Scene8
清の姿が見えなくなった後、大地と杏香は家路を歩いていた。空には星々が輝き、気まずそうに歩く二人を見下ろしている。そんな二人が話し始めたのは道半ばに差しかかったときだった。
口を開いたのは大地だった。
「チョコ食べたよ。なんかしょっぱくて笑えた」
杏香はそっぽを向き、
「最初に塩と砂糖間違えていれちゃったの」
「なんかお前らしくて安心した」
大地が笑うと、杏香が足を振り上げ、大地の臀部を蹴り上げた。大地は自分の臀部を撫で、
「どうして去年はチョコくれなかったんだ?」
「大地が……いろんな女の子に告白して回ってたからできなかった。今年はとくに動きがなかったし、どうせ振られるからって思ったから、やっぱり私じゃなきゃだめだなぁって思ったの」
「酷いなぁ」
そして杏香も笑った。
「さっきの仕返し」
そんなこんなをしているうちに二人はまた沈黙した。やがて二人の距離は縮んでいった。そして糸がもつれあうように、二人の手が絡まっていった。
本作をお読み頂きありがとうございます。
誰と運命の糸で結ばれるかわからないバレンタインというネタを膨らませて本作を書いてみました。
良い作品かどうかはわかりかねますが、
書いているときはとても楽しかったです。