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24.裏山にドングリを植える

「少し眩しいのぅ」


「でも温かくて優しい光」


 金色の光が収まると地面には俺の足跡が大きく残っていた。

 丘から嫌な臭いが消し飛んで土がサラサラになっている。


 空にあった暗雲が消し飛んで、太陽が顔を出していた。

 この丘全体を照らすように日が差している。


「あー、疲れた」


 ヘタって気の抜けた顔になった。

 一気に金剛力を放出して体が重くなっていた。

 だが、金剛布はまだ消えていない。


「もう少しアニキの真面目な顔が続けばいいのに」


「俺が真面目な顔をして誰が得するんだよ」


 さっさとアパートに帰ってダラダラしたい。

 このまま大の字になって寝たかったが、メインイベントはこれからだ。


「ふう、結構本気でやったんだけど」


 足跡はアパートの側にあるものより大きくない。

 暗雲が消えた範囲もアパートの周囲ほどではなかった。


「あの時は凄まじく感情が高ぶっていたからなぁ」


 絶望と激怒で世界を叩き割りたいと思った。

 さすがにそこまで感情を熱くするのは無理だ。


「それじゃ足跡にドングリを植えてみようか」


「うん、ドングリがいっぱい実るといいね」


 今回試したいことは足跡に植物を植えたらどうなるかだ。

 成長の早い作物では怖くて試せない。

 また巨大ジャガイモみたいなことになったら困る。


「うわ、ものすごーく土が硬くなっているよ」


 ロココが足元の土を掘ろうとしたが、全く指が入らない。


「むぅ、手強い」


 槍で突き刺そうとしてもコンコンと硬い音がするだけだ。

 そりゃ悪戯が好きなラピィでも足跡に作物を植えないわけだ。


 七龍チーロンやラピィも土を掘ろうと試しているが、全く歯が立たない。


「そんな硬い土にドングリを植えても根が生えそうにないな」


「でもオイラは育つ効果が一番高いのはやっぱり足跡だと思うよ」


 豊穣の神の神官であるラピィが言うなら多少の信憑性はあるかもしれない。


「そう言われても土が掘り返せないんじゃどうしようもない」


 ロココの隣で俺も試しに土を掘ろうとするとサクッと指が入った。


「あれ?」


 問題なく穴が掘れた。

 ただそのことで金剛力が減ったようだ。

 体に疲れを感じた。


 その穴にコロンとドングリを埋めてロココが土をかぶせる。


「お兄ちゃん、もっと穴を掘ってよ」


 キラキラとした目でロココに腕を引っ張られて、俺は次々と穴を掘っていった。

 一つ掘るだけで疲れて座りたくなるが、ロココの笑顔で気力を振り絞った。


 足跡の大きさがさほどではないので密集して植えることになるが、いつ拾ったかわからないドングリだ。

 全て芽が出るわけではないだろう。


「おい、ドングリ以外を植えるんじゃない。何の種を入れたんだ?」


 俺がロココの作業を見守っていると、他の穴にラピィが何かの種を埋めていた。

 腰を屈めているのでスカートからパンツが丸見えだ。


 赤だった。

 ホント、誰得だよ!

 興奮するわけがなく残念な気持ちになった。


 思わずラピィの二の腕を平手で叩くと筋肉がある割にはプニッとしている。

 意外と脂肪があるようだ。

 きっとジャガイモの食い過ぎで太ったのだろう。


「いてっ。リンゴとミカンの種だよ。ロココだってリンゴは好きでしょ」


「うん、果物は大好き」


 リンゴが実ったところを想像したのかロココの尻尾がパタパタと振られた。

 ロココを味方につけられたら嫌とは言えない。

 生意気なことをする。


「ブニュブニュでだらしない腕だなぁ」


「ちょっとアニキ!? これは若返った影響で筋肉が落ちたからだよ」


 嫌がらせで二の腕を揉みほぐしてやる。

 意外にモッチリとして触り心地が楽しい。


 たっぷりと遊んでから解放してやると、ただ腕を揉んだだけなのにラピィの頬が上気して息が弾んでいた。

 変な奴だ。


「ワシも植えてもいいかのぅ」


「構わないけど、樹になるやつで頼むよ」


 七龍チーロンも試してみたいようだが、何でもかんでも植えたら収拾がつかなくなる。


「それならお茶にしよう」


「えっ、お茶って樹になるのか?」


 日本では茶畑と言うようにお茶が樹になるイメージはなかった。

 七龍チーロンから話を聞くと、茶を栽培する時は背を低く刈り揃えて収穫しやすくするようだ。


 お茶を植える為の穴を掘ると、クラッと立ち眩みがした。

 もう金剛力が残っていない。

 力を使い果たした金剛布が天界に還っていく。


「限界だ。もう立つ気力すらないぞ」


「無理をさせてすまんかったな。それではワシが抱えて帰るかのぅ」


「うわぁ、絵にならねぇ」


 フルチンのまま俺は七龍チーロンに持ち上げられた。

 いわゆるお姫様抱っこというやつだ。

 俺が女の子にするならともかく爺さんにされても嬉しくない。


 下山では七龍チーロンの足取りはしっかりしていた。

 さすがに棒術の達人だけあって体は鍛えられている。

 そんなところは頼もしいとは思うのだが。


「もはや何の種をどこに植えたかわからなかったな」


「何が育つかわからなくて楽しみじゃん」


「うん、楽しみ」


 ドングリが実る樹は意外と種類が多い。

 丸々と太ったクヌギのドングリはわかりやすいが、他にも色々なドングリを植えた。


 ラピィが植えた種もリンゴやミカンだけとは限らない。

 というか絶対に他の種も混ぜたに決まっている。


「せっかく芽が出ても枯れてしまうのもあるだろうな」


「それはしょうがないよ。私も植え過ぎたとは思うもの」


 成長が遅れて競争に負けてしまう苗木も出てくるだろう。

 俺としては二本くらいドングリの実る樹になってくれればいいなという気持ちだった。

 何の樹が育つかわからないが、みんな楽しみにしている様子だった。

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