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33.血塗れで裸の美女

「まだ眠いな」


 中途半端な時間に目覚めてしまったらしい。

 外は暗かった。


 まだ体に酒が残っているようで頭がフラフラする。

 尿意を感じてブルっと体が震えた。


 ラピィはスカートを開けっ広げにしてだらしなく寝ていた。

 暗闇でも黄色いパンツは目立つ。


「誰得だよ」


 つい小声が出てしまった。


 ロココは俺に密着して丸くなっている。

 モコモコとした尻尾が温かい。


 七龍チーロンはコタツに頭を突っ伏して寝ていた。

 誰もが熟睡しているようだ。


「みんなを起こさないよう気をつけないと」


 そっと立ち上がるつもりで手を床に伸ばすと、ムニュとした慣れない感触が手に返ってきた。

 ちょうど俺の手にフィットする丸い形だ。


「なんだ?」


 怪訝な顔になったが、何だかとっても楽しくなる感触だ。


「癖になりそうだ。この丸いのは何だろ」


 フニュフニュと何度も調べていると、


「んんっ……」


 女性の艶かしい寝息が聞こえた。

 ドキッとする。


 大人の女性の声だった。

 間違ってもロココやラピィには出せない。


「えっ?」


 暗闇で目を凝らすともう一人が畳で寝ていた。


「誰なんだよ」


 慌てて明かりをつけると、血塗れで裸の女性が倒れていた。

 俺の手も赤く染まっていたのでギョッとする。


「これって殺人事件!? 犯人はまさか俺?」


 つい動揺しておかしなことを考えてしまう。

 どうやら立とうとした時に女性の体に触れてしまったようだ。


 混乱した頭で仲間の無事を確認する。

 ロココとラピィは安らかな表情で寝息を立てている。

 そのことにほっとしたのも束の間、七龍は道士服がはだけて背中から血を流していた。


 鋭利な刃物でも使ったのか背中が縦に切り裂かれていた。

 そこから血が溢れ出している。

 七龍の頑丈なウロコをこんなに易々と切り裂くなんて信じられない。


「死んでいる!?」


 七龍の口に手を当てると息をしていない。

 ますます混乱が深まる。


「どうしたの?」

「アニキ、どうしたんだ?」

「どうしたのじゃ?」


 俺が驚いた声を出したことで、ロココやラピィが目を擦りながら起きてきた。


「七龍が死んで、って今さ、七龍の声がしなかったか?」


「いや、女性の声はしたけど」


 俺とラピィは顔を見合わせた。

 どうも話に食い違いがある。


「まだ眠いのぅ。いきなり騒ぎ出してどうしたのじゃ。うーむ、深酒をし過ぎたせいで喉の調子がおかしいわい」


 血塗れの女性は起き上がると、ごく自然な感じで俺たちの会話に混じってきた。

 女性の口から七龍の渋い声が聞こえる。


「なんじゃ、ワシの顔をじろじろ見て」


 血に濡れているが見覚えのある顔だった。

 俺が額に入れて飾っている理想の女性の姿絵に似ている。

 何度も夜にはお世話になったので、その顔を俺が見間違えるはずがない。


 目元は切れ長で涼しげだ。

 情熱的な赤い髪をしている。


 モデルのような体形で腰は細いのに太ももはムッチリとしていた。

 胸はインパクトが強すぎて鼻血が出そうになった。


 頭にある小枝のような角と腰から伸びた細長い龍の尻尾がなければ理想の女性そのものだった。


「まさか爺さんか?」


 ラピィが恐る恐る女性に尋ねると、


「誰がジジイじゃ。ワシはまだ七百歳じゃぞ」


 いつもの台詞が返ってきた。


「うわ、本当に七龍みたいだよ。どうなってんのさ」


「はい、鏡」


「夜中だというのにみんな騒がしいのぅ。もう少し落ち着いたら、なんじゃこりゃああぁ!」


 ロココから手鏡を受け取った七龍は今日一番の大声を出した。

 そのまま鏡に顔を映して百面相をしている。


 確認したいのはわかるんだが、鼻を押さえてブタっぽい顔をするのはどうかと思う。

 非常に残念な気持ちになる。


「綺麗な声だけど耳がキーンとする」


 耳が鋭いロココは目の前で大声を浴びてクラクラしていた。


「綺麗だって?」


「うん、アニキが好きそうな声だよ」


 ラピィにそう言われても、理想の女性から聞こえるのは七龍の渋い声だ。

 ちぐはぐな感じが凄まじい。


「待てよ」


 3メートルほど離れてから七龍に喋ってもらった。


「何を試しておるんじゃ」


 公用語のままだが、透き通るような魅力的な声が聞こえた。

 脳が心地良く痺れるような美声だ。


 中身が七龍だとわかっていてもうっとりしてしまう。

 それが気恥ずかしくなって慌てて距離を詰めた。


「うーん、俺の翻訳能力は相手の心にも影響を受けるみたいだ」


 声に感情が乗るのは当然だ。

 見た目は素晴らしい女性でも中身は爺さんなので、翻訳された声は爺さんに聞こえるらしい。

 これじゃ残念美人だ。


「カットカット。翻訳能力をカット」


 どうにか翻訳能力を停止できないかと思ったが、ジェスターがそんな便利な機能をつけているはずがない。

 大笑いしているジェスターの顔が思い浮かんで殺意が膨らんだ。


「何が起こったのか確認するのはあとだ。とりあえず七龍は浴室で体を洗ってきてくれ」


「そうするかのぅ」


 血塗れで全裸の女性がいるのは落ち着かない。

 浴室に七龍の姿が消えるとほっと息を吐いた。

 見た目はストライク過ぎて挙動不審になってしまう。


「またライバルが増えた」


 ロココの様子も何かおかしい。

 七龍の姿に衝撃を受けたのは間違いないようだが。

 慌てたような顔をしていた。


「とりあえず後始末をしておこう。拭くものを取ってくるか」


 畳に血の染みがついたままでは殺人現場みたいだ。

 浴室の隣にある洗面所に雑巾が置いてある。


 さっと雑巾を取ってくればいいと思ったのだが、浴室の半透明な扉から七龍の姿が浮かび上がっていた。

 輪郭だけでも俺の好みが凝縮されているのがわかる。


 シャワーを浴びているようで水音が聞こえた。

 想像力を刺激されて頭がクラクラした。


「なるほど、穴はこうなっておるのか。なくなってしまうと寂しいもんじゃのぅ」


 ただそれも声が聞こえなければの話だ。

 爺さんの声ではテンションが下がりまくりである。

 破廉恥な妄想が消えて、爺さんが乾布摩擦している姿が頭に浮かんだ。


「オエッ」


 思わず吐き気がしてしまう。


「はぁ、声は何とかならないのか」


 3メートルの制約があるのは残念過ぎる。

 何か抜け道はないかと俺は考えていた。

お待たせしました。

ここからどんどんTS要素を入れていきますよ。

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