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36.女子会2

「それでみんなお兄ちゃんが好きなんでしょ。ラピィなら勝つ自信はあったのに」


 ロココが唇を尖らせる。


「別に競争するようなことでもあるまい。将来的に三人とも娶ってもらえばいいではないか」


「えっ、三人とも!? そんな考えは思い浮かばなかったよ」


 ロココが驚いてピンと尻尾を伸ばす。

 思いっきり毛が逆立って太くなっていた。


「貴族ならおかしくないよ。アニキは勇者だからある意味で王族よりも偉いからね」


「そ、そうなんだ。貴族なら当たり前……」


 平民のロココとしては一夫一妻が常識だったのだろう。

 衝撃を受けた顔をしていた。


「それに太郎のお嫁さん候補として一番有利なのはやはりロココであろう。女の子らしさという点では妾もラピィも比べ物にならん」


「そりゃ私は最初から女の子だもん」


「女としての先輩に色々と教えて欲しいのぅ」


 一番若いロココは年長者である柘榴に先輩と言われて照れ臭そうに笑った。

 若いだけあって素直だ。


「そうだね。私もみんなとは喧嘩したくない。今まで通り仲良くやっていこう」


 ライバルの出現だと思って悩んでいたようだが、吹っ切れたようでロココの表情に明るさが戻っていた。

 やはりロココには暗い顔は似合わない。


「それじゃお姉ちゃんにはトイレの使い方から教えるね」


「これからは必ず座ってしなければいけないのか。少し手間だのぅ」


 ロココと一緒にトイレに入って用を済ませる。

 今までと小便が出る場所が違うので、力を入れ過ぎて床を汚してしまった。

 何とも情けない気持ちになった。


 最後にトイレットペーパーで後始末をするというのも慣れない。

 望んでいた高く魅力的な声を出せるようになったのはいいが、この点だけは少々面倒くさい。

 これが一生続くかと思うと柘榴は男だったことが懐かしくなった。




「相談も終わったことだし、オイラが柘榴シーリオに合いそうな下着を持ってくるよ」


 ラピィは収納ケースから山盛りの下着を腕に抱えて戻ってきた。

 柘榴の目の前で色とりどりの下着が床に広げられた。


「うわぁ、何だか大人っぽい。私がしているのと全然違う」


 ロココがオーバーオールを脱いでパンツを見せる。

 リボンをつけた猫の顔がプリントされた色気とは無縁なパンツだ。

 ちなみに胸は真っ平らでまだ成長の兆しはない。


「異世界の下着というのは派手なんじゃなぁ」


 この世界にも女性用のブラジャーやパンツは存在しているが、もっと簡素な作りだ。


「どうしてこんなにも色や形に凝っておるのじゃろう。複雑な刺繍が施されて芸術品のようじゃな」


「オイラが見た薄い本によると男を誘惑する為らしいよ」


「なんと。確かに見ていると心がムズムズしてくる気がするわい」


 そういうことを知ってしまうと、羞恥心に似た感情が生まれる。

 Tシャツ一枚の方がよほど恥ずかしくない。

 柘榴シーリオは何となく気恥ずかしくなりながらブラジャーを手に取った。


「これはどうやって着けるのじゃ?」


「オイラに任せておいて。手伝うよ」


「どうして胸がないラピィがそんなことを知っているの。おかしい」


 ロココが納得しかねる顔をする。


「オイラにだってちょっとはあるよ!」


 今度はラピィが服を脱ぐ。

 周りの肉を寄せているのかもしれないが、ブラジャーをした胸には僅かな谷間があった。

 肩が丸みを帯びていて、寸胴なドワーフにしては腰にくびれが生じていた。


 男であれば毛深いドワーフにしては一切のムダ毛がなかった。

 逆にパンツの膨らみは親指ほどもない。

 見た目だけならラピィも女の子になっていた。


「ラピィにすら胸の大きさで負けるなんて」


 ショックを受けたロココの尻尾から元気がなくなって萎れていた。


「女性とはいつもこんな苦しさを抱えておったのか。これはきついのぅ」


「贅沢な悩みだよね」


 ラピィに教わってブラジャーを装着してみたが、胸が圧迫されて苦しい。

 これでは動くのに支障が出そうだ。

 ロココも試しにブラジャーをしていたが、中身がスカスカなので虚しそうだった。


「いやいや、貴族女性のするコルセットならともかく柘榴の胸が大き過ぎるだけだよ」


 この二つの膨らみはなかなか厄介な代物だと思うが、これが太郎の好みなのだから仕方ない。

 柘榴シーリオにしてみれば、胸に重りがあるなんて肩が凝りそうだ。


「ではパンツはどうじゃろう。ふむ、わらわにはブカブカじゃな」


 パンツから手を離すとそのままズルズルと脱げ落ちそうになる。


「オイラにはちょうどいいんだけどね。柘榴の腰が細すぎるんだって」


「弱ったのぅ。おお、これなら良さそうじゃ」


 紐で縛るパンツなら腰回りを調整しやすい。

 もっとも布地はあまり多くなかった。


 三角布で股間を隠せるだけだ。

 パンツの布地が股間を覆うともう男の証がないということを強く意識させられた。


「お姉ちゃんがエッチだ。うぅ、私が似合うようになるまであと三年はかかりそう」


 ロココが羨ましそうに紐パンに目を向けながらしょんぼりする。


「パンツはこれでいいとして、ブラジャーはなくても良かろう。それより妾はロココに作って欲しい服があるんじゃが」


 アパートにある服を探すのもいいが、着てみたい服があった。


「音楽を聞いている最中に太郎のブックマークを覗いたら、特定の服ばかり着た女性の絵があったのじゃ。その服が太郎の好みではないかと思ってのう」


「へぇ、お兄ちゃんの好きな服ね。どんなのだろ」


 102号室に移動するとロココは柘榴シーリオの体のサイズを測った。

 胸や腰回りのサイズを調べられると、柘榴はどうしてかこそばゆい気持ちになる。

 今まで味わったことのない感情だ。


「長生きはしてみるものじゃのぅ」


 戸惑いはあるが不快ではない。

 女になったことでまた新しい経験ができそうだ。

 太郎と一緒にいると何が起こるかわからなくて退屈はしない。


 柘榴の描いた絵を参考にして、ロココはミシンで服を縫い上げていく。

 道士服に似ていないこともないが、もっと露出が多い服装だった。

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