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19.みんなで楽器の練習だ

「こうして桃太郎は鬼を倒して財宝を持ち帰りました。めでたしめでたし」


 ロココを膝の上に乗せて、俺は絵本を見せながら日本の昔話を聞かせていた。

 102号室の押入れに絵本はしまわれてあった。


 ロココが大好きなのは桃太郎だ。

 お供が三人で俺たちと似ているところが共感を呼ぶようだ。


 何度も桃太郎の話を読み聞かせているうちに、ロココは話にアレンジを加えていた。


 その物語を七龍チーロンとラピィに披露することになった。


「太郎は勇敢な狼、賢い龍、悪戯好きで手先の器用な猿をお供にして黒い怪物と戦いました」


 猿にされたラピィが微妙そうな顔をする。


「狼、龍、猿の助力で太郎は黒い怪物を倒しました。こうして世界には平和が訪れたのです。めでたしめでたし」


「面白かったのう」


「……狼と龍はわかるけど、猿ってひどくない?」


「そこは元の物語を尊重してあまりアレンジしなかった」


「小人や妖精でいいじゃん!?」


「図々しいこと言ってやがるな。ラピィにそんな可愛いイメージなんてないだろ」


「アニキまでひっでぇ」


 ラピィは不満タラタラだが、七龍チーロンはニコニコ顔だ。

 桃太郎の役を与えられた俺はちょっと恥ずかしい。

 太郎は昔話の桃太郎よりも勇ましく語られていた。


「ロココには日本語を上手く公用語にする才能があるのぅ。感心したわい」


 日本語が書かれた絵本を読み聞かせているうちに、ロココは物語だけでなく日本語にも興味を持った。


 それでアニソンにはまっている七龍と料理を研究したいラピィも俺から日本語を習うことになったのだ。

 インターネットを活用するなら日本語を知っておいた方が便利だ。


 まさか三流大学しか出てない俺が人にものを教えることになるとは思わなかった。


 逆に俺は王国の公用語と文字を七龍チーロンから習っていた。

 勉強は嫌いだが、ロココが頑張っている姿を見ると見習おうという気になる。


「ワシがアニソンを翻訳しようとしてもどうもうまくいかん」


 七龍はアニソンの歌詞を公用語に訳そうとしていたが、直訳に近くなって情緒が感じられなくなってしまう。


 俺の翻訳能力は会話にしか適用されない。

 歌は会話には含まれないようで、俺の翻訳能力は役に立たなかった。


「今度は縦笛をやろうよ。まずはお兄ちゃんから」


「俺が吹けるのは簡単なやつだけだぞ」


 音楽の授業も一応やったが、教科書を見せながら音符を教えるのがせいぜいだった。

 リコーダーで吹けるのも楽譜が単調な曲だけだ。


 それでも小学生の時に必死に練習した曲なら今でも指が動いた。

 思ったより体は覚えているものだ。

 どうにかミスしないでリコーダーを吹き終わる。


「ふぅ、こればかりだと飽きるだろう」


「そんなことないよ。楽しい」


「いいではないか。お主は音楽に向いていると思うぞ」


 三人の拍手が鳴る。

 ロココの言葉が嘘ではない証拠に尻尾がパタパタと畳を叩いていた。

 小さな子が喜ぶなら不器用な俺でも頑張るしかない。


「今度は私の番だね」


 手汗塗れになったリコーダーを受け取ると、ロココは桃太郎の童謡を吹き始めた。

 それに合わせて七龍チーロンがギターを弾く。

 初めて聞いた時には童謡までギターで演奏できるのかと驚いた。


 二人の演奏にお調子者のラピィが平太鼓を叩いた。

 バンドだったらちぐはぐな楽器だが、意外と音にまとまりがあった。


 子供の時に聞き慣れていた童謡が新鮮な音となって耳に響く。

 気分が盛り上がってきて、俺まで桃太郎の歌を口ずさんでいた。


「今度はワシの番じゃな」


 アニソンを公用語に訳した曲を七龍チーロンが披露する。

 頑張って訳しているのだろうが、歌のテンポが悪くなっていた。

 途中で歌が短くなったり間延びしたりしてアニソンの勢いが殺されている。


「うーん、いまいち」


「オイラ、勢いに乗れなくて熱い感じがしてこないよ」


「わかる。私ならこういう風にするよ」


「ありがたいのぅ。これでもっといい曲になりそうじゃ」


 その曲を俺たちが顔を突き合わせて手直ししていく。

 音楽と日本語と異世界の公用語を同時に勉強している感じだ。


 こんな勉強のスタイルは聞いたことはないが、四人で共同作業をするのは楽しい。

 何度も手直しを繰り返していくうちに歌詞も洗練されていく気がする。


 日本語が母国語である俺の方が歌に対する理解が深いので、意見が言いやすかった。

 ついつい熱が入ってしまう。


「もう一度歌ってみるかの」


 みんなのアイデアで歌の流れがスムーズになっていることがわかるとテンションが上がる。

 知らず知らずのうちに七龍チーロンだけでなくロココやラピィまでアニソンにのめりこんでいた。


「俺まで七龍チーロンに影響されるとは思わなかった」


 目の前でギターを弾き語りされると生の音は迫力が違う。

 俺の大好きなアニソンということもあってその音に痺れてしまうのだ。


 俺ですらギターに興味を持って、七龍チーロンから弾き方を教わってしまった。

 下手なりに勢いのある音が出ると楽しい。

 それに親身になって教えてくれる先生がいると上達も違うようだった。

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