺は降参した。

 エロ画像とは違って生身は視覚に訴える力が桁違いだ。

 ムチムチの太ももを遠慮なく見られるチャイナ服なんて素晴らし過ぎる。


 剥き出しになった艶かしい太股からキュッと引き締まったふくらはぎが伸びている。

 俺よりも小さくなった足には、桜貝のように可愛らしい爪が生えていた。


 柘榴シーリオのチャイナ服は現実ではありえないほど裾が短い。

 パンツなんて今にも見えそうだ。

 男の下心を刺激しまくりだ。


「でも、そんな恰好をして冷えないのかよ。その、女性は体を冷やしてはいけないというしさ」


 艶やかな曲線を描く肩まで露出していた。

 冬なのに寒そうだ。


 俺としてはもちろん嬉しいが、心臓の鼓動が忙しいことになる。

 もう少し肌色を隠して欲しいと思わぬでもない。


「そんな心配をしてくれるとは思わなかったのぅ。くすぐったい気持ちになるわ。気功術で体を温めておるから、どんな格好をしても平気じゃよ」


「どんな格好でも!?」


 いけない妄想が際限なく頭に広がって鼻の奥が熱くなった。

 バニーガール、ビキニ、ベビードール。

 柘榴シーリオのあられもない姿が思い浮かんだ。


「お主が望むなら着ないという選択肢もあるというわけじゃ」


「いやいや、それは俺の心臓がもたない」


 枯れた渋い声が伝わってくるから、どうにか興奮を抑えられるのだ。

 これが肌色一色になったら理性がどうなるかわからない。


「お主は相変わらず奥手じゃなぁ。そんなところも愛おしくはあるが」


 喉の奥を震わせて柘榴シーリオが楽しそうに笑う。


「むぅ、あと三年、お兄ちゃんが頑張ってくれるかなぁ」


「アニキのあの様子だと難しいかもね」


「だよねぇ」


 柘榴シーリオに振り回される俺を見て、ロココが心配そうに呟いた。


 もう寝れそうになかったので、台所にいるラピィの方を向いて朝食ができるのを待っていた。

 柘榴シーリオのことを意識すると無駄に疲れてしまいそうだ。

 その点、女装をしている腐ったドワーフなら安心できる。


「アニキの視線をやけに感じるよ。さてはオイラの魅力に気づいたんだね」


「いや太ったなと思って」


「アニキったらひでぇ。ちょっと体に丸みが出ただけだよ」


「それを太ったというんじゃないのか」


 スカートを押し上げる尻の盛り上がりは以前より膨らみが増したようだった。

 丸くなった尻がたまに揺れる。

 妙な色気が出ていて、何となく目が離れなかった。


 朝食ができたので四人でコタツを囲む。

 見た目の男女比が偏っていて変な感じだ。


「男臭いパーティだったはずなのになぁ」


 慣れない光景にため息が出る。

 男だけの方が気楽ではあった。

 ラピィは女装しているので俺一人だけが男みたいだった。


 朝食を食べて腹がいっぱいになると欠伸が出た。

 やはり夜に起こされて睡眠不足だ。


「ワシが膝枕をしても良いぞ。男の夢なのだろう」


 余計な知識をどこから仕入れてくるのだろう。

 確かにムッチリとした太ももには逆らえない魅力がある。

 まだ肉づきの薄いロココでは俺の重い頭を乗せるのは難しい。


「オイラがやってもいいよ」


「却下」


 何が悲しくて男に膝枕をしてもらわなきゃいかんのだ。


「ひっでぇ。オイラ心だけなら柘榴シーリオより乙女のつもりなのに」


「気色悪い冗談を抜かすな」


 ラピィが両方の拳を口に当ててぶりっ子の真似をしたので、太ももをペシッと叩く。

 思ったよりは適度に脂肪が乗って、寝心地は悪くはなさそうだった。


「ほれほれ、遠慮は無用じゃぞ」


 正座をした柘榴シーリオがポンポンと太ももを叩くと、魅惑的な肉が揺れた。


「試すだけなら」


 爺さんの膝だと思うとためらってしまうが、瑞々しい太股は味わってみたい。

 ちょっとだけと思って片膝に頭を乗せてみた。


「こ、これは……」


 頭を支える適度な弾力と血の通った温かさ。

 いい匂いのする肌が心身をリラックスさせる。


 頭から蕩けてしまいそうだ。

 最高に危険な枕だった。

 中身が爺さんだとわかっていても睡魔に身を委ねたくなる。


「ふわぁ、母様の膝で寝ているみたい」


 もう一方の膝にはロココが頭を乗せていた。

 スリスリと頬を太ももに擦りつけて幸せそうな顔をしている。


 俺よりも早く陥落していた。

 針仕事で疲れていたのもあるが、まだまだ母親が恋しい年なのだ。

 柘榴シーリオは優しい目でロココの頭を撫でていた。


「くっ、俺は負けない」


 爺さんの膝枕に屈しそうになって気合を入れた。

 少しでも気を抜くとだらしない顔になってしまいそうだ。


「それでは子守歌でも歌ってやろうかのぅ」


「なんだと……」


 歌に対しては翻訳能力が働かない。

 つまり柘榴シーリオの生の声が間近で聞こえるのだ。


「ねんねんころりよ おころりよ」


 優しい声で歌われると身も心も溶けてしまって体から力が抜けてしまう。

 とてもじゃないが抗えない。

 もっと温かい歌声を聞きたいのに目蓋が重かった。


「オイラも眠たくなってきた」


 膝枕をしてもらってないのに、ラピィの頭が揺れていた。

 ロココに続いて俺もラピィもぐっすり寝てしまった。

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