第64話「相手は選ぶ」
昼休み。
今日も今日とて、俺達のクラスへやって来た楓花と柊さん。
そんな四大美女二人の姿は、GW明けなこともあり今日も周囲の注目を全身で浴びているのであった。
しかし二人は慣れているのか、周囲の視線など全く気にする素振りを見せない。
今日も以前と変わらずただ楽しそうに、俺の隣の席で今日も弁当を食べているのであった。
「何よ、ジロジロ見て」
「見てないっての」
そんな俺の視線に気付いた楓花が、箸を咥えながら怪訝そうな表情を浮かべる。
まぁちょっと見ていたのは本当だが、そんな表情で見られる筋合いなどない俺は、相手にせず自分の弁当をさっさと食べることにした。
「うそ、絶対見てたし。なに? そんなにわたしのこと見たいの?」
しかし、楓花は止まらない。
何故かまんざらでもない表情を浮かべる楓花は、どうしても俺が見ていたということを認めさせようとしてくる。
そしてそんな楓花の表情を、一緒に弁当を食べる晋平は顔を真っ赤にしながら見つめているのだが、友達としてそのことは見えていないフリをしておいてあげることにした。
「じゃあ百歩譲って、見てたら何なんだよ」
「別にぃ? ただ見たかったんだなぁーって、ふふん」
これ以上ない程のご満悦で、勝ち誇るように天使の微笑みを浮かべる楓花。
そんな楓花の微笑み一つで、教室内からは「おぉ」という声が上がると共に、視線を一点に集めてしまうのであった。
まさかみんなも、こんな訳の分からない理由でこいつが微笑んでいるなんて思いもしないだろうな……。
そして、そんな俺達兄妹の下らないやり取りを面白そうに微笑みながら見ている柊さんもまた、周囲からの視線を集めているのであった。
こうしてただ微笑むだけで、周囲の視線を集めてしまう四大美女。
そんな彼女達の恐ろしさを再認識させられたのであった。
「マジかよ、柊さんだよね? 風見と仲いいんだね?」
すると、そんな超越した存在の片割れである柊さんに向かって、うちの教室へやってきた他のクラスの男子が突然声をかけてきた。
一体誰かと思えば、一年の時同じクラスだった服部だった。
服部と言えばバスケ部で、女子達からの人気が高いことでお馴染みな分かりやすく言えばイケメンだ。
一年の時は割と気が合って話すことも多かったのだが、二年に上がってからは正直疎遠になっていた奴である。
そんな服部が久々に何事かと思えば、俺を利用して柊さんに声をかけているのであった。
「ええ、良太さんにはいつも良くして頂いてます」
「良太さん……? そ、そうか! それじゃあやっぱ仲いいんだ? いいなぁ風見」
柊さんの俺の呼び方に一瞬怪訝そうな表情を浮かべた服部だが、気を取り直して俺の肩に手を回すと馴れ馴れしく会話に入ってくる。
別に一年の時は普通に仲が良かったし、あの頃であれば対して気にはならなかっただろうが、今回のこれは目的がはっきりしている分俺としてはちょっと不満だった。
要は俺はただの踏み台で、服部は柊さんとお近づきになりたいだけなのだ。
「柊さんは、いつから風見と仲良くなったの?」
「えーっと、一月ちょっと前からでしょうか」
「へぇー、そうなんだ。じゃあ入学後割とすぐなんだね! いいなぁ風見、こんな美人と仲良くなってよぉ!」
流石のコミュ力とでも言うべきだろうか、自然と会話に溶け込んでくる服部。
しかし、そんな服部に対して楓花は露骨に不愉快そうな表情を浮かべているのが分かった。
「てかさ、今度みんなで遊び行こうよ! なぁ風見、妹さんも連れて駅前でも行こうぜ!」
そして打ち解けたと思ったのであろう服部は、早速みんなで遊びに行こうと提案してきた。
当然俺は、こんな下心が分かり切った誘いに対して首を縦には振りたくなかった。
しかも服部の奴、あわよくば妹の楓花にまでちょっかいを出そうとしているのもバレバレで、尚更たちが悪い。
「ごめんなさい、わたしは遠慮させて頂きますね」
「わたしもパスー」
すると、どう断ったものかと悩んでいる俺より先に、柊さんと楓花が興味無さそうに服部の遊びに行く誘いを断ったのであった。
そんな二人の分かりやすすぎる態度に、露骨に困った表情を浮かべる服部。
「え、いや、風見はいいよな?」
「いや、二人が乗り気じゃないなら駄目だろ」
「そ、そんな……」
自分に自信があったのだろう。
絶対に上手く行くとでも思っていたのか服部は、まさか断られるだなんて思っていなかった様子で驚いていた。
その様はまるで、女にフラれた時の男のように見えなくも……いや、これはもう実質フラれたにも等しいか。
「良太くんとなら、別に出かけるけどね」
「ええ、それならわたしもご一緒します」
そして、二人からのあまりにも分かりやすい追い打ちにより、完全に邪魔者扱いされた服部は罰が悪そうな苦笑いを浮かべながら教室から去って行った。
「なにあれ、いきなり来て馴れ馴れしい」
去っていく服部の後ろ姿に楓花がべーっと悪態をつくと、そんな楓花を見て面白そうに微笑む柊さん。
どうやらそんじょそこいらのイケメン程度では、この二人に付け入ることなど不可能なのであった。
相手はちゃんと選ぶんです。




